地下鉄東西線の西18丁目駅から少し歩く。専門学校が集まる場所に並樹書店はあります。この周辺には並樹書店以外本屋はありません。
この日の札幌は雪。前日積もった雪に加えて時たま降ったりやんだり……朝に砂川のいわた書店へ。行きの特急が乗る予定ではなかったオホーツク、帰りの特急が1本運休(想定よりはマシだったので何も問題なし)。砂川から戻った足でそのまま直行でした。
上着に付いた雪を払って店内へ。天候が天候だったため今回は均一棚は出ていませんでした。まずは棚を物色。小説や版画の棚があったり。札幌の古本屋なので北方関連資料も充実。個人的には出版や図書館、書誌学の本が結構多かったのが嬉しい限り。何か見つかる感じがしました。それ以外にも署名本の棚や初版本、限定本の棚もありました。初版本は個人的に本に触るのも戸惑ってしまいます。物によってはかなりいいお値段のものですし。
棚から本を取って会計へ。趣味で本屋を回っている旨話をしている時に「棚見るの早いね。内地から来た?」と店主。いきなりの指摘で驚きましたが、どうやら店主曰く「棚を見る早さが本屋慣れしているから内地の人だと思った」と。道内の人だともう少し時間がかかる場合が結構ある、という話も。今まで棚を見る早さを意識したことがなかったですが(規模によってですが基本30分/軒は見積もりしている)、今度本屋を見る時に確認してみたいものです。
更に話を伺うと、やはり札幌市内の古本屋は減っているとのこと。組合員はある程度いるものの、店売りがだいぶ減ったようで、本屋巡りは昔よりやりにくくなったようです。また、組合に入っているため日本の古本屋もやってるとのことですが、北海道内や札幌市内よりも三大都市圏や福岡など内地からの注文が多いとのこと。北海道と本州や九州の読書文化について、比較した文献とかあれば読んでみたいものです。この辺りの店主の経験が実際と比べるとどうなのか、かなり気になります。書誌学の棚がかなり充実していることを話題に出すと、店主の好みで集めているため充実しているとのことでした。
さて、札幌から戻ってきて手元の『札幌古書組合八十年史』(以下『組合史』とする)を眺めてみたところ、どうやら1941年の創業とのこと。ただし並樹書店というより「瀬木書店」という名称だったようです。確かに店内にあった古物商関連の板にも「瀬木書店」と書いてありました。この違いは果たして……。
かつては南5西3、ススキノに店を構えていたようです(その前には苗穂の方で店を構えてたらしい)が、1984年に現在の場所に移転。この店舗移転について『組合史』では気になる部分がありました。些細なところなのですが、座談会では店主が「昭和63年に例の地上げにあって、現在の大通り西十九丁目に移転しました」とあるのですが、年表には1984(昭和59)年の12月24日に移転とあります。この数年の違いは一体何だろう、と気になるばかりです。移転したのは事実ですが……。
また、棚の1つである限定本について『組合史』によれば東京の吾八書房に通って基礎を作っていったようです。東京に行っている間にどうやら谷中の鶉屋書店にも行ったことがあるようです。神田や東京に修行に行っているわけではないけれど、資料を掘っていくと思わぬところで東京の古本屋との関係が見えてくるのは非常に興味深いものです。
今回買った本は、『沓掛伊左吉著作集 ―書物文化史考―』、『井上書店の記』、『古書街を歩く』の3冊。個人的に今回もかなりの収穫です。
『沓掛伊左吉著作集 ―書物文化史考―』、筆者が貸本関連を調べていたのでまとまったものがほしいと思い購入。鎌倉文庫に関する内容があり、ほんの少しだけやっていた鎌倉文庫の勉強を先に進めることができそうです。
『井上書店の記』は札幌で本屋を回って初めて見つけた本です。本郷の井上書店についての本です。今でもある井上書店なのか確認するため奥付をみたところ、著者略歴に「合資会社井上書店」という記載があったので、本郷に今もある井上書店で間違いなさそうです。『古書街を歩く』は多分持っていないはず、と思い購入。紀田順一郎の本も読み進めねば……。