大阪の知人に教わった古本屋さん。行ったのはもう4ヶ月くらい前になるのか。引越しのゴタゴタで遅くなったが、本屋探訪記第47弾はアートに特化した古本屋「ミルブックス」(2012.8の記録)。
まとめ
まずは時間の無い方のためのまとめを。
- 品揃え:アート系中心に読み物も多い。
- 雰囲気:静かな中で中心に展示物。キレイな気持ちになれるよう。
- 立地:西大橋駅から北に15分ほど。目印が何もなく見つけるのがとても難しい。隠れ家的店舗。
営業時間 : 13:00-20:00
TEL : 06-7653-7952
定休日 : 日 / 祝 / 水
URL:http://www.milbooks.com/shop/frontpage.php
本当にここにあるのか?
知人に教わった場所は西大橋駅から北に15分ほど行ったところだ。iPhoneのマップでも確認したのだが…ない。それらしき建物がない!
せっかくここまで来たのだから寄らずに帰るわけにはいかないと必死になって探していると、さっきから目の前にあるビルの郵便箱が目に入った。
「MIL BOOKS」と書いてある。いや灯台下暗しとはまさにこのこと。残念な自分の探索能力を悔やみつつ3階までの狭い階段を上る。ここだ。
古本屋withギャラリー
階段を上った先には右手に真っ白なドアがあってそこがお目当てのミルブックスなのだが、左手には10畳ほどの何もない空間が広がっている。店主のお兄さんに聞いてみると、どうやらギャラリースペースらしい。そこのお客さんがミルブックスに来ることもあるそうだ。
Calo bookstore & cafeのときもそうだったがここも建物自体がアート志向らしい。一階はバーだが関係あるようだし二階も似たようなものである。
アクセスはかなり悪いが建物のコンセプトがしっかりしているのは好印象だ。
店の中 レイアウト
さて、店内に入ろう。
中は正方形に近い四角形である。右辺に高めのレジカウンターで前面は本棚になっている。ドアがある辺にCDやら面陳コーナーと少々の本。左辺が一面本棚で、奥の辺は窓とベランダ。窓の前には大きい机がある。店内中央はガラスの什器。
BGMは忘れてしまった。確か無音だったように思うのだが、どうだったろうか。
ドアがある辺
左周りに店内を見て回ることにする。人間は無意識に左の道を選ぶというが本当だろうか。そんなことはどうでもいいか。
ドアがある辺は、胸より上の面陳コーナーと下の本棚に分かれる。
ジャンルは特に分けられていない。おそらく店内で一番取っ付きやすい本が置かれていると思う。基本は文庫と新書とマンガとCDだ。
文庫は、岩波文庫、ちくま文庫。空白の叫び、都市という廃墟、夏目漱石、澁澤龍彦、立花隆など。新書は、森博嗣、『悲しき南回帰線』など。
マンガは『忍者武芸帳』文庫セット、『ドラゴンヘッド』のセット、『ピンポン』のセットなどセットもの。
CDは、ニルヴァーナ、スティーヴライヒ、ステレオラブなど洋楽が多い。
他にも面陳コーナーにはDVDもあり、「コフィー」、「アナニアシヴィリと世界のスターたち」。さらに洋書も飾られていた。
左辺の本棚
左辺は、手前半分が単行本のみの構成で。奥半分は単行本と大判本が半々くらいである。
手前半分には思想、民俗学、歴史、科学、文学、本の本、映画が多い。冊数が多いので以下、箇条書きにする。
思想:ウィトゲンシュタインや『チョムスキー小事典』、柄谷行人、『ゲバラ 革命の回想』、『フロイトとユング』、『自由からの逃走』
科学:『ジェンダーと科学』、『続科学の終焉』、『脳とクオリア』、『コンピュータワンダーランド』、『虫の惑星』
民俗学:『世界不思議百科』、『妖怪草紙』、『鯨と捕鯨の文化史』、『日本民話の神学』
