国内有数の温泉地、大分県別府市。大分駅からもバスや鉄道でアクセスができる非常に立地がよい地域です。別府駅からは歩いて10分くらい、バスで行けば大分駅からも1本で行くことができる場所に、今回訪れた大野書店はあります。
別府市で一番古い本屋で、現在ある場所では昭和58年頃からの営業とのこと。先代の頃からやっているためもっと前から営業はしているとのことです。別府市の古本屋はここ以外には様々な面白い本を取り揃えている書肆ゲンシシャがあります。おそらく本屋で別府を訪れる方は、ゲンシシャ目当てな方が結構いるのではないでしょうか。
この大野書店、棚は郷土資料や美術系など、街にある昔からの古本屋だとある程度揃えているものは基本的に揃っています。店内に入る。本稿執筆時は3本ある通路のうち、一番左の通路が空いていたため、そこから入っていきました。残りの通路を見ていくが、床に本が積まれているためやや狭かったです。一部通り抜けができないところがありましたが……個人的には積まれている本の数々が気になってしまうものです。
棚をじっくり見て本を選び、会計へ。そのついでに少々話を伺ってみる。どうやら店主は神保町(かつては湯島)の玉英堂書店で修行していたとのこと。神田で修行した後、地方で本屋を開いたりするパターン、もう少し色々と探してみたいですね。神田の古本屋にはよく行ってたので、神田で修行していた方とはついつい話し込んでしまいます……。
神田のどの店で修行したのかを系図としてまとめていくときっと何か見えるものがあるかもしれません。神田で修行した後に開店や店を継ぐパターンだと、長岡の成匠堂書店(一誠堂書店)や米沢の羽陽書房(八木書店)がこれに該当します。
どうやら店主、修行を始めた頃は建場巡りをしていたようです。おそらく古本屋に詳しい方だと見慣れた言葉かもしれません。ざっくりと説明すると建場は、古紙回収の元締めのようなものだと解釈してもらえるといいかもしれません。ここで古書を見つけて古本屋に出すなど、かつての古本屋の仕入れルートでは重要なものでした。
建場について書かれている本で入手しやすいものは青木正美『古本屋五十年』(筑摩書房)が個人的にオススメです。神田というよりは東部地区の本屋ですが、当時の神田の話などが残っているため、地方の古本屋でたまに出てくる神田の話は、結構この本を基に聞いていることが多いです。
大分周辺の本屋事情を伺ってみると、現在は組合加盟店は13軒。以前と比べて軒数も減ったし店売りしているところの割合もかなり減ったとのことです。店売りや組合員が減っていくのはやはり色々な場所(自分が聞いた範囲だと高松など)でも聞く話でした。都心部は本屋が増えているが、地方は本屋が減っている、人口だけでなく昨今の情勢でやっていけなくなったという場合や後を継いでくれる方がいないなど、様々な要因があるようです。また、店に来る客の話もしていただいたところ、最近は古書目当てよりも古地図や写真目当ての方が増えているとのこと。やはり古書はインターネットで探せば見つかる、ということがあるのかもしれませんし、わりと荷物になる、のもあるかもしれません。
今回買った本は『由布院を歩く』(葦書房)の1冊。地元の古本屋なので、その地域のものを買ってみました。どうやら自分は地域の古本屋に行くとその地域や地方の本に対する感度が上がっていくみたいです。しかしこの本、発行は福岡の版元。本当に「ご当地もの」とは言うことができない本を選んでました。由布院はゆふいん文学の森など本に関わる場所があるので、そのうち伺ってみたいものです。