高野秀之さんといえば『謎の独立国家ソマリランド』で知って、その分厚さには驚いたものの読んでみると面白くてページを捲る手が止まらないという体験をしていた、けどもどれも同じくらいの分量で迫ってくるので、店のお客さんの誰かに本書を勧められた時はついに読むときが来たかという気分だった。
とはいえ、実は本書はそんなに分厚くもなく、それでいて上記書籍と同じくらいの面白さで……とか冷静に書いているのがなんか違うなーってくらい面白いのだけれども、まあ少し敬遠していたのは「早稲田」の話だというのと「青春記」だというところからだ。
早稲田は母校だけれどなんというか青春とかこうノスタルジーとかそういった方向性の感情を刺激するものが苦手なのよねと思っていたのである。大間違いである。
ノスタルジーどころか秘境である。いや沼か? 終盤になると「沈没」という言葉が出てくるけども、これはパックパッカーがインドの安宿で旅をやめていつまでも泥濘にはまったかのように滞在してしまうことを指す言葉のはずで、日本で「沈没」!?
それくらいの異境なのである。本書の舞台「野々村荘」は。もう読みながら何度笑ったことか。奇人変人ショーである。それでいて最後はしんみりさせるのがまた。上質なコメディ映画を観たような気にさせる(三谷幸喜を思い出した)物語であった。
高野秀之、他の本も読みたいな。