こんにちは 文学堂美容室retri 生田目です。
新しい年が始まりました。いかがお過ごしでしょうか。
年始はお休みをいただき、実家に帰って家族や学生の頃の友達と会ったり初詣に行ったりしながらゆっくり過ごし、甥っ子や姪っ子、友達の子供たちと遊んだりもして、体はついていかないものの気持ち的には元気になって帰ってきました。
子供たちはみんな小学校に入る前くらいの年齢なので、非常に元気で、そのくらいの時期独特の感性というか、発想が面白かったりして、一見突拍子もないことをしたり言ったりするのですが、その子の中ではちゃんと世界観があって、文脈があったりするのかなと。
そんな子供たちを見ているときに、ふと、自分はどんな子供だっただろうと、記憶を辿る瞬間がありました。すぐに思い出せることはほとんどありませんでしたが、どんな本を読んでいたかはいくつか覚えていて、その本にまつわる記憶も蘇ってきたのです。
そこで今回は、僕が子供の頃に読んでいた、いわゆる児童文学をご紹介したいと思います。
「ぽっぺん先生の日曜日」 舟崎克彦 岩波書店
小学校中学年くらいの時にハマっていた、ぽっぺん先生という大学の先生が主人公のシリーズ一作目。絵本の中に入ってしまい、そこで出されるなぞなぞを解いて次のページに進んでいくというお話で、今思えば自分にとっての異世界系物語の原点だったかもしれません。
読んでいた当時の子供の目線からすれば、主人公はいわゆる「おじさん」なので、どちらかというと絵本の中の動物や不思議なキャラクターといった登場人物たちの側に立って物語を楽しんでいたように思うのですが、主人公の年齢に近くなった今読み返すと、また違った視点で読めて感慨深いなと。
少し考え込んでしまうような、深い意味のある文章がさりげなく書かれていて、子供の頃の懐かしい思いとともに、大人として読んでも好きな本だな、と思えることに嬉しくなりました。
真面目でのんびりしたぽっぺん先生のキャラクターがすごく良くて、絵本から出ようという動機が、「お昼に間に合わない」「コンサートチケットをもらう約束をしている」というところが微笑ましいのですが、そんな余裕のある大人になりたいという憧れもあったのかもしれません。
「本の中に入り込む」というのは、まさに今、読書するときの感覚に近いので、自分のルーツというか、根本的なものが子供の頃からあったのだなということにあらためて思い至りました。
「天才えりちゃん 金魚を食べた」竹下龍之介 岩崎書店
当時六歳だった著者が文と絵をかいた、想像と現実が入り混じったようなお話。僕の両親がお世話になっていた職場の方からいただいた本で、もしかしたら初めて「本を贈られた」経験だったかもしれません。
著者は日記をつけるのが習慣だったとのことで、実際の出来事や実在の人物がその目線を通して描かれているのではないかと思うのですが、自分と年代が近いことや、同じ習い事をしていたことなどの共通点があるので、著者と重なる視点で、自分に置き換えた情景を思い浮かべながら読んでいたように思います。これも小学校中学年くらいの時に読んでいて、世界の見え方というか、周りの人や出来事をどういう感覚で見ていたかを朧げながら思い出したりしました。
お母さんのことも書かれているのですが、「カップラーメンを、よくばって一人で食べてお腹をこわした」ことや、アレルギーで鼻水が出ているところを描いた母の日の絵がデパートに展示されて怒っていたことなど、親に対する愛情ゆえの少しドライな視点というか、「ネタにする」という感覚にも共感していたように思います。
この本に影響を受けたのかはわかりませんが、僕が小学校の時、授業参観で親をテーマに書いた作文の発表で、「怒ってばかりいるので眉間にシワができている」というようなことを書いたことを思い出しました。謝りたいですね。
思い返してみると子供の頃には、アニメや本に出てくるキャラクターや、周りの大人に影響を受けて、口調や身振りをよく真似していたように思います。そして今でも、本を読みながらかなり影響を受けるなということをあらためて感じて、やはり、読んだ本でできている部分が自分の中に確実にあるなと確認したのでした。
年が明けると、特に今までと変わりはないように思うものの、なんとなく改めて物事を始められるような気がして、目標や計画を立てたり習慣を変えてみたくなったりしているのですが、自分のことを振り返ってみるきっかけにもなるかもしれません。
懐かしい本から今まで思い出したこともないようないろいろな場面や感覚が蘇ってきて、まるで記憶の断片がしまわれたタイムカプセルのようでした。やはり読書は記憶と結びつくなと思います。
もしかしたら今までの経験は年輪のように外側に重なっていって、真ん中には子供の自分が残っているのかもしれないなと。それも大事な自分なので、素直な子供の感覚と一緒に、したいことや好きなことを見つけていけたらいいなと思いました。
内側に残っている子供の自分に、「今日はどれにしよう」と語りかけるように、本を選ぶ新年もまた読書日和です。
最後に、文学堂美容室retriとは
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