職業としての“本屋さん”
こんにちは! BOOKSHOP LOVER主催の和氣です!
2016年1月オープン予定の本屋さん「ひるねこBOOKS」店主の小張隆さんによる連載「職業としての”本屋さん”」。
前回は、ひるねこBOOKSの簡単な紹介と小張隆さんの幼少時代、そして児童書出版社に入るまでを書いていただきました。
今回は、児童書出版社に入ってから本屋を始めようと思うまで、です。
***以下、本文***
出版社の営業のお仕事
「小張くんは営業ね」。
面接でそう言われて入社したものの、出版社の営業とは一体どのようなものなのか想像がつきません。恐らく多くの方と同じで「出版社で働く=編集者」というイメージでした。「営業って何をするんだろう?」という思いを抱えて入社したのですが、不安に思う間もなくすぐに「初出張」がやってきました。「とにかく実践あるのみ」です。
やや専門的な話ですが、児童書業界には「グループ販売」というシステムがあります。数社で一緒にグループを組み、全国の学校や図書館を分担してまわります。自社の本だけでなく、他社の本もあわせてセールスするのですが、新人であろうとも必ずこの出張で鍛えられます。
私の勤めていた会社では、幼稚園や保育園へ直接訪問して絵本や紙芝居を販売していました。子どもたちの前で汗をかきながら実演したことも一度や二度ではありません。
そしてもちろん、書店をまわって本を案内することも忘れてはいけません。新刊や既刊のフェアなどを書店に提案し売り伸ばしをはかります。
本屋さんで書店員さんと立ち話をしているスーツの人がいたら、その人はきっと自社の商品を必死に説明している営業さんです。決して邪険にしないであげてくださいね!
これらの販売活動を通して、徐々に「営業」という仕事を理解することができるようになりました。現場での営業だけでなく企画立案や取次会社との交渉など、表からは見えない細々とした仕事も多く、営業の仕事は多岐にわたります。また、編集の他にも、製作や広報宣伝、物流や総務といった多くの人の力があって、1冊の本が読者のもとに届くのだということも、出版社に入って学ぶことができました。
実際に本が生まれるところに立ち会い、そしてそれを広めていく、という一連の流れに携わることができたのは、とても嬉しく、大きな財産です。
本屋を始めよう!
一方で考えさせられることも多くありました。
本や雑誌の売り上げは右肩下がりが続き、町の本屋は次々に無くなっています。その原因は一つではありませんし、小さな商店が閉まるのは何も本の業界に限ったことではありません。時代の変化だといわれればそれまでなのかもしれません。それはわかっていてもやはり「このままで良いのだろうか」という思いがだんだんと強くなっていきました。
業界の構造的な課題、読書や書店をとりまく環境の変化。解決すべき様々なテーマがあるはずなのに、「活字離れだからしかたない」「もう本屋で本は売れない」という声を当然のように耳にするようになりました。私はそのことが悔しくてたまりませんでした。まだまだ本のためにできることはあるはずなのに。
本を売る現場にいない人間が、無責任に「売れない」と言っていても何も変わるはずはありません。だったらまず自分が本屋をやって本を売ろう、そう思ったのです。そうすれば何か小さなことから変わっていくかもしれません。ネットや大手チェーン、新古書店もいいけれど、もっと個人のレベルで頑張れる書店を増やしたい。まずは、それが目標であり願いでした。
ちょうど様々な変化のタイミングでもあり、会社を離れて本屋を始める決断をしました。
(つづく)