そのとき、ぼくは貴重な昼休みをいかにして使うかについて心を砕いていたのだが、別の意味で砕かれた。神戸にある有名な個性派書店である海文堂書店が今年(2013年)の9月末で閉店してしまうというのだ。
大阪に住んでいたため数回しか行ったことのなかった店だったが、訪れた際には必ず1時間は本棚を見て過ごした。それだけ魅力的な本棚だったのだ。神戸には数えるほどしか行かなかったがそのたびに一度は寄るようにしていたが、まさか閉店とは。寝耳に水とはまさにこのことである。なにせ行くたびに店は賑わっていたしレジも混んでいたのだ。そんな店が閉店するとはどういうことなのだろうか。
探していると社長によるインタビューを見つけた。
「私か、東京で出版事業などを継いでいた兄か、どちらかがいなくなれば書店は閉めようと決めていた。兄が一昨年他界し、すぐにはあきらめきれず2年半掛け持ちでやってきたが、目配りが行き届かず、肉体的にも限界だった」。
(略)
「売り上げ増は期待できず、従業員を養っていくことは困難。時代の流れを痛感した」。かつて同じ元町商店街に6軒あった総合書店も、気付けば海文堂だけに。「書店に限らず、元町や三宮に神戸らしい魅力ある店が減った」
「神戸の海文堂書店 閉店決めた岡田節夫社長に聞く」より
どうやら人材難と売上減が原因らしい。短い文章なので真相のほどは分からないが、この言い方からすると「体力的な限界」の方が大きかったのかもしれない。
何にせよ残念だ。とても。
普段使いのお店ではなかったにせよ近所にあれば通い詰めると感じるような本屋さんがまた一つなくなってしまう。それはつまり地域にとって大型書店かアマゾンなどネット書店でしか新刊書籍にアクセスする場所がなくなるということでもある。「本の森」か「本の海」かしか選択肢がなくなるということでもある。森とまではいかなくても林のような気軽に寄れる手ごろな書店がまた一つなくなるということである。
いち本屋好きとしてこんなに悲しいことはない。
そんなこんなでとりあえずめぼしい情報を以下の通りまとめてみた。誰もが驚きと残念な気持ちでいっぱいのようである。今後の書店業界がどうなるか分からないが、ひとつでも地域のいち機能として本屋さんは残っていって欲しい。それが本屋好きとしての願いである。
(21日のトークの件もあり、これを機にこれからの本屋さんについてそろそろ考えていることをまとめようと思う。時間と気力があればだが。)
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