歴史:中国の歴史書、『アジアの中の日本史』、『京の茶室』
文学:『薔薇の名前』、『リヴァイアサン』、『ボルヘス 文学を語る』、『現代SFのレトリック』、宮武外骨3冊
本の本:『デジタルマクルーハン』、『メディア論』、『メディアセックス』、『フライング・ブックス』、『ブックガイド89』、『本棚が見たい!3』
映画:蓮實重彦、『欲望する映像』、植草甚一、『ウディアレンの時代』、『森達也の夜の映画学校』
奥半分はアート系の棚となっている(だから、大判本が多い)。
具体的には、別冊太陽が20冊くらい、『世界のダンス』、『ドイツ人とドイツ美術』、『ウィリアムモリス伝』、『美術手帖』50冊ほど、『美術館革命』、横尾忠則、『生体廃墟論』など伊藤俊治、『ペーター佐藤作品集』、『写真家になる!』、アラーキー、『写真とフィクション』、『メタボリズム』、『魅せられし空間』、『都市ビジョンの科学』、『プロダクトストラテジー』、『デザインの色彩計画』、『佐藤雅彦全仕事』、『アートディレクター入門』、『和田誠 装丁集』、などで洋書も多数ある。
窓の前の机とレジカウンターの本棚
店舗奥の辺には窓とベランダがある。ワンルームマンションにあるような普通の窓だ。当然、外に出れるし覗いてみると伝授のものと思わしき自転車が立てかけてあった。
レジカウンターは前面が本棚となっていて、これは嬉しい。中にあるはデザイン系の雑誌だ。
手前から、『建築と都市』、『カースタイリング』、『室内』、『IBMデザイン』、『GA』、『アイデア別冊』、『axis』、『デザインの現場』、『リラックス』、『スタジオボイス』、『デザインノート』、『ニュートラル』、『ブルータス』、『カーサブルータス』、『スタジオボイス』などなど。他にも大判本が並べられている。
真ん中のガラス棚
さて、店内で一番目立っているのが中央のガラス棚である。
真っ平らのガラスの上には、新刊古本織り交ぜて写真集がセレクトされている。
壁棚側には大森克己の新刊本『サナヨラ』、『stars and stripes』、『梶井照陰写真集 NAMI』、『ソヴィエト興業写真集』、『ロシアアヴァンギャルドの陶芸』などで、レジ側は『極東ホテル』、『遠い水平線』、『建築 宿命反転の場』である。
レジ側は新刊のみなので全てビニール掛けされている。
三段構成の下二段は以上のように本が置かれているのだが、最上段はギャラリーのように置物が置かれている。誰の作品か分からないが人の顔をキャラクター化して小さくしたようなものだ。これがあるおかけで店内の雰囲気がよりアーティスティックになっている気がする。何より棚がガラスであるだけでなんとなく高級な感じがするというのは良い。効果的な什器の使い方である。
立地の悪さは弱点ではないかも
以上で店内の紹介は終わりだ。どうだろうか?
僕にとってそのアクセスの悪さのせいか、大阪で何店も回っている中でミルブックスはよく覚えている店だ。
立地は、店を作る上で最も重要なファクターだが、それが逆に良い方に作用することもあるのだと感心した。
店員のお兄さんに聞いてみると、売上はほぼネットからだそうだ。インターネットがあれば立地の悪さをカバーできるということなのだ。
階段の先のミニ書斎
また、テーマ性のあるビルというのも良いし、狭い階段の先にまるで個人の書斎のような空間が広がっているのも良かった。
苦労して来た甲斐がある店なのである。そういう意味では神戸の~に似ているかもしれない。
そんなことを思いながら、店を後にする。もちろんメモの最中に見つけた『和田誠 装幀集』はちゃっかり買っている。カバーとしてオノヨーコのポスターを付けてくれたのがほっこりした。