もう行ったのは5か月ほど前になるだろうか。そりゃそうだ。大阪にいたときに行ったお店である。そんな訳で本屋探訪記第49弾は、大阪天神橋筋商店街の古書店「ハナ書房」だ。
まとめ
まず、時間のない方のために短くまとめを。
- 品揃え:今昔和洋問わず幅広い品ぞろえ。相談スペースもあり。
- 雰囲気:雑居ビルの古書店。真ん中のソファがなんとなく事務所っぽい雰囲気を出している。
- 立地:天牛書店の近く。商店街の中だが、奥まったビルの二階のため非常に分かりにくい。
電話:06-6353-1487
「二匹のゾウ」との出会い
そもそもの始まりは「二匹のゾウ」の店主と話したことにある。過去ログを見ていると去年の梅雨まっただ中のことだ。面白そうな本屋を探して中崎町を探索していたら見つけたのが「二匹のゾウ」だ。
ここもなかなか面白い古本屋なのだが、、店主と話すことができて『そのうち本屋をやりたい』とかなんとか言っていたら教えてくれたのが「ハナ書房」なのである。古本屋としては理想的なお店らしいのだ。これは行かざるを得ないだろうということで楽しみに行ったのだ。
本屋探訪記vol.24:大阪中崎町にある不思議なコンセプト古書店「二匹のゾウ」
見つけにくいぞ、こんちくしょう!
「二匹のゾウ」店主に教えられた通りに天神橋筋商店街をてくてく南に歩いていく。天牛書店を通り過ぎてすぐあると聞いたのだが、ない。どこにもない! 二階にある店舗だということで、注意深く探したのだがない! そこでiPhoneで検索してヒットしたサイトを参考にしたら何とか見つかった。二階とは言ってもビルの奥に階段があったのである。しかも、看板がない! これは知っている人しか見つけられないだろう。逆を言えば、立地が悪くて潰れていないと言うことは、それだけ一部では有名なお店だとも言えるのだろう。
レイアウト
前置きが長くなってしまった。階段を上がって中に入ろう。
中は、奥に広い長方形で10畳くらいだろうか。壁はもちろん全て本棚で、入口すぐ右横には本棚で作った柱がある。入口に面した辺はガラスケースになっており、傍には雑誌ラックだ。ガラスケースは入り口の正面すぐにもあり、貴重書が置かれていた。この店で面白いのが実は店舗中央である。ソファと机が置かれているのだ。おそらく商談席だろう。古くて価値のある(利幅の高い)商品を常連客や趣味人に売っているのだろう。僕がいたときもお客さんと江戸時代の辞典を見せていた。
他の古書店に漏れずBGMはなしだ。クラシックな古本屋は多いのだが、「静かに本の世界に浸れ」ということだろうか
柱状に並べた本棚4つ
先に挙げた本棚で作った柱をまず見ていこう。
手前から左回りに著者名や書名を挙げていくと、カンディンスキー、バウハウス。
左辺は『松永真デザインの世界』、『原弘と僕達の新活版術』、モダン都市文学シリーズ、『モダニズムの時代』、『雑誌 大大阪』、『近代大阪 復刻版』、ほか図録
奥の辺は『和田誠 装丁の本』、『菊地信義 装丁の本』、『アートオブブック』、『絵本の100年展』。
右辺は『ロシアアヴァンギャルド』、バウハウス、クレー、『躍動する魂のきらめき』、美術雑誌『アトリエ』など、とにかく古い雑誌(右から左に読むような本だ)。
入り口前のガラスケースと店舗左辺の壁棚
柱棚に目を奪われてしまったが、実は入口すぐ前には、180cmはあるガラスケースがある。あるのは『牛飼ふ小学校』、『東海道漫画紀行』などだ。
ガラスケースの奥は、そこから一直線に店舗突き当りまで壁棚である。手前から本の本、海外見聞、日本美術、シュールレアリズムというジャンル構成になっている。それぞれ書名や著者名を挙げていくことにする。
- 本の本:『古本屋の手帖』、『ボン書店の幻』、『書物漫遊記』、『編集者 国木田独歩の時代』、『愛書65年』、中村稔など詩の本も少々。
- 海外見聞:『絵地図の世界像』、『言語都市パリ』、『映画の中の上海』、『イーハトーヴと満州国』、『近畿景観』など。
- 日本美術:『民藝のこころ』、『木の造形』、『若冲ワンダーランド』、図録『八木一夫展』、『絵本 明治風物詩』、『別冊太陽 柳宗悦の世界』、『ウィリアムモリスのテキスタイル』などモリス関連本、『現代ユウモア全集』。
- シュールレアリズムと近代美術:「セリ・シュルレアリスム」シリーズ、美術雑誌『アルト』、『ナチス通りの出版社』、図録『北原照久アートコレクション展』、『ダダ大全』、雑誌『夜想』、雑誌『幻想文学』、『サーカスがやってきた』。
- アート:『ことばはことばの展覧会だ』、『ムンクの版画』、アンリ・ルソー『楽園の謎』、『セザンヌの構図』、『絵画で読む聖書』。
入って右手の壁棚
さて、店舗左辺を見終えたので、中央の作業机を通りこして、店舗右辺を見ていこう。
店舗右辺は特にジャンル分けをしているようには見えない。もしかしたらされているのかもしれないが、勉強不足で僕には分からなかった。なので、いきなり具体的な署名について挙げることにする。奥から店舗入り口の辺に向かう順番だ。
奥から鹿島出版会のSDシリーズ、『写真に帰れ』、『幻影の日本』、『おしゃれの文化史』、『博物館建築』、『わが版画師たち』、『東京画』、『メヒコ・マヒコ』、『夢は大海原を超えて』、『画集・画文集全情報』、『劉生の死』、『画家の眼』、『ルノワルの追憶』、『マチス』、『傍書月刊』、ほか展覧会の図録がいっぱい。
目についた書名を挙げてみた。
天神橋筋のアート本と言えばハナ書房だ
これまで見て来て分かるようにハナ書房はアート関連の本が圧倒的に多い。専門書店と言っても良いくらいだ。しかも、古書店という名にふさわしい様な江戸時代くらいの古い本も置かれている。展覧会の図録が多いのも嬉しいし、昔の美術雑誌があるのも面白い(僕は和田誠の装丁集が気になった)。
本のことなんて知らなくてもいいからアートやデザイン好きなら一度は行ってみて損はない店なのである。
さすが、二匹のゾウ店主を羨ましがらせる店である。 天神橋筋に来た際には食べるばかりでなくこういう店もあるってことを是非心に留めておいて欲しい。