グンマスター氏と群馬の素敵本屋をめぐる連載「グンマーは秘境じゃない」。ZINEPHONYで締め括った前回から数ヶ月。行き損ねた場所を訪ねることにした。2店目(連載としては8回目)は「麦小舎」だ(2016.5.14の記録)。
- グンマーは秘境じゃない(1) 大人も子供も楽しめるブックフェス「たかさき絵本フェスティバル」
- グンマーは秘境じゃない(2) とにかく落ち着く家のような本屋「ふやふや堂 早政の土間店』
- グンマーは秘境じゃない(3) まだまだ攻める老舗絵本屋「フリッツ・アートセンター」
- グンマーは秘境じゃない(4) 縁が縁を呼ぶ。出店マスターsuiranの旗艦店「book stand レンズ」
- グンマーは秘境じゃない(5) 本好きのための気楽なサードプレイス「珈琲と古本 THE GINGHAM」
- グンマーは秘境じゃない(6) 群馬にもあったzineのお祭り「ZINPHONY」
- グンマーは秘境じゃない(7) 自分を広げる場所「LUOMUの森 百年文庫」
まとめ
時間のない方のためにまとめです。
- 品揃え:山の本と文芸、zineが多い
- 雰囲気:喧騒から離れてゆっくり過ごせる場所。
- 立地:山の中。車で行くべき。
OPEN :木・金・土曜日 10:00 am ~ 4:00 pmラストオーダー
TEL/FAX:050-3668-7042
URL:http://www.mugikoya.com/top.html
Twitter:https://twitter.com/mugikoya
Facebook:https://www.facebook.com/mugikoya/
Instagram:https://www.instagram.com/explore/locations/2835811/
山小屋あらわる!
前回、早めに着いてしまい、ルオムの森の百年文庫に行ったが、そうこうしているうちに時間が12時を回ったのでようやく麦小舎に行ける。ということで、あらためて麦小舎の周辺を説明したい。
麦小舎があるのは本当に軽井沢の山中だ(正確には北軽井沢らしい)。空気の綺麗さに驚いた。車を停めたので「どこにあるの?」と聞くと、奥に山小屋が見える。あそこらしい……凄い。強調でもなんでもなく本当に小屋だ。小さい畑が近くにあり花が咲いている。猫や犬が周囲で寝転び木陰の中にはハンモック。
なんだ、この天国は……!!
大きな期待感とともに店内に入っていった。
森の中でゆっくり読書
ドアを開けると少しの土間があり近くに雑貨やフリーペーパー。奥の部屋がカフェスペースだ。靴を脱いで上がる。
目の前にはソファーセットと目立つような面陳本棚。右手に広めのスペースで真ん中に大きなテーブル。囲むように本棚やピアノ、レジである。写真を見ての通りリビングである。ゆったりしたBGMと美味しいコーヒーを飲みながらソファーでゆっくり読書するには最高の空間なのだ。
ブックカフェの品揃え
自分で本を持ってきても良いが店内の本を読んでも良い。生憎、一部のリトルプレス以外は買うことはできないが(買える本は別棟のキジブックスにある)、紹介していこう。
簡単にするために、場所を分けずに書いていくと食べ物、山の本、文学、猫の本、北軽井沢・軽井沢の本、ジン、雑貨といったジャンルだ。
金井美恵子、吉本ばなな、ソロー『森の生活』、『地元パン手帖』、串田孫一、エンデ、長田弘『ねこに未来はない』、岩波少年文庫、長嶋有、『遠野物語』、『優雅なのかどうかわからない』、『雪の国の白雪姫』、『のんべえ春秋』、『東北おやつ紀行』、『なんともはやポートランド』、『ことばのポトラック』といった品揃え。店主がかなりの本好きなのが伝わってくる。
キジブックス
どこの本なら買えるんですか? と店主に聞いてみるといったん外に出て隣の小屋が古本屋らしい。猫に出迎えられながらその古本屋キジブックスに入ってみた。
品揃えは山の中だけに、山と自然のテーマが多めで、その他に文学、児童書などだ。
『小さな男 静かな声』。絲山秋子、佐野洋子、『柳宗悦選集』、『マザー・グースのうた』、大竹昭子『図鑑少年』、『星の王子さま』、『あやとりの記』、向田邦子、『旅のコラージュ』、『快楽』、『吾輩ハ猫デアル』、『山の詩』、『山の科学』、『風の地図』、カラーブックスといったところ。装丁が素敵過ぎたので児童書を購入した。これくらいの時代の児童書の箱本。大好物だ。
麦小舎でこその本との出会い
さて、ここまで見てきてこんなに素敵な本屋をなぜ開くことにしたのか気になった。山の中に本屋を建ててもそれだけでやっていくことは難しいだろう。それなのになぜやるのか。
店主の藤野麻子さんに聞いてみると、この麦小舎の建物はそもそもご両親が山荘として利用されたいた場所なのだそうだ。藤野さんも小さい頃から休みのたびに通っていて、いずれは住みたいなと思っていた。それで、10年前から麦小舎をはじめたらしい。冬は室内の気温が零下にまで下がるため開店できないが、普段からライター・編集部としての仕事もしているので問題ないとのこと。
はじめから専業でやるつもりはなく、赤字の出ない範囲で楽しくやってきたそうだ。この気負いのなさが10年間も続く秘訣だろう。事実、気合を入れて開店したお店は1,2年でいなくなってしまうことが多いそうだ。
驚いたのがお客様の半分が外からのお客様だということ(もう半分はご近所さん)。ぼくのように噂を聞きつけて訪れる方が多いのだろうか。確かに他にない稀有な空間。一度は訪れてみたいと思うか。
お店をやっていて良かったことを聞くと「年に1,2回でもわざわざ来て下さる方がいるのは嬉しい」とのこと。「ウチに来て欲しいというよりは北軽井沢に来て欲しい。そのための立ち寄る場所として麦小舎を使ってもらえれば」と店長。
北軽井沢は観光でざっと見るだけではよく分からないがじっくりゆっくりいることで気付く良さがあるそうだ。
「都会のざわざわしたブックカフェじゃなくて、ここでこその本との出会いがあったら良いなって。」
ここでこその出会い。確かにありましたよ。