白山にある双子のライオン堂書店店主に「なぜ本屋になり、これからどんな本屋を目指すのか」を聞く連載「失われた「本屋」を求めて」。第四回目です。今回は前回から引き続きオンライン古書店時代の試行錯誤を書いてくださっています。
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双子のライオン堂の歩み(後編)
サイトの見せ方をどうするか
大学に進学してから取り組んだのは、サイトの見せ方です。
立ち上げ当初は、URLの打ち込みで作っていたのでデザインはあってないようなもの。TOPに本棚の写真と在庫一覧に自分の蔵書リストをアップしただけのとてもシンプルな作りでした。
そこで、他のオンライン古書店、特に人気のあるお店のサイトがどうなっているかよく見てみると、それぞれ独自の「色」を持っていることに気が付きました。今考えれば当たり前のことです。
独自の「色」として有効なのが専門性です。「異国の絵本」「ミステリー小説」「写真集」「料理本」などなど枚挙に暇がありません。この場合は、いかに誰もやっていないジャンルを探すかがポイントです。
その他には、「在庫数ナンバーワン!」を謳っていたり、カバーや栞に力を入れていたり、買取力(出張買取・高価買取)を強みにしている、ところもありました。
本棚で魅せる?
さて、自分の店ではどうしたのか。
最初に行ったのは、在庫を保管している本棚の写真をサイトにアップして、背表紙を見せて選んでもらうというものでした。リアル書店での棚全体を俯瞰して本と出会う方法をネット上で再現したかったからです。しかし、これは不評でした。まず検索性のなさです。在庫を検索できないと、そもそも検索サイトから本を探して流入してくるお客様が減ります。オンラインショップの場合、リピーターでないお客様の多くが検索サイトから在庫ピンポイントでの来客なので、これは致命的でした。また、写真をアップしていくのにも問題がありました。1つは更新が手間です。1冊売れるごとに写真を撮ってアップロードしなくてはいけません。これを怠ると在庫がないのに注文が入ってしまったりします。(いつもは売れないのに、忘れたときだけ品切れ注文がくるものなのです。)そして、もうひとつの問題が画像(写真)の重さです。今ほどインターネット環境が整っていないので、画像だと表示に時間がかかる場合があります。これに関するご意見はいくつか頂いたのを覚えています。そりゃ、商品一覧がなかなか表示されないお店で買ったりしないですね。
一冊ずつ紹介する?
次に試したのは、『一冊入魂』と題して1冊ずつ紹介して売ることです。
本を売るために、書店ではポップが活用されます。オンライン書店でも、商品一覧ページに、書名・著者名・出版社・刊行日・何版に加えて、簡単な解説がついているサイトもありました。
僕は、どうせ売れないのだしと腹を括って、1冊を丁寧に紹介して、売りたい本を売るスタイルにしようと思ったのです。当時、大学で詩や小説と触れる機会が多かったので、授業で扱った作品の解説なら書けるぞと、意気込んではじめました。この企画は、順調に閲覧数は増えました。しかし、売れません。冷静に考えれば、オンライン書店を活用する方の多くがすでに目的を持って購入します。リアル書店のように無目的に回遊していてばったり出会って本を買うということは少ないです。そして、ネタが尽きます。松岡正剛ばりに毎日1冊解説するなんて無謀でした。更新頻度も落ちて、自然消滅してしまいました。
Amazonマーケットプレイスへの参戦
大学生活も就職活動期にさし当たった頃、Amazonマーケットプレイスが台頭してました。ちょうどAmazonマーケットプレイスで「大口出品」が開始されたのがきっかけだと思います。(Amazonマーケットプレイス自体は2002年ごろからサービスをはじめています。)
当店もAmazon時代に入ります。就職活動の合間に古本屋さんをめぐって、転売できそうな本を探す。いわゆるセドラーです。最初は、楽しかったです。本屋めぐりはしてきましたが、仕入を考えて本を買うというのは、貴重な体験でした。A店ではこれが高いけど、B店では100円均一か、そしてその本がAmazonだと数千円、時には数万円ということもある。あと自分が好きな作家の本や読んで面白かった本をついつい仕入れたけど、Amazonだと1円みたいなこともありました。また、モバイルギアの進歩につれて、だんだん効率化されてきて、店先でバーコードリーダーをかざす人が増え、自分も販売価格を調べながら買取をした方がいいかなと少しやってみたのですが、それは面白いというよりは「作業」だと、辞めてしまいました。
試行錯誤の果てにたどり着いたスタイル
その代わりに、買取を強化する方向にシフトします。知人友人親族を相手に、お願いして、とにかく本を集める。「本を売るなら~♪」じゃないですが、古本屋に大切なのは、在庫なのです。見せ方も大事ですが、在庫(商品)がないと意味がないと試行錯誤の上で分かりました。
社会人にもなってお店の在庫も増えてきた頃、漠然とジャンル横断的な本屋を作りたいと考えるようになります。思いつきで、オンライン古書店のカテゴリーを勝手に好きな作家さんの名前にして、その方が雑誌や新聞で書評したり、著書の中で取上げたり、トークショーで話していたりした本を並べました。これは評判が良かったです。好きな作家から読書の幅を広げようとしている人は多かったようです。
それと同時期に、リアル書店をはじめられそうだという話が浮上したのです。