去年の後半から、『これからの本屋』や『本屋が無くなったら困るじゃないか 13時間ぐびぐび会議』など、「本の世界の構造を丁寧に解説しつつこれからどうする?」みたいなことを問いかけている本が出ていて素晴らしいなと思うのだけれども、「そうは言ってもじゃあもっと具体的にどう始めるの?」という問いに答える本が年始に出た。
『本屋、はじめました』
開店前から取材させていただいていた荻窪の本屋Titleの店主・辻山良雄さんによる本だ。
本のタイトル通り、辻山さんがどうして本屋をやろうと思ったか、そしてどうやって本屋を始め続けているかの記録となっている。
実は直接お話を聞いていることも多く、自分として目新しい話は少なかったのだけれども、あらためて文字にして読むことでより辻山さんの意図が分かった気がした。
で、話は変わってキングコング西野亮廣の絵本無料公開問題についていろいろ見ていたし自分もフォロワーの方に賛同することを意外だと言われても来たけれども、意外と言われることが自分としては意外だった。
なぜかというと、そもそもの話、絵本無料公開なんてフリーミアムモデルに過ぎず特段新しくもなく、インターネットがこれだけ当たり前のものとしてある中で誰もがどうやって生き残るか苦戦し考え続けている(キングコング西野亮廣さんといえそれは例外ではないと思う)という前提に立てば、彼のやったことは彼の置かれた立場(絵本で有名人でという立場)でやる方策としてはこの件はそんなに過剰反応するようなことではないのだと思うからだ。実際問題、売上に貢献しているようだし。
(とはいえ、いままでの稼ぎ方を(している人たちを)馬鹿にしていることが許せない、という考え方があることは理解しているし、それはそのとおりだと思う。)
ここで話は戻るが、本書『本屋、はじめました』でも辻山さんが
自分は、この本が「本屋ってすごくいいから、みんなもやってみなよ!」って書いていると思われるのがいちばん嫌なんですよ(笑)
「自分はこうした」は言えるけれども、人が育ってくる方法はそれぞれ違う"p.215より
とおっしゃっているように置かれた立場や経験でそれぞれの方策は変わってくるわけで、ただ少なくとも大前提として本屋をやることは間違いなく大変なこと(本屋に限らずひとりでお店をやることは大変)として、「自分はこうした」の一例が本書なわけだ。その上でBSLとしては「辻山さんはこうした。じゃあ、あなたはどうする?」ということを自分にもこれから本屋をやりたいと思う読者の皆様にも問いたいし、自分もそれに答えていかなくちゃいけないと思う。
キングコング西野亮廣の絵本無料公開の件もそういう風に捉えれば良いんじゃないのかなあ。
最後に、巻末に事業計画書と索引が付いていることに感動したことを付け加えておく。苦楽堂さん、素晴らしいです!!