店の運営と寄稿でまったくサイトが更新できていない怠慢大王わきですこんにちは。自分で書くのは現状難しいのですが連載ならどうだ? と思い、BOOKSHOP TRAVELLERで間借りをしてくださっている屋号「BOOKS TBD」の山本さんにお願いをしました。
というのも、なんと、2020年早々には実店舗をオープンするというのです!
この連載 「ビルトングがくずれても」は、そんな山本さんがお店を開けるまで(もしかしたらその後少しの間)を綴ることになる予定です。
一回目は自己紹介と本屋開業の経緯のようです。
それでは、どうぞ~!!
***
こんにちは、間借り店主BOOKS TBDの山本です。
現在、地元の横浜で本屋をオープンしようと準備中です。BOOKS TBDのTBDは、“To Be Determined:未定、後ほど決定”という意味で、屋号が決まらなかったのでそのうち決めます、ということでつけた名前だったのですが、とうとうTBDが取れて、屋号を決めなおします。
開店までの顛末を是非連載しましょう! と和氣さんにお声掛け頂きました。よい機会なので、数回に分けて書き綴ろうと思っています。これから本屋を始めようかな、と考えている人に、少しでも参考になれば幸いです。
初回は自己紹介と、きっかけについてあたりをつらつらと。
改めまして、山本貴史、47歳(既婚)です。前職はメーカーの技術者で、家電製品の設計をしていました。
大学も工学部で、バリバリの理系ですね。家電量販店の売り場に並ぶような商品をいくつも手掛けました。デザイナーのワガママに振り回され、海外の製造拠点に品質追い込みで何週間も出張し、50銭、1円のコストダウンに知恵を絞り、市場不良に頭を悩ませる日々を送ってきました。
そんな日々を20年続けましたが、本屋をやるぞ、と昨年の3月末日付で退職し、この1年半、少しづつ準備を進めてきた次第です。
なんで本屋なのか?
この質問に一言で答えるのは難しいですね。人に聞かれる度違うことを言っていたのですが、今回少し整理してみました。まず、
- 20年くらいで一区切りにして、新しい挑戦を設定しよう
- 好きなことを仕事にして、自分のペースで働く
- 自分の力でどこまでできるものか試す
といった思いがベースにあって、そこに本屋開業が(結果的に)一番うまく当てはまると考えたから、ということになるでしょうか。本屋が最初に選択肢に上がったきっかけは亡くなった父の蔵書を整理したときでした。
2012年頃でしょうか。その数年前に他界した父が物置に残していた蔵書の片付けをした際に、古い週刊誌・新聞・書籍の類を処分しました。父は比較的本を読む人間で、英・仏系の小説や思想書および英語・仏語の原書から、日本の小説まで、比較的堅めの本が多く残されていました。これをそのまま全部捨てるのは勿体ないな、これをもとに古本屋とかできないのかな、と思ったことがスタートです(そうはいっても、煙草で真っ黄色になった文庫の類の大半は捨てましたけど)。
私も理系ではありますが、幼少から割と本好きな子供でした。
小学生のころはシートン動物記が大好きで、図書館の全集を端から順に何度も読んだのを覚えています。一方ファーブル昆虫記は面白くなくて1巻で投げ出しましたが……。
中学・高校はSFをたくさん読んでいました。JP・ホーガンの「星を継ぐもの」で衝撃をうけ、サイバーパンクを知り、PKディックの手に入るものを片端から読んで。日本の作家ではパっと名前が思い出せるところで、眉村卓、星新一、栗本薫でしょうか。筒井康隆は当時ちょっと肌が合わず。栗本薫からラヴクラフトに、サイバーパンクからハードボイルドやSF古典ものへ、更には海外の現代文学へと広がっていきました。大体そんなかんじでしょうか。
大学~社会人になってからは、専門書やビジネス書も手に取らないといけなくなり、いきおい小説の類の読書量は減ってしまいました。本好きの人からすると微々たる読書量ではありますが、海外文学が好きなのは変わらず、細々と読み続けていました。
さて、勿体ないから古本屋でも、といっても、当時は出版業界も書籍販売の業界状況も、ましては古書業界のことも全く知りません(今でもそれほど知識があるとは言えませんが・・・)
もちろん、いきなり本屋で行こう!と決めたわけでもなく、最初のうちは新聞やネットの記事をチェックして、どんなもんかな~と様子見をしていたのが4~5年くらい。
40歳過ぎたあたりで、改めて自分の今後のキャリアパスを真面目に考え出しました。エンジニアとしての次の進路と可能性は何だろう?と思い悩む一方で、内沼晋太郎さんの「本の逆襲」、小田光雄さんの「出版状況クロニクル」、澄田善広さんの「古本屋になろう」などを手に取りながら、”本屋をやること”イメージを固めていきました。
最終的に、
- ★次の20年は、得意なこと(エンジニア)より好きなことをやる
- 古本屋ベースなら飲食と比較して初期投資が軽い(ので借金しないで始められる)
- 大儲けはできなくても、きちんと立ち上げれば長く続けられそう(エンジニアは長くても60歳まで。本屋なら元気なら70過ぎても続けられる?)
あたりを根拠に、妻を説得しつつ(←ここ重要)、古本屋でいこう、と腹をくくったのが5年前くらいでしょうか。
ちなみにその他の選択肢は、部品メーカーの技術顧問に滑り込む、外資系に転職して短期間で稼ぎ倒してやめる、フリーの設計者として仕事を取って稼ぐ、たこ焼きバーか手料理居酒屋を始める、などなど(改めて書いてみて、その他のほうが稼げそうな気が)。
個人的な印象としても、ここ10年くらい街の新刊書店の減少が顕著になることと、都心および地方の個性的な本屋がメディア露出の増加がパラレルに起きて、さらに出版業界の構造不況やらAmazon進出やらと本をめぐる環境の大きな変化が加わり、新参者にもちょっとチャンスがありそうな気配が漂ったのも後押しになりました。
決めたからには、より具体的なアクションを取ろう、ということで、仕事旅行(URL: https://www.shigoto-ryokou.com/)に当時募集があった「鎌倉で古本屋の一日店主になる」という企画に申し込みをして、ブックスモブロ(残念なことに今年閉店してしまったのですが……)の荘田さんのところにお話を伺いにいきました。
(続く)