本が好き!で見つけて読む。レビューに心温まる物語を描く作者だと書いてあったので、そういうヒューマンストーリーやら感動ものやらが苦手な自分としては警戒して読み始めたのだが……いや、これは良いよ!!
確かに描写が詩的で甘ったるくそこについては好みではないけれども、それ以上に物語の進め方、キャラクター、心理描写が上手くてグイグイ引き込まれてしまう。
BOOKSHOP LOVERとして取材もしているし本屋の世界については門外漢ながら出版業界外の人よりは知っていることも多いと自分では思うけれども、そんな自分でも特に違和感なく読めたので、書店における細かな描写についても取材もしっかりとされてることが分かる(あとがきを読むと、Twitter上などで書店員アカウントの皆様に事実確認をしっかり行っているみたい)。本書とは関係ないが、WELQ問題を知ってから、こういった当然ながら大事な努力を見ると姿勢を正さなくてはとも思わされた。
さて、肝心のストーリーはというと、「ある書店員がある事件をキッカケにその店にいられなくなり退職。縁もあって桜風堂書店で働くことになる」というものだけれども、主人公や仲間が成長していくその描写が素晴らしく。悔しいが何度も泣きそうになってしまった。
世の中にはいろいろな本があって、中にはグロテスクだったり嫌な気持ちにあえてさせるようなものもあったりする。そんな中で本書は世界を祝福するような、喜びに満ちた本であると感じた。
生きていると辛いこともあるし、やってられないこともたくさんあるけれども、たまには報われることもあって、それを信じても良いのだと思わせてくれた。