珈琲文化には割と興味がある。本屋でもカフェ併設で珈琲を出すのが定番にもなっていて場所によっては結構美味しいところもある。それに本と珈琲の相性はもうわざわざ書き連ねるまでもないほどなのであり、つまり本屋とそれに付随する文化のことを考えるなら珈琲のことも考えないと片手落ちなのである。あと僕は珈琲が好きなのである。
本書を読む動機については簡単でこのベアポンドエスプレッソさんが下北沢で店をやっているからで、でもベアポンドのことを知ったのは2014年公開映画の『A FILM ABOUT COFFEE』を観てからだった。
ベアポンドのオープンが2009年で、BSTの1階にあるバロンデッセのオープンが2012年(6月)、僕が下北沢に行く度にバロンデッセに行くようになったのが同年の末くらいからだと思うので、それからさらに2年経ってからベアポンドのことを知ったわけだ。まあ珈琲が好きで少しずつ知っていこうと思い始めたのがA FILM ABOUT COFFEEを知ってからだから然もありなんである。
で、どこで出会ったのか覚えていないがそのベアポンドが本を出していると本当につい最近知って読むことにしたのだった。ちなみに本書の発行は2011年である。だいぶ後発である。
というわけで本書の紹介だが、ベアポンドのオーナーバリスタ・田中勝幸さんの自伝である。元々広告業界の出身だというのは初めて知った。日本でキャリアを積み、さらにアメリカの大学を出た後、同地でも同様の職を得るが会社が倒産してしまう。フェデックスに勤務することになり順風満帆の人生を送るが、ふとしたきっかけでエスプレッソに出会い、あれよあれよと自身の店を立ち上げるまでになった。その一部始終と店で何を目指しているのかを描いたのが本書だというわけだ。
クリエイティブとビジネスのバランスの取り方が興味深い。まだちゃんと言葉にできないけれどもこうアメリカ的な感じというか。日本だとアートやクリエイティブに属する物事とビジネスの言葉が乖離しているような感覚があるがそれが無い感じ。ビジネスも、自分の人生にとって大切な何かをつくることも同じ盤面にあるような語り口を感じた。
いつもバロンデッセで飲んでいるけれど、たまにはベアポンドにも行こうかなあ。
というわけで、年表に活用できそうな情報と気になったところをメモ的に。
2001年 ナインス・ストリート・エスプレッソがマンハッタン9丁目にオープン。スペシャルティコーヒーの豆を使うエスプレッソでは初めてのお店。
p.30
"バリスタはニューヨークでは基本的に世捨て人だから。"
p.32
- 2006年くらいから「カウンターカルチャー」ロースターな2006年くらいからパブリック・カッピング(試飲会)を始める
- 2008年 ギミ!・コーヒーがニューヨークのノリータ地区にもオープン。(本店はニューヨーク州北部のイサカ)
"お前らは全員カウボーイだ。だからバッファローを探しに行け」"(フェデックスの訓示)
p.49
- 2009年4月26日 ベアポンドがオープン
"ディファレンスは自分から違いを言っていること。これとあれは違うと、本人サイドが言うことですね。ユニークネスというのは、第三者が感じること。だからユニークネスを自らやると反感を買っちゃうんです。出来るのは違いを出すだけなんです。"
p.122
- 2000年 ギミ!・コーヒーが始まる前は”ヘイゼルナッツ・コーヒーが人気があるような状況。フレーバーコーヒー全盛。エスプレッソを一杯ずつ丁寧に出すのはとても新しいこと。エスプレッソの抽出やミルクのテクスチャーを変えた最初の人々がギミ!だと思っている。エスプレッソ文化の最初の革命を起こしたんだ。”(上記は内容の要約。発言はギミ!・コーヒーのCEO)