広島に本屋を開く男の開業記。第四弾です。今回はぼくとセイマサ氏の出会いの場でもある東京芸術学舎の講義「いつか自分だけの本屋を持つのもいい」のご紹介です。事の発端からB&B、エキナカ書店に続き、本屋講座。ついに在庫準備の話も出てきます。楽しくなってきましたよー。
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いつか自分だけの本屋を持つのもいい
「いつか自分だけの本屋を持つのもいい」。社会人向けに多彩な講座を用意している東京芸術学舎で2012年の冬から始まった全五回の講座です。書店を営む方々が講師となり、実体験をベースに仕入れや経営のことをレクチャーしてくれる、まさに本屋をはじめたい人にとってピッタリの内容です(詳しくは以下のレポートをどうぞ)。その秋には第二弾も開講されるほど人気の講座でした。
その道の先輩たちの話を聞くなかで「場所としてあり続けるためには利益を出し続けなければならない」というごく当たり前のことを改めて考えるようになりました。
余談ですがこちらのキャンパスでは2012年から「THE TOKYO ART BOOK FAIR」というアジア最大級のアートブックフェアが開催されています。ZINEと呼ばれる個人制作のアートブックや国内外の写真集などが数多く販売されるイベントで作り手や出版社の方と交流することができる貴重な場所でもあります。そこに出展されていた名古屋のON READINGは「自分もこんな店にしたい」と思っている理想の本屋さん。事情を話すと親身になってアドバイスしてくれました。
在庫を用意しよう
知識や人脈が少しずつ増えるなか、店の方向性も具体的になっていきました。当初は「リトルプレスのみ扱おう」と考えていたのですが本の冊数を増やそうと思い直し、ジャンルをしぼって古書をセドリして集め始めました。ところが、定番の大手チェーン店や神保町を見て回るもなかなか欲しい本と出会えません。
あるとき、手早い動作で次々と本を買物カゴに入れる「セドリのプロ」に遭遇。「そう簡単に良い本が安く手に入るはずもない」と思い知らされました。それから数ヶ月後、今までなぜかスルーしていた近所の古本屋さんに寄ってみたところ欲しかった本が驚くほど良心的な価格で並んでいます。そこは古本好きには有名な西荻窪の名店、音羽館。JR中央線沿いの街には安くて良質な古書を取り揃えた名店が多いということをようやく知りました。灯台下暗し、というか自分の無知が恥ずかしい…。お店を回るなかで「この本はこれぐらいの値段か」と学ぶことができました。
セドリを始めてから約1年。集めた古書もようやく1000冊を超え、書店修行も終盤を迎えた今年2月、最重要ミッションのため夜行バスで一路広島へ。それは店舗の場所を決めるための帰省でした。(つづく)