友人にグンマスターという男がいる。この文章を書いた男だ。
銀行員にも関わらず奇抜なファッションを着こなし、水木しげるを敬愛。広告関係やアーティストにやけに知り合いがいる変わり者な彼。群馬には何もないと言って東京によく来ていて、その際に知り合ったのだがここのところ群馬が面白いらしい。彼は言う。
群馬が面白くて最近は東京には行かないんだ。
良く聞くと本屋も小さくておもしろいお店があるそうだ。そんなに面白いならぜひ案内してくれ、と頼み込んでみたところ快諾してくれた。
本連載「グンマーは秘境じゃない」では2016年1月30日に彼とその仲間が連れていってくれた本屋、ひいては本のある場所を紹介していく。
高崎に住みたい!
そもそもの話。なぜ本連載のタイトルは「グンマーは秘境じゃない」なのか。
勘の良いBSL読者の皆様はご存知だろう。本タイトルの元ネタは、このマンガである。以前ネット上で流行ったが、つまりは「群馬には何もない!」というものだ。
グンマスター氏と群馬ツアーをやることになったとき、はじめに浮かんだ連載名が本タイトルである。というのも、群馬は秘境というが本当にそうだろうか。群馬には何もないのか? ネット民が面白がって盛っているだけなんじゃないのか?
例えば読者の皆様は群馬と聞いて何を思い浮かべるだろうか? 試しに「群馬 観光」でGoogle検索してみると、「草津温泉」「尾瀬」「サファリパーク」「富岡製糸場」といった場所があるようだ。
なんだ、意外と色々あるじゃないか。
と思いながらも確かに「知名度が抜群にある」といえそうなところは草津温泉くらいしかない。ところが、群馬県民にとって草津温泉は群馬じゃないらしい。困ったことになった。これでは本当に秘境になってしまう。そんなこんなをツアー前にグンマスターに話したところ「彼は安心して任せておけ」と言う。大丈夫かなあ。
たかさき絵本フェスティバル
一抹の不安と共にはじめに訪れたのが「たかさき絵本フェスティバル」だ。着いたのは10時。ちょうど開催の挨拶がはじまったところである。集まっているお客さんには家族連れが多い。挨拶が終わり、いよいよ中に入るとこれがまた良かった。
絵本の原画展をメインに各種トークショーや物販も行うこのイベント。ふだん絵本の原画なんて観ないのだが感動した。緻密な描写と可愛らしいキャラクターが無理なく同居し、淡い絶妙な色遣いに癒される。
子供たちと共に夢中になって館内を進んでいくと昔の消防車である。なぜこうもレトロ趣味を鷲掴みにしてくるのか!
そうやって感動しながら歩いたらすぐに最後のフロアに到着した。ここは販売ゾーン。おもしろいのが絵本だけじゃなく一緒に来た大人でも楽しめるような本も売られているのだ。
ブックディレクター・幅允孝氏をはじめ、取次会社トーハンや主催の時をつむぐ会などによる選書が楽しめる。
ここまで書いてきたようにたかさき絵本フェスティバルは大人も子供も楽しめるブックフェスである。よく見るとお客様には若い女性も多かった。本を中心に大人も子供も笑っている空間。幸福な時間を見て過ごせた。
グンマーは秘境じゃない?
まず一つ目の訪問では、高崎にこんなおもしろいイベントがあり、ここになら住みたいと思えるような幸せな時間があることがわかった。だが、これはあくまでもイベントだ。本当に秘境じゃないというのなら、素敵なお店がなければいけない。
それならこれから連れて行こう。
次にグンマスター氏が紹介してくれたのは住宅街の中に佇むカルチャー本屋だった。
つづく