落合博さんと出会ったのはいつのことだったろうか。Readin’ Writin’が開業する前だから2017年かそれより前のはずだ。たしか出版業界の秘密結社どむかだったかな。そういえば「本屋、はじめます。」の名刺を見て「ホントかなあ」とそのときは失礼ながら訝しんだことを思い出した。
それがあれよあれよといつの間にかあんなに素敵な物件を見つけ、開業し、人気の店になるとは。時間が経つのは早いものだというか人生何が起こるか分からないというか。
落合さんについては飄々とした押し出しの強い人、というイメージがある。ひるねこBOOKSで本屋に話を聞くみたいなイベントに登壇された時「この中で一番年上だけど一番体力はある」と言ったのを聴いたことがあって驚いたものだ。そんな感じで店の中でもお客さん相手でも笑顔で言うべきことは言う。そんな感じの人だと僕は思っている。
さて、本書の話だ。ここまで書いてきたように著者については事前情報を多く知っていて(取材したこともある)、だからこそどんな本なのか。知っていることばかりだったらどうしよう? と少し不安になりながら読み始めたのだが、その不安は杞憂に終わったのだった。
まず文章がおもしろい。記者出身だから当たり前かもしれないが本屋の店主が書いた本でこういう硬めのノンフィクションのような文体は初めて見た気がする。自虐でも自嘲でも自慢でもなく事実をベースに淡々と、でも、主張もちゃんとする感じ。
BOOKSHOP LOVER のサイトを参考にしてくれたのは知っていたが、記者時代のことや開店前のあれこれ、イベントの話、事業計画の話は知らないことも多く、なにより文章の読みやすさも相まって自分で話を聞くのとはまた違った受け取り方ができて、読んで良かったなあと素直に思ったのだった。
最後に本書の48pにスポーツの論説委員になったときの挨拶の言葉で「嫌いな言葉は夢と勇気と感動です」と言ったと書かれていた。スポーツの世界にいながらこの言葉を言えるというのが、さすがだなあというか本屋の世界におけるReadin’ Writin’の立ち位置を示しているような気がするのだけどどうなんだろう。今度取材するから聞いてみよう。