その日はある企画の打合せをしに知人と会っていたのだが近いから寄ろうということになった。食の本専門店ということでこの手の本が最近気になりだした僕にとっては素晴らしいタイミングで行くことになったのだった。本屋探訪記第60弾は渋谷にある食の本専門店「COOK COOP(クックコープ)」だ。
宮益坂を登る
クックコープは駅からしばらく歩く。ハチ公口などという若者ばかりがいる場所には背を向け、渋谷にしては静かな方向の宮益坂口から宮益坂を登りきる。登りきったところを左に折れると今度は下り坂だ。なんのために登ったのかが全く分からなくなるがこれが一番分かりやすい行き方なのだから仕方ない。とにかくそうやって坂を登り下りした先にあるのが今回の目的地「COOK COOP(クックコープ)」だ(2013.10.10時点で永田町に移転しいます)。
約3坪の狭小本屋
以前紹介した「本は人生のおやつです!」(現在は堂島のもっと広い店舗に移動)も狭かったがここもなかなか狭い。
5人もお客が入ればいっぱいになるほどだ。だいたい3畳くらいだろうか。それでも狭苦しさを感じないのは入口に面している壁がすべてガラスだからだろう。まだ夜にしか行ったことがないが、昼に行けばきっと気持ち良いはずだ。
コーヒーの香りとリラックスミュージック
深緑色の無骨なドアを開けて店舗に入るとまずコーヒーのかぐわしい香りに心奪われる。本以外にコーヒーも売っているのだろうか。こんな狭い店内で? しかし、狭いとはいえBGMもリラックスできるのんびりした良い選曲だしここでならコーヒーを飲みながらじっくり本を選びたい気持ちにもなる。
レイアウト
さてさて、前置きはこれくらいにして店舗の説明をしよう。
コーヒーの香りを忘れて当たりを見回すとまず気付くのが中央に置かれた長テーブルである。ここならもちろん店主のオススメ本コーナーだろう。ほぼ面陳のみの展開だ。
半円形をした店内のちょうど円の部分が外に面する壁でありだからガラスでもあるのだけれど、その辺には頭くらいまでの高さの本棚がぎっしりだ。逆に直線の方はというと手前にマンガ棚や雑誌の飾り棚、トートバッグなどがあって奥がレジカウンター。直線の方はほぼレジカウンターで占められているのだ。
それでは右回りに店内を見て行こう。
入口の辺 面陳コーナーとライフスタイル
入口に面した、だから入ってすぐ右手には腰くらいまでの高さの横に長い本棚がある。
そこは面陳が多用された魅力的な展示となっていて、『パンケーキノート』や『男子スイーツ塾』、『LOVE INDIA』、『あんこの本』などが飾られている。この棚だが実は二段になっていて、しゃがまないと見えないような高さにライフスタイルのジコーナーがあった。狭いからこその工夫だろう。
柱の文庫コーナー
柱に突き当たるとそこは文庫コーナーだ。天井まで届くほどの位置まで本棚が設えられており、文庫は『カレーライフ』、『東京酒場漂流記』、『もの食う本』、『ホノカアボーイ』、『魯山人味道』、『女たちよ!』、『檀流クッキング』など手軽に読める食の読み物が並べられている。ここは僕の好きなコーナーだ。2冊買ったうちの両方ともこの文庫コーナーから購入した。
ただし、上の方には美味求真などのハードカバーもあり食の読み物本も奥が深いことが伺いしれる。
ガラス壁の本棚
文庫コーナーが終わると店の奥までガラス壁沿いの本棚が続く。ここは1列1段ごとにジャンルが分かれている。もちろん全て食に関するジャンルだ。全部で16のジャンル。以下に①ジャンル1冊で紹介する。順番は入口側から上から順に下まで見たら次の列にという具合だ。
- ESSAY & NOVELS(エッセイと小説):『長尾智子の料理』1,2,3
- PROFESSION(食の職):『スイーツショップ&コーヒーショップのデザイン』
- DIETARY EDUCATION(食育):『自然図鑑』
- CHILD(子ども):『ぱん だいすき』など絵本
- SAKE(酒):『東京スナック飲みある記』
- TRADITION(伝統):『美味しいおかゆ』
- JAPANESE(家庭料理):『英語でつくる和食』
