BOOKSHOP TRAVELLERで間借りをしてくださっている屋号「BOOKS TBD」の山本さんによる、2020年実店舗オープンとそれからの連載 「ビルトングがくずれても」 第4回です。
1回目は自己紹介と本屋開業の理由について、2回目はブックスモブロとの出会い和氣との出会いに続いて3回目はBOOKSHOP TRAVELLERへの出店について、そして今回第4回目は物件契約についての話です。
それではどうぞ~
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第4回:物件契約はタイミングです
ブックスTBD改め、ワグテイル・ブックストアの山本です。無事1/11にオープンしてから、1か月が経ちました。当面は金・土・日の週末営業です。まだまだお客さんは知り合いが大半ですが、それでもBookShopLoverの棚から辿って、わざわざ横浜まで来てくれたお客さんや、Twitterのタイムラインで興味を持って足を運んでくる方、興味を持って立ち寄ってくれる近所の人たちと、少しずつ手ごたえを感じる日々を過ごしています。
第4回は、物件契約に至るまでの顛末です。
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店舗物件を探すにあたり、まずはざっと以下のような条件を設定しました。
- 自宅から自転車で通える範囲(坂が少ないコースで、30分以内)
- 一人で切り盛りする想定なので、広さは高々10坪/30平米弱まででOK
- 家賃は管理費等込みで10万円以下目標
- 住宅地に隣接しつつ、物販のお店がそれなりにあるところ
- 5路面店
- できれば観光地隣接
1・4と2・3はそれぞれ関連していて、1・4は必ずしも駅近ではなくてもよいということになります。2・3は、狭ければ家賃は当然安くなります(その分売り上げの期待値は下がってしまいますが)最初は4~5坪程度の小さい物件で、売り上げは下がっても初期投資を少なく、コントロールをしやすい形で始めるのを想定しました。
5は、古本屋関連の本を読んでも、色々な人のアドバイスでも、とにかく路面店の方がよい、となっていました。私自身に知名度があるわけでもないので、隠れ家的なお店は本当に隠れて見つからないだけになります。お客さんの入店しやすさはもちろん、商品の搬入・搬出の手間、お客さんが買取り持ち込みの時に階段だと大変でしょ、と説明されて、なるほどなと。
幸い、桜木町~みなとみらい~関内~中華街~元町~山手エリアといった、横浜の主だった観光エリアは、いずれも私の自宅から自転車30分圏内です。みなとみらいの埋め立てエリアと関内の官庁街を除き、割と住宅街も近接しているので、候補となりうるエリアがいくつかありました。まずはWEBの物件情報を眺めて相場観を養いつつ、バイトの合間に自転車で街を廻り、物販の小さいお店が出しやすそうなエリアや、既存の古書店の立地、客層などを見て回りました。
子どものころから横浜在住で馴染みがあるとはいえ、20年以上訪れておらず、久し振りに足を延ばした地域も多く、ずいぶんと街が様変わりしていたのには驚かされました。条件を満たしつつ、雰囲気のよさそうな物件を探して不動産屋の前の物件情報を見たり、しばらくカフェに構えて通りの人波を観察したり。
エリアの絞り込みは比較的早く進みましたが、物件のほうはなかなか巡り会えません。地域の特性もあるのだと思いますが、上記エリアの店舗物件は飲食店が圧倒的に多く、小さめの店舗となるとスナックやバーの居抜きばかりです。壁が鏡張りで、カウンターが残っているような物件が大半でした。
改めて、横浜は(意外にも)個人で経営している個性的な物販のお店は、東京はもちろん、他の地方の観光地と比べても少ないな、と感じました。大きいショッピングモールはたくさんあるのですが。なまじ東京との距離が近いことが影響しているかもしれません。
あまりに物件が出てこないので、カウンターの後ろに本棚敷き詰めて、ブックBarのような形態でも面白いかな、と一時は考えたりもしました。ですが、本屋専業で準備を進めていいましたし、店舗経験が少ない中、一人で飲食と物販の兼業は負荷が高いのは目に見えています(そうした形で開業した方もいるは知っていますが、自分には難しいなと思いました)アルバイトで当面の生活費はしのぎつつ、物件待ちの日々が続きました。
会社を辞める時、1年準備期間にあてて、2019年の秋には開業したい、とおおざっぱな目標を知人・友人に話していました。さすがにそろそろ、と思い始めた8月終わりごろから、ようやく元町や関内でぽつぽつと30平米前後で、物販でも使えそうな物件がいくつかWebに上がってきました。元町の商店街近辺も候補エリアのひとつだったので、仲介している不動産屋に直接伺い、希望を伝えて、条件のあいそうな物件があれば連絡してほしいとお願いしました。
少し期待が高まり始めた中、9月の後半に今の物件を見つけます。早速見せてもらったところ、もともとガラス細工の作家さんのお店が入っていたとかで、広さは7坪強ながら、物販向きの使いやすそうなスペースです。ビルの奥なので日差しは全く入りませんが、書店としてはむしろ好都合。ただ、ビルの2Fなので路面店ではありません。その他の条件は満たせそうでしたが、ちょっと逡巡して、その日はいったん検討しますといって帰りました。
一晩あれこれ悩みました。皆にアドバイスで強調された路面店でないことはやはり引っかかりましたし、契約すれば当然もう後戻りはできません。翌日、改めて不動産屋さんに伺って、ひとまず仮予約のようなことはできないのか相談しました。他にも内見依頼が来ているとのこと。仮契約という形で、本契約まで実質予約するような形はとれますよ、と提案いただいて、手続きをしました。この時点で本契約もする決心を固めました。
そのまま特に引き延ばすことなく、10月の半ばに正式契約を結びました。大家さんはビルの5Fに住まわれている方で、元和菓子屋を経営されていたとのこと。物販のお店が入ることを喜んでいただき、私の好きなように改装してもらっていいから、と言っていただきました。
さあ、お店の場所が決まりました。開店準備です。 ~続く~