LIBRISをご存知の方はどれくらいいるだろうか? 本サイトを見てくれているマニアックな方なら知っている方も多いかもしれない。
知らない方のために紹介しておくと、LIBRISはBOOKSHOP TRAVELLER のひと箱店主の屋号であり、同店のPOSレジシステムの名前であり、そして先日リリースされた本屋検索サイトの名前である。
5年ほど前から協力しており、その間、いろいろなサービスを作っているが、このほどようやく本命の本屋検索サイトがオープンとなったというわけだ。
現在、60店舗ほどが登録してくれていてまだまだ増やす予定。機能は主に「今いる場所の近く」「地図・住所」そして店名で検索できるというものだ。さらにBASEで本を売っている店であれば連携もできるようにもなっている。
(バックエンドの機能もいくつもある)
協力する理由は、本屋ユーザーの母数を増やしたいからだ。詳しく説明するために少し遠回りしたい。
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近頃出版された『IN/SECTS vol.13 特集 NEW ‘BOOK SHOP’ CULTURE ー書店に見る、商いのカタチー』の内沼晋太郎氏の稿では『本の雑誌』に寄せた「独立書店年表」に触れてくれている。
引用されたのは、近年の本屋開業数の増加の原因の一つに情報の民主化があり独立書店が『頑張ればできるもの』になったとした部分だ。
それを受けて
"「頑張れば」に含まれている困難は、未だ大きいと感じる。"
『IN/SECTS vol.13 特集 NEW ‘BOOK SHOP’ CULTURE ー書店に見る、商いのカタチー』
と内沼氏は書いている。そしてその困難を減らすために
"次はインフラをつくることにした。小さくとも本屋を始めたい、続けたいと思う人たちが集い、それぞれに心地よい距離を取りながら、相乗効果を出し、業界大手や業海外も巻き込みながら、より本屋を始めやすい、続けやすい環境を作るような試みに、一歩踏み出そうと思っている。"
『IN/SECTS vol.13 特集 NEW ‘BOOK SHOP’ CULTURE ー書店に見る、商いのカタチー』
としている。
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『続日本の小さな本屋さん』を書き終えてコロナ禍に世の中が染まっていく中、次の一手はなんだろうかと考えたことがある。すぐに店が移転することになり、なんだかんだとバタバタしてゆっくり考えるまでに時間がかかったけれども、そのときに考えたのが独立書店を更に盛り上げるために必要なのは流通と情報だということだった。
流通については長年議論されてきた通り出版業界の構造不況のボトルネックであってここに手をつけることは近代出版流通システムを刷新することになる。もう何十年も言われてきたことだけれどそれでも現状に変化がないのはそれだけ難しい事業だからで、やった方が絶対に良いと思う気持ちがありながらも自分の実力も立場も正直いまの段階では役者不足だと思わざるを得なかった(手伝いたい気持ちはめちゃくちゃある)。
それに今までいろいろなことを書いてきて思ったけれどもやっぱり僕にとって書くことは主観的にも客観的にも思ったより重要なことなように思えるので、であれば書くことが役立つのは何かというとそれは情報(の広報宣伝)に当たる気がするのだ。
情報については、先に挙げた内沼さんの原稿にもあるように「本屋を作りたい人にとっての情報」は民主化されてきたように思う。それについては内沼さんの仕事はもちろん、僕も少なからず寄与できたはずだ。
内沼さんは事ここに至って構造に手をつけなければこれ以上は大きく変わらないのではないか、と流通に目を向けたわけだが、僕としてはまだ情報が足りていないと思う。ただその情報は本屋を作りたい人向けのものではなく、本屋に潜在的に行きたい人向けのものだ。
この4,5年で春秋に雑誌で本屋特集が組まれるのは定番になったし本屋の本についてもたくさん出版された。この間で本好きには独立書店の存在は知れ渡ってきたように思う。
だが普段本屋に寄らない層にはどうだろうか。雑誌や本はあまり読まないがなんとなくそういったカルチャーは好きで、でも「本って難しいものでしょ?」とか「本屋なんてどこでも同じでしょ?」とか思っている層である。アーリーアダプターまでは届いたがアーリーマジョリティ、レイトマジョリティには届いていない感触があるのだ。そこにアプローチできないだろうか。
本の世界は元々文脈や積み重ねが重視される、「狭く、深く、長く」といった傾向のある世界で、だから「広く、浅く、短い」(一部の)インターネットが普及している現状ではあまり大衆にアプローチしにくいかもしれないし、実際本を何冊も買ってくれる人は本屋に行く人のごく一部かもしれない。それでも本屋に行く人の母数を増やすことには大きな意味があると思う。
人気になり過ぎて消費されてしまっても意味がないけれども、それでも良い本屋でも知られなければ店に来てくれないわけで、本屋は広報宣伝的なことをもっとやって良いと思うのだ。それでこそ、そのうちの何割かが本をたくさん買ってくれる人になるわけで。
というわけで、本屋検索サイト「LIBRIS」を広めることは今後の僕の大きな仕事の一つになるような気がしている。カフェや喫茶店の世界における「cafe snap」のようなものを目指せばおそらく良いのだと思う。ユーザーにとってのインフラとなるようなサービス。「今日何しようか?」「どこ行こうか?」と考えたときに、とりあえず覗いて見るようなサービスである。
そのためにやることは多々あるし、あくまで中心人物は別にいて僕はLIBRISを広める役割になるし、やりたいことはこれだけではないので、すぐに、というわけにはいかないだろうが、マイペースに広めていければと思う。そしてゆくゆくは登録本屋がゆるやかにいろいろな情報やもしかしたら在庫をもシェアするような場になれればと思う。
というわけで、気になる本屋の皆様はぜひご登録ください(笑)
店舗様向けお問い合わせページ
https://www.info.libris.ne.jp