BOOK LOVER’S DAYはなぜ成功したか

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本屋探訪記で紹介した渋谷の「森の図書室」。クラウドファンディングのパトロン数日本一を樹立した話題の施設が、そこがあたらしい企画を発表した。それが「BOOK LOVER’S DAY」である。
「渋谷に、本と人がつながる場所を」と活動する森さんが企画したこのBOOK LOVER’S DAY。すでに成功してからしばらくが経つので詳細は以下のサイトに譲るが、なぜこの企画を始めたのか。もうすこし詳しく聞いてみた。

ぼくはこのBOOK LOVER’S DAYという名前が気になっていた。だって、英語にしてはいるけど「本の日」である。正直、あまりカッコよくはない。本好きを増やそうとして出版社やナショナルチェーンの大書店が今まで手を変え品を変えやってきたことと変わらないように見えたのだ。
ところが、である。結果を見れば大成功である。なぜなのか。

本好きが企画すること

結論から言えば主体が「本好き」だからだと思う。組織の一員ではなく一介の本好きが已むに已まれずつくった森の図書室という空間。これが共感を呼び話題になっている。その「ただの本好き」が「もっと本を読もうよ」と仕掛けてきたのである。しかも、著名作家(これもつまりは本好きである)といっしょに本の本をつくろうというのだ。そりゃ支援するというものである。

成功の鍵はストーリー性

広告の世界ではストーリーテリング(=物語性)という言葉がもてはやされているようだ。よく分からないが「何かを勧めるときにストーリー性があったほうが消費者の心に刺さる」というものらしい。まあきっと何でその商品を売りたいのかの理由を「儲けたいから」以外にすると良いよねってことだと思うのだけれども(たぶんこんな簡単じゃないと思います)、試しにその観点で分析してみることにする。
「出版社やナショナルチェーンの大書店が本好きの日を打ち出してキャンペーンする」と聞いたときどう思うだろうか。ぼくなら「また何かやっているなあ」くらいにしか思わない。と言うのも出版社やナショナルチェーンの大書店が本を売りたいのは当たり前でありそこにストーリーが入り込む余地が少なく思うのだ。良くも悪くも営業活動にしか思えず興味が持てない。

ところが、立上げ当初から「本好きが渋谷にブックカフェをつくる」ということで話題になっている森の図書室が本好きの日をつくるとなれば付帯する意味が違ってくる。それは読者と同じ「本好きが本好きを増やすための活動」というように見えるのだ。
そんなものだから、元々、本好きであろう出版社やナショナルチェーンの大書店、作家の方々による協力が得られるのだろうし、読者からの共感も得られる。

彼が本を売ろうとしていないのも良い。森の図書室のコンセプトが明確になるのだ。では、そのコンセプトとは何か。店主が言うには『もっと、本を手に取るきっかけをつくりたい』だという。

拡散する森の図書室

どこかで聞いたことのあるような内容だと思ったら、それもそのはず。BOOK LOVER’S DAYのサイトに書いてあったのである。この企画のコンセプトも『もっと、本を手に取るきっかけをつくりたい』。

そして、店主によるとこのBOOK LOVER’S DAYは森の図書室のコンセプト『もっと、本を手に取るきっかけをつくりたい』を拡散するための仕掛けでもあるようだ。そのために森の図書室という名前を企画名には付けずに普遍的な(ある意味誰もが考え付くような)名前にした。
スゴイと思うのがここである。先にも書いたようにぼくはBOOK LOVER’S DAYという名前をダサいと思っていたのだが、これを聞いたとき目から鱗が落ちたのだった。

つまり、彼は『もっと、本を手に取るきっかけをつくりたい』という想いを実現するためなら森の図書室の名前がなくても良いと考えているのである。重要なのはBOOK LOVER’S DAYという企画を成功させることなのだ。だから、企画名はあえて普遍的な名前にした。重要なコンセプト以外はオープンにやっていくこと。これが分かっているけれど難しい。店主の企画者としての実力である。
(ホント、ダサいとか思ってすいませんでした! 穴があったら入りたい!!)

BOOK LOVER’S DAYのサイトを見るとそのことが良く分かる。

”森の図書室” は、お酒を飲んだりおしゃべりをしながら、
本を読めたり、借りることができる場所で、
「本って読んだ方がいいんだろうな。でも読んでないんだよな、、」
「本を読みたいんだけど、何を読んだらいいかわからないんだよね、、」
そんな方々に、押しつけることなく本を手に取ってもらうきっかけをつくりたい。
そんな想いで運営しています。

BOOK LOVER’S DAY は、僕だけでなく、
みんなで一緒につくっていくイベントにしたいな、と思っています。

もしよかったら、こんなことをしてみて頂けないでしょうか。

・本を一冊読んでみてください。
・本の感想を友だちに話したり、つぶやいたりしてみてください
(#BLD2014)
・お子さんといっしょに本を読んでみてください。
・よかったら、クラウドファンディングに参加してみてください。
※クラウドファンディングでご支援いただいたお金は、
・作家様への原稿料
・本の作成費用
・BOOK LOVER’S DAY の運営費に充てさせていただきます。

たくさんの人が、いつもよりちょっと本を身近に感じる1日になったらいいな、と思っています。

『読んだら、もっと本が読みたくなる本』を、作家さんとみなさまと一緒につくりたい!より

小さい本屋で、できないかなあ

さて、BOOK LOVER’S DAYが成功した要因をストーリー性という観点から分析してみたが、実はこの考え方。ほかの小さいながらも独自の活動をする小さい本屋にこそ流用できないかなあと思う。

分かりやすくするためにBOOK LOVER’S DAYの成功要因を簡略化してみた。

<失敗しそう>
出版社・ナショナルチェーンの大書店

本好きの日(BOOK LOVER’S DAY)

読者=いつもと変わらない。不思議な点がない。興味を沸かせるポイントがない。

<成功した>
森の図書室=本好き⇒本好きの日(BOOK LOVER’S DAY)←読者=共感。支援したい。協力したい。
出版社・ナショナルチェーンの大書店の構造が上下であるのに対して、森の図書室の構造がフラットであることが大事。

この「森の図書室」の部分に個人経営の小書店なら入ることができると思うのだ。なぜなら、出版社やナショナルチェーンの大書店ではどうしても大組織であり一個人である読者と比較するとどうしても均一的で遠いところ、お上から提案されているような印象を持ってしまうのに比べ、地域に密着した本屋であれば、お客さんである読者と顔の見える関係である小さい本屋であれば、読者から共感を呼ぶことができるだろうと思うのだ。森の図書室のように大ヒットはしないかもしれないが、少ないながらもしっかりとファンの心をつかむことができるように思う。

サイトのデザインであったりパブリッシングの仕方であったり、と細かい部分で他にも見習うべき点はたくさんあるだろうけども、「本好きとして盛り上がるためのイベント」とするためにこの方法論は参考にできると思うのでどこかやってくれないかなあ、と思うのである。というか自分で仕掛けられないかな。むむむむ。

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