こんにちは。文学堂美容室retri生田目です。
暖かくなり、下北沢の街も行き交う人が増えて賑やかになってきました。春休みだった学生の方や、演劇を観に来ている人、食事を楽しんでいる人などいろいろな目的の人たちが混ざり合って、まさにシモキタだなという感じがしています。
特に外国から旅行に来ている方を多く見かけるような気がして、海外の方へのアンケートで旅行に行きたい国の一位が日本だったり、海外雑誌の「世界で最もクールな街ランキング」に下北沢が入っていたりするのが頷けるなと。僕のお店にも、たまに本屋さんと思って入ってきてくれる観光の方もいたりするので、いろいろな国の本好きの人たちと話せたら楽しそうですね。
10年以上前、イギリスのロンドンに十日ほどヘアカットの勉強に行ったことがあって、英語はほとんど話せませんでしたがコミュニケーションする中での違いや共通点を生で実感しました。憧れの街だったこともあって、見るものや経験が新鮮で滞在中ずっと楽しかった思い出があります。
外国の方からすれば、普段僕が暮らして日常的に見ている街もそこにいる人も、また違うように見えているのかなと。異文化に接するときには刺激と緊張感があって、それまでとは違う視点でものを見る機会を与えてくれるのではないかと思います。
今回はそんな“異文化“、「海外文学」をご紹介してみようと思います。
『ジェニィ』(ポール・ギャリコ、新潮社)
ある日突然猫になってしまった男の子が、雌猫のジェニィに出会って猫としての生き方を学びながら、いろんな経験をしていく物語。猫視点の大冒険といった長編です。
海外の、さらには猫の世界という二重の異文化ですが、
「どんな猫でも、相手の猫が身づくろいしているあいだは、妨害しないものなの。」
「出口で必ず立ち止まること」
などといったジェニィの教えは、猫と一緒に暮らしたことがあると納得してしまうような習性で、読みながら猫の世界を同じ視点で見ているような感覚になって引き込まれます。
主人公は、全てが初めての状況の中でジェニィの教えを吸収しながら逞しくなっていくのですが、常に変わる環境に向き合っていくとき、サポートしてくれる人や導いてくれる人など周りにいる人たちの影響は大きいのではないかと思います。誰に何を教わるかというのは大事だなと。
自分の本能を使って、その瞬間を一生懸命過ごす中で、喜びや安らぎを感じながら生きていくということは、シンプルだけどすごくいいなと思いました。
猫好きにはとても楽しい、そして心を打たれる小説です。
『世界の果てのビートルズ』(ミカエル・ニエミ、新潮社)
主人公の少年の視点を通して、スウェーデンの田舎町での生活や社会を描く自伝的小説。
森が広がり冬は川が凍って、舗装道路もまだ少ない1960年代の閉ざされたような村の空気感の中で、思春期の生々しさやロックミュージックのインパクトが鮮烈に描かれます。
キレイなだけではない、大人たちの乱闘騒ぎや少しグロテスクな場面、嫌悪感のある描写など、人間の本質みたいなものに触れながら、知らず知らずのうちに大人に変わっていってしまうということが、
「思春期は死よりも力強かった」
など詩的な文章によってより印象的に、読み終わった後にも切なく残ります。
日本から遠く離れた場所の、経験したこともない数々のエピソードを読みながら、なぜか共感したり恥ずかしさや痛みみたいな感覚を思い起こしたりしました。
過去に自分が経験していてもその時は言葉になっていなかったものが、本の中の言葉や物語に反応して姿を現したり気持ちに波を立てたりすることがあるなと。言葉になる前の気持ちや感覚の大もとは、国や時代が違ってもやはり通じるものがあるのかもしれないなと思いました。
新年度になり、環境が変わった方も多いのではないでしょうか。今までとは違う場所、初めて会う人や新しい仕事はもはや異文化ですね。そんな中で、頭と体をフルに使っていろいろなものを取り込み、吸収して、消化しながら日々の生活をつくっていく最中かもしれません。
そして消化にはエネルギーを使うので、ゆっくりしながら変化を待つ時間が必要なのかもしれないなと思うのですが、そういうときに読書というのはちょうどいいような気がするなと。
個人的には、本を読んでいるときは現実から一旦離れている感覚があるので、インプットでもアウトプットでもない、ちょっと特別な、静かだけどいろいろな感情が揺らぐ時間になっています。
本の中には今まで知らなかったことや自分が持っているものとは違う物語があって、その時々の自分の状態によって感じることや読み取れることが変わる、身近な「異文化」かもしれません。
外国で言葉が通じないながらも意思や気持ちが通じた、と思えたときには本当に嬉しかったので、本の中にも、言葉にはしてこなかったけど何か通じるものがある、と思えるものに出会えるかもしれないという予感を抱きながら、今日もまた読書日和です。
最後に、文学堂美容室retriとは
サロン名:文学堂美容室 Retri(レトリ)
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