職業としての“本屋さん”(3)

谷中のシンボルであるヒマラヤ杉

谷中のシンボルであるヒマラヤ杉


職業としての“本屋さん”

こんにちは! BOOKSHOP LOVER主催の和氣です!

いやー師走ですねー。師が走り回っております(?)

さて、2016年1月オープン予定の本屋さん「ひるねこBOOKS」店主の小張隆さんによる連載「職業としての”本屋さん”」。

前回は、児童書出版社での仕事と本屋を開くことを決意した経緯を書いてくださいました。

今回は、本屋を開くために何をしたのかについてです。
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10月8日撮影。カウンターが付いて少しお店らしくなりました。

10月8日撮影。カウンターが付いて少しお店らしくなりました。


「本屋を始める」。

そう決めたものの、もちろんノウハウなどありません。そもそもサラリーマン家庭に育った自分には、商売の知識もありませんでした。
心配なのは、なんといってもお金の問題です。本当に実現できるのだろうか?これは今でも同じですが、頭のなかは不安ばかりでした。
ですが、とにかくやってみないことには何もわかりません。仕事は続けながら、本を読んだり、人に話を聞いたりしながら、少しずつ知識を蓄えていきました。

いつか自分だけの本屋をもつのもいい

そして本に関するイベントや講座にも積極的に足を運ぶようにしました。その中でも印象深かったのは、東京藝術学舎の「続・いつか自分だけの本屋をもつのもいい」(2014年7月~)という講座です。

そもそもこの講座を知ったのは、沖縄出張中に「市場の古本屋ウララ」に立ち寄った際に(お店は休みだったのですが)、たまたまチラシを手に取ったことがきっかけでした。すでに気持ちがかたまっていた時だったので、「これぞ運命!」といった感じで、すぐに宿から申し込みをしたことを憶えています。

私が受講した年度は、第一線で活躍中のブックディレクターやコーディネーターの方、古書店の店主まで、幅広いゲストのお話を聞くことができました。

それぞれの立場による本の捉え方の違い、本のある空間への思い、そして本屋の経営のことなど、本屋を始める上で勉強になることばかりでした。そして何より、受講生の方々の姿を見て、「本屋を始めたいと思っている人がこんなにたくさんいる」ということに勇気をもらう機会にもなりました。

雑貨店での修行?

決心してから約1年。勤めていた出版社を2015年3月に離れたあと、「まずは書店で働いて経験を積もう」と決めました。雑貨を扱うことは決めていたので、そういった書店で話を聞いたものの、なかなか決まりません。将来の目標を語ったのがいけなかったのか、それとも年齢の問題か……。

そうこうしているうちに、ある大手書店の雑貨部門で採用が決まりました。しかしながら、ここで配属された先は書店から独立した売場。本ではなく、帽子やカバン、食品など様々な商品の販売をすることに。思いがけず、しばらく「本」の世界からは離れることになります。

ですが、これは自分にとって大きな経験でした。店頭での接客や陳列を学べたことはもちろん、対面での細かな商品紹介や積極的に売り込む姿勢などは、書店では本来行われないことです。書店とは性質が異なることは重々承知していますが、ディスプレイなども含めて書店が学ぶべきことは多いと思いましたし、本の世界を客観視できた貴重な時期でもありました。

いよいよ物件探しへ

そして夏からは、いよいよ本格的に開店準備を始めました。まずは物件探しからです。

開業のノウハウ本などをいくつか読むと、<まずは店のコンセプトや商品を決めて、ターゲット層にあうエリアを絞り込み、さらに周辺の交通量、人通りなどから、見込み客数を仮定し、客数×客単価で売上見込みを立て、原価率を考慮して利益を……>というようなことが当然どの本にも書いてあります。確かにこれらはビジネスをやる上でとても重要です。実際に私も試算しましたし、自信がなければ開店などとてもできません。

ですがあえて誤解を恐れずに言えば、どれだけ考えてもこれらはあくまで「予想」でしかありません。営業の経験から客観的なデータ・分析の重要性は理解しているつもりですが、ここで考えすぎて二の足を踏んだり、意に沿わない場所に出店をするよりも、まずは「自分がやりたい場所でやってみる」気持ちを優先させることの方がはるかに大切だと感じました。 実際、これくらいの思いがなければ開店などできなかったと思います。

そして私にははっきりと描いていたイメージがあります。それは自分の好きな「谷根千」の町で本屋をやる、ということでした。

しかし、物件探しは予想以上に難航しました。
(つづく)