職業としての“本屋さん”(4)

谷中のシンボルであるヒマラヤ杉

谷中のシンボルであるヒマラヤ杉




職業としての“本屋さん”

こんにちは! BOOKSHOP LOVER主催の和氣です!

今週も掲載いたします。根津に来年1月オープンするひるねこBOOKS・店主の小張隆さんによる連載「職業としての“本屋さん”」。
前回は「本屋をやる」と小張さんが決意してから東京藝術学舎での講座や雑貨店での修行を書いてくださいました。

今回は本屋開業の一番の難関である物件探しです。

さあ、いま絶賛開店準備中のお店を小張さんはどうやって見つけたのでしょうか?

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店内画像04縮小

10月20日夜撮影。内装がほぼ完成!ここからいよいよ棚づくり!


「物件? ありませんね」

不動産屋に行っては繰り返される、このフレーズ。

「そうですよね。わかってるんです、はい」
「谷根千は人気ですもんね」

「谷根千」は、東京の谷中・根津・千駄木地域の総称です。古い建物や商店が多く残り、路地には猫がのんびりと寝転がっていることも。昔ながらの雰囲気がただよう町には、最近では多くのカフェや雑貨店、ギャラリーなどもできています。近年は特にメディアでの取り上げも多く、すっかり観光地として定着しました。

そんな人気のエリアですから、物件が出るとすぐに決まってしまいます。稀に空き物件があっても、とても手の届かないような賃料! 不動産屋さんも「一応探しておきます」といった感じで、とても見つかる気配はありませんでした……。

ここしかない!

ですが、頑固な私は他の地域で出店することは考えられません。たまたまインターネットで見つけた物件を「とりあえず」といった感じで見に行った時、「ここしかない!」という確信のようなものがわいてきたのです。

人通りが多く、観光客が次々に入ってくるような恵まれた立地ではありません。地元の人がのんびりと歩く、どちらかといえばひっそりした場所ですが、そんな静かな環境が気に入りました。個性的なお店が点在していて、職人さんが多く行きかう場所、といった印象です。

6坪に満たない小さな店ではありますが、そんなサイズ感も自分には合うような気がしました。もちろん日当たりや、店の前に屋根があることなど、条件もクリアです。

そこからはあっという間。契約から内装の見積もり、そして工事まで、まさに怒濤の勢いで進んでいき、当事者ながら、見えない渦にまきこまれているような感覚でした。

谷根千は“本の町”

「谷根千」は、実は“本の町”でもあるのをご存じでしょうか?

森鴎外や夏目漱石など文豪にゆかりのある町なのです。いまや全国で開催されている「一箱古本市」も、この地域から始まりました。現在も「不忍ブックストリート」として様々な本にかかわるイベントを企画しています。
全国的に有名な新刊書店や個性的な古書店、ブックカフェなども集まっていて、本好きな方にとっては外せない地域です。
そんな場所で、自分が本屋を始めるのは勇気が要りました。既に本の町として出来上がりつつあるところに、自分なんかが入って行ってうまくやれるのだろうか? 嫌な顔をされるのではないだろうか?

ですが、やはり自分はこの町が好きですし、どうしてもここで始めたかったのです。個人商店が多く、人々のつながりがあり、日々の暮らしを大切にしている。この町に越してきて数年になりますが、私にはそんな実感があったからです。

少しずつではありますが様々な方と知り合うことができ、一緒にこの「本の町」を盛り上げていきたい、という気持ちがますます強くなりました。幸いなことに、「不忍ブックストリート」の活動にも関わることができ、この町の隅っこの方に加わることができました。

いまは取次会社で働きながら、ひたすら店内の整理と仕入れの毎日です。

次回はお店のこと、“本屋”としての思いなどについて詳しく書きたいと思います。

(つづく)