いつもの高野秀行さん、何冊目だっけか。酒飲みの著者がイスラム圏を訪ねた際にも何がなんでも酒を飲もうとした話である。面白いのがただ飲むことだけが目的ではなく「現地の人とわいわい飲むこと」をしたいことだ。
本書によると、イスラム圏は建前というのを非常に大事にするらしく、だから「酒を飲んではいけない」というのも公式の場や周囲に他人がいる場所では絶対に守るが家や友人たちだけの場などでは普通に飲むらしいのだ。
ということは、著者が目的を叶えるためには当然現地の人と距離を縮めなければいけないわけで、難しそうだなあ自分なんてとてもできないなあなんて思うわけだが、そこはそれ、著者の剛腕が炸裂して気が付いたら楽しそうに酒を飲んでいるのである。
この"気が付いたら"というのが著者の本の特徴だと思っていて、一応目的はあるしそれに確実に向かってはいるのだけれど、毎度毎度色々なことに巻き込まれてどうなるのかと思いきや"気がついたら"目的が達成?されている。
まあ達成されないことも結構あるのだけれども、よくよく考えてみればそうやって日本に帰ってきてこうやって本にできているのだから巻き込まれていることそのものですでに目的は達成されているのかもしれない。
わやわやがちゃがちゃしながら目的があったりなかったり達成されたりされなかったりしながらの道中を読んでいると気がつけばもう最後のページである。
これは旅の情緒とは違う。旅の混沌を味わうための読書をしているのかもな。と何冊目かの高野秀行本を読んで思うのだった。