グンマスター氏と群馬の素敵本屋をめぐる連載「グンマーは秘境じゃない」。これで6箇所目となるがそろそろ暗くなってきた。ここらで最後にしようじゃないか。
- グンマーは秘境じゃない(1) 大人も子供も楽しめるブックフェス「たかさき絵本フェスティバル」
- グンマーは秘境じゃない(2) とにかく落ち着く家のような本屋「ふやふや堂 早政の土間店』
- グンマーは秘境じゃない(3) まだまだ攻める老舗絵本屋「フリッツ・アートセンター」
- グンマーは秘境じゃない(4) 縁が縁を呼ぶ。出店マスターsuiranの旗艦店「book stand レンズ」
- グンマーは秘境じゃない(5) 本好きのための気楽なサードプレイス「珈琲と古本 THE GINGHAM」
ラストを飾るのはイベント「ZINPHONY」だ。
群馬にもあったzineのお祭り
既にアートやデザインなどクリエイティブに興味のある人にとっては定着しつつあるzine。
簡単に言えば個人またはグループが自費でつくる出版物である。同人誌との違いは明確ではないが、まあアート・デザイン関係の人が作ったものであればzineと言って差し支えないだろう。
え? ジンって何か分からないって?
変な名前に驚かれた方もいるかもしれない。ジンとは個人による小規模の出版物である。
全共闘世代に流行ったリトルマガジンとも違う個人の主張というような堅苦しいものではない自己表現の一つとしての出版物。それがジンである。名前の由来はマガジン(magazine)のジン(zine)。手軽な雑誌とイメージしてもらえば良いだろう。
だから、猫が好きな人はひたすら猫のことを。ゴスロリが好きな人はゴスロリのことを。旅の記録を書く人だっている。形式だって自由だ。家庭のプリンターで印刷したものをホチキス留めしただけのものから印刷所でしっかり印刷されたこだわり溢れるものまで。情熱と財布の相談によって生まれる紙媒体のケミストリー。それがジンなのである。
このMOUNT ZINE主催のイベント以外だとzineがメインのイベントは福岡や国外だと台湾や韓国ではやっているが他ではあまり見かけない。それが群馬にはあるのだ! しかも定期的に!
ここからもグンマーが秘境じゃないことが分かるだろう。誰なんだこんなこと言い出したの。
zineを楽しむ
ZINPHONYとはそもそも何なのか? サイトから引用しよう。
ZINPHONYは、zineを作って、展示して、読んで、売って、買って、zineをきっかけにコミュニケーションして楽しもう!というユニットであり、そのユニットが主催するイベントの名前でもあります。群馬県高崎市を拠点に活動します。
Zinphony(ジンフォニー)の名前はSymphony(シンフォニー)とかけています。オーケストラが演奏する交響曲のことですね。演奏家がそれぞれの楽器を奏でるように、zineというメディアを使って、内に秘めた色んなことを表現してほしい。それらが集まり、かかわり合うことによって面白い場が生まれたらいいな、そんな思いを込めて名付けました。
なるほど。zineは楽しい。買う方からしても普段は手に入らないような個人の(もしかしたら偏った)情熱が溢れ出た冊子を買えるのは他にない体験だ。ましてや、それを自分で作ったら……それは楽しいだろう。だが、ひとつ問題がある。作ってそれでオシマイになってしまわないか、ということだ。
そう思うとこういうzine好きが集まる場を定期的につくるZINPHONYの試みは素晴らしい。ZINPHONYがあれば自分のzineをきっかけに話すことができる。MOUNT ZINEの活動も素晴らしいが、こうやって違う土地で違う人が同じ文化を広めようとしているのを見ると嬉しくなってくる。ぼくもzineを作りたくなってきた。
なんともはやポートランド
こんな素敵なイベントを開いているのはどんな人だろう? と勇気を持って話しかけてみたら、なんと以前ぼくが購入したzine『nanto mohaya portland』の製作者だった。
こんなに嬉しい偶然があるだろうか。ポートランドのリアルな旅行記であるこのzine。ほかの方が作ったものだが同じくポートランド旅行記である『DIY TRIP SEATTLE&PORTLAND:手作り印刷物とDIY精神をめぐる旅~シアトル・ポートランド編~』と並行して読むとより楽しめる。
『nanto mohaya Portland』の著者・荻原貴男さんはポートランドに旅した際、彼の地のzine文化に刺激を受けて、「ぜひ群馬でもやりたい!」とはじめたのがZINPHONYなのだ。2013年11月に開催した第1回から数えてこの日訪れた回が5回目。楽しいことを第一に続けているが、回を追うごとに知らない人からの申し込みが増えてきて嬉しいそうだ。
ギャザリング
ポートランドと言えばギャザリングである。カフェやバー、日本だと居酒屋のようにたまたまその場にいた知らない人同士が打ち解けること。
ZINPHONYではお酒も飲めて、個人の情熱が溢れ出た冊子があって。それだけだとぼくのような訪問者は寂しくなるのだが、主催者の〜さんがバーテンダーのように我々とほかの参加者を繋げてくれ、ついには、そこで出会った方と夕飯までご一緒した。
これってまさにギャザリングじゃないか。ZINPHONYは群馬に突如出現したポートランド的空間だったのだ。次回はきっと自分もzineをつくって参加しよう。だってこういう場は自分も参加するのが一番たのしめるから。
ちなみに、次回は2016年6月25-26日に、訪問時と同じ場所「SNARK 3F」にて開催される。いますぐスケジュール帳に書き込もう!