まず竹書房から出ていることに驚いた。2019年までは創元SF文庫から出ていた「年刊日本SF傑作選」がまさかの、割と軽めの本が多いイメージのあった竹書房から出たというところに驚いた。
でも考えてみれば話題になった『シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選』が出ているのも竹書房なのでSF好きな編集者の方が入ったということだろうか。水上志郎さん。チェックしよう。
http://blog.livedoor.jp/yosoys/archives/54925050.html(こんな投稿も見つけた)
さて内容はというと毎度お馴染みの大森望さんが選んだ「1年間のベスト短編10本前後」ということで、11本の短編(うち3本は中編じゃないかな)が掲載されている。
好きだったのをあげると
『平林君と魚の裔』
どこかで読んだかと思ったら『宙を数える』だったのか。キャラクターが面白いのと世界観の提示の仕方、絶望の中で希望を持たせる終わり方が好み。
『地獄を縫い取る』
復讐ものは結構好きで、それは自分の中の暴力性を意識できるからだけれど、登場人物の飄々としながら執拗なまでの復讐心を成就させるそのやり方が素晴らしく。さらに主観をいくつか変えながら示していく構成も良かった。「いいぞ、もっとやれ」と読後に思うのはこれも正義の顔をした暴力性の表れか。
『色のない緑』
難しい言葉がたくさん出でくるのはSFの常なのでそれは分かったふりをして読み飛ばすとして最後がなんか良かった。AIは最終的に妖精みたいな存在になるのかもしれない。なんてことを連想した。
『鎭子』
別の作品『海の指』と関連があるようなそんな作品のようで、相変わらずの飛浩隆さんっぷりで性格が悪くてよろしい。でも読後感が良かったのは珍しいかも。