レベルブックスで買うとビールがついてくると言われ内容も面白そうなので買う。
ブルックリンといえば『グリーン・ネイバーフッド』以降始まった(と理解している)ポートランドブームが落ち着いた頃に、紹介されたヒップな都市だったと思うのだが、そのブルックリンはヒップな年になる前、治安が悪く人が寄り付くような場所じゃなかった。そんな場所でビールを売り始めブルワリーを作ったのがブルックリンブルワリーだ。
本書は同社がどうして生まれ、どうやって続き大きくなり、世界的に有名な現在の立場にまで上り詰めたのかを創業者が語る物語である。
実はこういうアメリカの起業家物語は嫌いじゃなくて、なぜかというと勢いが良いからで、変な謝辞とか躊躇いとかそういうのが少なく、ストレートに成功と少しの失敗を両方書いていることでつまりは読んでいて割と気持ちが良いからだったりする。本書もご多分に漏れずそんな感じで、爽快な気持ちで読むことができた。
面白かったのが前半部。著者の企業に至るまでの話で、AP通信社の外国特派員で内戦中の国に記者として派遣され危険な目に遭いながらもなんだかんだとそれを楽しんでいたという。拉致されたこともあると書いた同じ口で天職だと語るあたり凄まじいものがある。
そんな人が家族のためにNYに戻ったために立場はあるが退屈な日々を送ることになってしまう。そんな退屈しのぎのために始めたのがビール作りだったというから人生何が起こるか分からないものである。
で、さらに面白かったのが、起業するときにジャーナリストらしくブルックリンにおけるビール作りの歴史からアプローチしたところだ。本書にも年表が載っているが、僕としてはこういうその地の歴史や文脈を踏まえた上でのアプローチというのはとても好きでなんとあうか興奮する。しかもその歴史があってこその成功だと思い調べ始めたというからさすが元一流ジャーナリストである。
創業してからの話は特に変わった点はないので書かないけれど、それにしてもちょいちょい著者が悩んだときに登場する奥さんからのアドバイスが的確過ぎて最高だった。