今までたくさんの本屋を取材してきて紙媒体やウェブメディア、自分のブログに書いてきたのだが、特に仕事として執筆する場合、取材してきたことの自分が面白いと思ったことの一部しか原稿にできていないことがある。
力不足を嘆くばかりではあるのだが、やはり限られた字数で何個もメッセージを詰め込むのも違うなと思うわけで、そのまだまだ伝えきれていないことをどうしようかと長年思っていた。
そのことについて昨年1年が久しぶりに連載を持っていない時期だったので少し時間を空けて考えられたのだが、やはりこれは自分のブログで書くのが一番だろうということになった。ちょうど掲載誌が出るタイミングだと販促にもなるだろいうことで書いていくことにする。
タイトルは、いまの『本の雑誌』の連載名は「本屋の旅人」なので、その取材こぼれ話として「本屋の旅人B面」だ(思いついたのが冒険研究所書店取材のときなので、1回目の連載についてはタイミングを逸してしまった。これはボーナストラックとしてどこかのタイミングで書くつもり)。
ということで、第一回目(A面連載としては2回目)は冒険研究所書店を取材したときのことです。
***
極地を経て”普通”に至る
今年の春頃だったか。冒険家が本屋を開くというツイートを見たのは。なんのことかと思った。どういう理屈で本屋になるのかと思った。
場所は小田急線・桜ヶ丘駅のすぐ前。歯医者の入ったビルの2階だ。階段前から古本、自走式パラグライダーで空から写真や映像を撮るひとのドキュメンタリーがテレビ画面から流れる。階段を登る最中には極地の写真。ドアを開けると思ったよりも広くて驚く。思ったよりも本が多い。
と、これ以上の店内説明は連載本文に任せるとして、そう、店を見て話を聞いて一番驚いたのは思ったよりも本屋だったことだ。
ご著書の『考える脚』を読んで冒険に対する考え方も人間社会に対する考え方も、どちらもフラットでラジカルな方だというのは分かってはいたが直接会って話をすると本当にその通りの方で、端的に表現すると「普通」と書けば良いだろうか。
以前、松浦弥太郎さんのトークイベントを聞いたときにも思ったことだが、プロフィールやメディアの記事を読むと出てくる実績の数々からオーラとか雰囲気とかそういうのがすごい人なのかなーと思うのだけれど実際に見てみると普通でどこにでもいそうで(テレビで芸能人はオーラがどうだというのを聞いてきた弊害みたいなものがある気はする)だからこそ凄いと僕は思うのだ。
つまりは実績がその人にとって自然なことなわけで、そりゃ結果を作るまでのあれやこれは大変なことも当然あったろうけども、そういうのを全部飲み下して等身大で自然体でいるということで、そういう姿勢みたいなものに生き物としての強さを感じて「凄い」と僕は思うわけなのだ。
というわけで、他の本屋と同じように話を聞いて、楽しく終えたのだった。
それにしても、冒険研究所書店で小取次のウェブ発注システムについて盛り上がるとは思わなかったよ。
***
お買い上げお願いします!