九州の本屋というと、どこを思い浮かべるでしょう?福岡のブックスキューブリック、熊本の長崎次郎書店(古本屋好きなら舒文堂河島書店)、大分のカモシカ書店、長崎のひとやすみ書店(チェーンならメトロ書店)などなど……では、宮崎の本屋は?恥ずかしながら自分は「宮崎の本屋は?」と問われた時、明確に「ここがある」ということができませんでした。沖縄を除く九州エリアで、宮崎だけ自分の手元に情報がない、という状態でした。
ちょっとした懺悔はおいておき、本題に入る前に宮崎の本屋について軽く見ておきましょう。地元チェーンの新刊書店だと明林堂書店、田中書店(宮崎市のと都城市のは同名だけれど別物。おそらく暖簾分けのような形で分かれたのか)があります。ちなみに田中書店、都城にある方は本稿執筆時点での、宮崎県内唯一の御書印参加店となっています。ここも120年ほど営業をしていますが、今回はここを紹介するわけではありません。
一方古本屋はというと、宮崎市ではキママブックスと今回紹介するポロポロ書店の2軒。延岡市に1軒古本屋があるらしいですが、どのようなものかはわからず…… と、上記のような状況である宮崎、今回紹介するポロポロ書店は繁華街である橘通にあります。この橘通の裏手をどうやら「ウラタチ」と呼ぶ場合もあるそうです。
橘通の細い道に金色で「ポロポロ書店」と書かれた扉。そこを開けば本棚が待っています。オープンは2020年のクリスマス。比較的新しい古本屋です。キママブックスへ行くため、県庁方面へ歩いてた際にたまたまここを見つけました。おそらく「キママブックス以外に古本屋はない」と決めつけていたら見つからなかったかもしれません。ちなみに今回はキママブックスには行けませんでした。土日祝のみ営業に切り替わっていたみたいでした。自分が宮崎に行った時は平日だったので、撃沈です。
店のある場所は、店主曰く本屋の前は倉庫、その前は服屋だったとの。場所が狭いので、狭くてもできるものが入っていたのでしょう。店名は田中小実昌の小説が由来。棚は音楽系が結構多い印象でした。店舗の広さを考えると買取はしていないのではないでしょうか。古書組合に入らず買取をこなしてしまうと交換会に参加できず、本が積み上がってしまうのではないでしょうか……。
それだけでなくここの本屋は営業時間が不定となっています。理由を伺うと店主は仕事をしているため、仕事が終わってから営業する、もしくは休みの日に早く店を開けるとのこと。仕事をしながら本屋をやる、というよりも本屋をやっている人を見ると羨ましく思えてしまいます。
自分が一歩踏み出せていないことが原因なのですが……本を買った後、宮崎の本屋に関して話になった時に、綾町に本屋ができるかもしれないという話を頂きました。レンタカーの使用を縛っている自分にしてはなかなかにハードルが高い場所ですが、情報が入ったら行ってみたいと思います。
自分がポロポロ書店に伺った時、消しゴムはんこを押すという企画をやっていました。「煩悩をなくす」ためにはんこを押すそうです。自分は芥川龍之介を。自分の誕生日が河童忌なので、選んでみました(たまに誕生日の話をするときに河童忌を出しますが、あまり反応は、ないですね……)。
今回買った本は赤瀬川原平『路上観察学入門』。自分が本屋巡りでやっている街歩き、これも路上観察と関わりのある分野ではないか、何かしらか本屋巡りや街歩きにヒントになる要素があるかもしれないと思い、購入。
初めて行った街でも、より解像度を上げて見るためには事前調査以外にも実地でやれることがあるのでは、と思っていますが、何ができるかはつかめておらず。今回買った本で、なにか見つかり、それを実践したときにどうなるか、気になるところです。
路地、とは言えないですが、細い道にある本屋。おそらく何も意識しなければ素通りしてしまうところをどのように意識していくか、今後重要ことになっていくかもしれません。