連れ合いが面白いというので家にあったのを読んだけど、面白かったー。『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社)もそうだったけど科学の一般書で面白いの増えてるのかなーと奥付みたら2019年8月1日初版で同年9月10日に4刷だよすごいな。
キリンが好きでキリン専門の学者になる話だけれども、「センス・オブ・ワンダー」ってこういうことを言うのかなってワクワクと愛情に溢れているのが素晴らしかった。
それでいて、研究の苦しみみたいなことも描かれていて
"凡人が普通に考えて普通に思いつくことって、きっと誰かがもう既にやっていることだと思うんだよね。…略…本当に面白い研究テーマって、凡人の俺らが、考えて考えて考えて、ほれこそノイローゼになるくらい考え抜いた後、更にその一歩先にあるんじゃないかなあ。そうやって悩みながらいっぱい考えてみるといいよ"
p.99
と研究テーマを考えて著者が気落ちしていたときに先輩がかけてくれた言葉としてあって、厳しいアドバイスだけど"逆に気持ちがすっと楽になったのだ"と書かれている。
この「自分なんかが及ばない領域が確かにあってだから思う存分やっていいんだ」という感覚は凄く好きで、怠け者な僕には厳しいけど著者と同じで楽になるというかやる気が出る言葉だなーと共感が凄かった。
(そういえば、以前買った近藤康平さんの絵はまさにこういう感覚を描いたものなのかなって思ってる。下の写真)
最後に、作中終盤で宇宙物理学者の先生から聴いたというアインシュタインの言葉が本書を表すのにぴったりで"私の成功の秘訣が1つだけあるとすれば、ずっと子供心のままでいたことです"というものだ。
うんうん、僕は子供心ってものを信じているわけじゃないけども、研究者においては重要なものかもしらないなと思った。うん、これは20代前半と思しきお客さんが多いしうちの店に置こうそうしよう。
それと、余談だけど「おわりに」に書かれていた博物館に根付く「3つの無」がとても良かった。無目的、無制限、無計画。人間側の都合で博物館に収める標本を再現してはいけない戒めのような言葉。自分や目の前に見えていることより大きなものに属している自負があるからこその言葉だと思っていて、それがあるからこそ、博物館というものはこんなにもワクワクさせてくれるんだと思った。