BOOKSHOP LOVERの今後についてK尻師匠に相談していたら勧められたので読む。
大正期。川端康成と大宅壮一を中心に当時の雑誌勃興期の雰囲気を描く青春ストーリー。
川端康成がただの軟弱ド変態だなーとか大宅壮一がしっかり者なのに途中まで報われなくてカワイソウだとかそういう読み物的な面白さもあるけれど、やはり、文章でもっていかに身を立てていくかという人間たちと雑誌との関係が描かれているという知識面での発見が多く嬉しい。
当時の文士たちが自己表現自己実現という呪いにハマり社会主義という流行り病にかぶれている中でいかに理想を掲げようとも食えなければ意味がないし稼がなければ生きていけない。
そこをしっかりと見据えた大宅壮一や『文藝春秋』の菊池寛に興味を持てたのが収穫。
本屋の話もそうで、夢や幻想、ノスタルジーとしての本屋とビジネスとしての本屋を分けて考えずにいると痛い目に合うわけで。
とはいえ(どこもそうだけど)転換期にある本屋の世界において足りないのはトライアンドエラーだと思うので何よりもまずやることが重要。それは本書の中で川端康成が既存の文壇に異を唱えて雑誌を創刊したり菊池寛の文藝春秋もそうである。
その中で資金繰りについてどこまでちゃんと考えるか。
理想を追いつつもお金を稼ぐことにこだわる姿勢に共感を感じまくったのでした。