白山にある双子のライオン堂書店店主に「なぜ本屋になり、これからどんな本屋を目指すのか」を聞く連載「失われた「本屋」を求めて」。第五回目です。今回は今までの双子のライオン堂書店までの話からついに双子のライオン堂書店のいまをお話しくださいます。
本屋探訪記でも取り上げています。
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双子のライオン堂書店の 「いま」
前回、前々回と双子のライオン堂の歩みをお話させて頂いてきましたが、現状の双子のライオン堂についてお話 します。 正直、まだまだ「書店」として成り立っているかと言えば、かなり厳しい状況です。 選書をコンセプトに据えたため、古書だけではなかなか目的の本を集めるのが難しく、新刊本も扱うようになり ました。しかし、ご存知の通り、新刊本の利益率は非常に少ないのです。私も数字では知っていましたが、実際 に扱うようになって改めて粗利の少なさを実感しました。古本だけを扱っていた時期と比べると、倍近くの数を 売らないといけません。
原点に返る本屋
また、本屋が生き残る方法のひとつとして、プレゼントのときは新刊、自分用は古書など、読者の用途によって自 由に選んでいただくのも有りなのではないか、と思いました。余談ですが、もともと取次などが現れる前の「書店」は、出版社が自社他社問わず小売をしていて、さらに古書も扱っていたのです。当店のように小さい本屋は これからどんどん原点に返っていくのだと思います。本屋さんが出版事業をすることも増えてきています。
伝わる選書の魅力
経営は厳しい状態ですが、「選書の魅力」は少しずつ伝わってきているような気がします。 共感して参加してくださる選書者も20人ほどになりました。どの本棚も個性的です。難しい評論を書いている 方の本棚に絵本があったり、若者向けで明るい作風の作家さんが堅い思想書や哲学書を選んでいたり、選書者の著書を読んだ後に見ると「あの本を書いていた時の資料じゃないかな」と目に付いたり、本や本棚を通して作家さんとコミュニケーションをしているような気持ちになれます。私自身、普段出会うことのないジャンルの本でも、好きな作家、尊敬する先生などがお勧めする本なので不思議 と興味が沸いてきて、読んでしまいます。お客様からも同様のご意見を頂くようになりました。
これが「選書棚のつくりかた」だ!
選書者と選書方法についてもお話しましょう。選書をしてもらう方を選ぶのに大切にしている基準があります。第1に「読書家」であること、第2に「その道のプロ」であること、第3に「言葉を大切にしている人」であるこ と、です。その方たちに「100年後も紙の本で残したい本を100冊教えてください」とお願い致します。選書者との交渉で一番大切なことは、実際にお会いするということです。可能な限り、連絡を取らせて頂いて、コンセプトを 直接お話して、了解を頂くようにしています。直接お話できなかった場合でも、イベントなどに御礼を言いに 行ったりすることを心がけています。 選書に関して苦労することは、僕の性格です。あの人の選書が欲しいと思っても、「怒られたらどうしよう」 「面倒だなと思われたらどうしよう」「この人は無理じゃないか」とぐちぐち考えてしまって、なかなかお願い 出来ません。 しかし、「断られたら選択肢が減ったと思って前向きにどんどん交渉していけばいい」「悩むとこはそこではない」と常連のお客様たちにお叱りを受け、当たって砕けろと、月に最低でも1人は選書者を増やすと決めまし た。 無理と決めずに、いろいろお願いするようになって、断られることや返事がないことも多々ありますが、確実に 選書者を増やしていけるようになっています。また、コンセプトに共感して頂けた選書者から、次の選書者のご紹介も頂けるようになりました。 何事も動き出すことが重要なのだと、実感しています。 ま た、そういった助言を下さるお客様に出会えたことも実店舗を出してよかったなと思えることです。最近では、お客様同士で新しい取り組みをしたり、交流が増えて、店外にも活動が広がり、その結果をお店に持ち帰ってき てくれたり、とコミュニティーも広がっています。 「書店」として、今後100年続けられるように、無い頭を絞っていろいろ挑戦していこうと思います。「本」と 「本屋」とそれに係わるモノの未来を切り開いていけるように。