- NATURE(自然):『虫を食べる文化誌』
- FRENCH(フランス):『ジョエル・ロブションのお家で作るフランス料理』
- BREAD AND CHEESE(パンとチーズ):『サンドイッチの発想と組み立て』
- ETHNIC(エスニック):『インド・カレー紀行』
- WORLD(世界):『旅する料理教室』
- ITALIAN(イタリア):『私の愛するイタリア料理』
- BEGETABLE(野菜):『ベジダイアリー』
- HEALTH(健康):『アーユルヴェーダ治療院のデトックスレシピ』
- SWEETS(スウィーツ):『自家製グラノーラと朝の焼き菓子』
もちろんこれ以外にも各ジャンルごとに何冊も揃っている。どうだろう。狭い店内とは思えない取り揃えではないか。
店内一番奥の壁棚
ガラス壁が終わり、店内の一番奥の壁に突き当たる。するとそこは天井まで届く壁棚だ。上部は全てFORIGN BOOKS(洋書)として高そうなカッコイイ本が並んでいる。一冊だけ何故か日本語が見えたので驚いたけれどこの本は読んでみたい。「なにを作ろうかな&どうやって作るの」
さらに、洋書の下にはCOFFEE&TEAのコーナーだ。『コーヒー「こつ」の科学』などで、さらに、膝くらいの高さにも本棚がありWINE&CHAMPAGNE(ワイン&シャンパン)コーナーがあり、『対談 美酒について』などが置かれている。
しかし、この奥の本棚で面白いのは実は本ではない。食品やマグカップコーヒー豆が売られているのだ。さすが食の本専門店である。いやむしろ食の専門店と言った方が良いのかもしれない。
真ん中の長テーブル
では、入口までいったん戻って真ん中の長テーブルを見よう。テーブルは正面と右辺左辺の3面で構成されている。もちろん面陳が基本だ。
正面は「甘辛特集」とでも言えば良いだろうか。『チョコレート・バイブル』の隣に『辛いがうまい』があり、さらにその隣に『あったかスイーツ』があったりする。この高低差には驚く。思いついてもやらないアイデアだ。
右はスイーツにエスニックがプラスされた様な本だ。『アジアごはん』に『薬膳レシピ』、『スイーツ断面図鑑』など。
左は、急に酒のコーナーになる。『レシピ 家で呑む』や『ぜんぜん酔ってません』、『酒とつまみの科学』など。なんだろうか。ここの店主は酒は好きなのだろうか。仲良くなれそうである(笑)
入り口周辺のアレやコレ
さて、ようやく入り口周辺の紹介ができる。はじめに右回りに紹介しようと言ったことを何度後悔したことか。入り口周辺がまた面白いのである。
まず、入ってすぐ左手に黒板がある。COOKCOOPの自己紹介だ。そして、雑誌の飾り棚。雑誌『BRUTUS』のラーメン、そば、うどん特集や『dancyu』、『クーネル』、『暮しの手帖』、『天然生活』、さらになぜか届かないような高さに『冷蔵庫』という大判書もある。気になる。
さらに、視線を上から前に戻すと、トートバッグが売られ、その陰にマンガと『murmur(ムームー)』が入った本棚だ。『きのう何食べた?』や『花のズボラ飯』、『深夜食堂』にもちろん『孤独のグルメ』がある。その隣にはなんと冷蔵庫があり、「あまなつしぼり」や「みかんしぼり」、「ワンダーアップル」といったゴージャス気分が味わえるジュースが冷やされているのだ。
良く見ると、新刊洋書が注文できる紙があるあたり「専門店」の心意気が感じられる。このサービスは素晴らしい!
最後に、文庫コーナーから井上篤弘『それからはスープのことばかり考えて暮らした』を購入。レジ前の『ミーツリージョナル』などの雑誌を横目に帰った。
狭いからこそ行き届いた食の本専門店。それがCOOK COOPだ!
どうだったろうか。狭いながらもしっかりジャンル分けされた本棚。食に関するものなら料理書はもちろん読み物・小説まで揃え、ときには洋書の注文まで受け付ける。美味しそうな本を読んでお小腹が減ったら、売っているかりんとうを買えばいいしジュースやコーヒー(試飲できるのだ!)だって飲める。立地は良くないが小さいながらも面白い本屋をしてみたい人は一度行ってみたらいい。狭いからと言って侮るなかれ。ここはかなり尖がっているぞ。