嬬恋村での長期休暇で読んだ『ワセダ三畳青春記』が面白かったので、早速帰りに寄った本と茶 NABOで買ったのだった。
今回は「どこそこに何々を探しに行ってきた!」ではなく、「前に行ったここでは実はね……」と著者と他の旅作家との対談、それと「辺境読書」と称した著者の書評が集まっている。
なので臨場感のようなものは無いのだけれども、距離を置いているからこそ分かるおもしろさもあって、いやそうじゃないな、むしろ「高野秀之まとめ」みたいな内容と言った方が分かりやすいか。
手を替え品を替え、ほかの旅作家と比べての特異性や、ほかの本には載せられなかったこぼれ話で構成……あ、そうか、素直にスピンオフ作品みたいなものといえば良いのか。頭の回転の遅いワタクシである。
具体的に面白いところを挙げてくと、ミャンマーから日本に戻る際のドタバタエピソードの中にあった「結婚式が大嫌いだから出たくない」から「結婚式は大事だから万難を廃して出る」への気持ちの変化の部分、だとか
内澤旬子さんとの対談で現地のリアリティを知るために通訳には事実かどうかに関係なくグダグダとしたり汚かったりする現地のその様を直訳して欲しい、という作家としての要望、だとか
東南アジアでは一年の区切りが曖昧で、あえて付けるなら乾季が雨季に変わる6月なのだという。インドのヒンディー語では年齢のことを「雨」と言うくらいで、なるほど一年の感じ方すら場所によって違うのだなー、とか
船渡与一さんとの対談が面白かったので小説を読んでみたいなー、とか
あとは「辺境読書」だなー。
『志ん朝の落語1』(ちくま文庫)は読むだけでもそんなに面白いのかーとか、『サバイバル登山家』(みすず書房)は著者のケモノのように生きたいって目標はとんでもないなーとか、『海の漂泊民族バジャウ』(草思社)は自分探しについて批判的に書いているしこの本の内容はそうなのに結論は「夢のような物語」。これは読んでみたいぞーとか、『日本奥地紀行』(平凡社)と『イトウの恋』(講談社)、『忘れられた日本人』(岩波文庫)、『世界屠畜紀行』(解放出版社)、『魔境アジアお宝探索記』『秘境アジア骨董仕入れ旅』(両方とも講談社)は仕入れなければ!とか、『素晴らしきラジオ体操』(小学館)はオリジナリティを絶賛していてこれは買いだなー『ふしぎ盆栽ホンノンボ』(ポプラ社)と一緒にだなーとか、『KAMIKAZE神風』は特攻隊なんてシリアスで難しい題材を笑いに変えるその腕が気になりまくるのでポチらざるを得ないっとか。
あとは「辺境読書」じゃないけども角幡唯介さんとの対談で著者が冒険に目覚めたキッカケとして挙げた『ツバメ号とアマゾン号』(岩波少年文庫)は読もう! というかそういえばうみべのえほんやツバメ号さんを取材した時にオススメしてくれたのが同書だったしうちにあるわーとか。
と言った感じで取り止めもないがとにかく楽しい読書体験であった。きっとこういうあっちゃこっちゃ行っちゃう感じが高野秀行さんらしさなのかもな。