鹿児島市役所近く、市電だと朝日通で下車してすぐの名山町に、古書リゼットはあります。名山町に、というよりも名山町にあるレトロフトチトセという施設の中にあります。古本屋なので店舗だろうと思って行くと驚くかもしれません。
レトロフトチトセ内の廊下に左右ズラッと存在する棚。棚の合間にあるレジ。向こう岸へ行くと喫茶店など。棚を散策しているとたまにコーヒーのいい匂いがしてきます。コーヒーをテイクアウトし、階下のスペースで本に囲まれながら飲む、というのも一つ楽しみのようです。この階下のスペースでは定期的にイベントをやっているようです。
棚は思想、人文、自然科学など古本屋ではよく見るようなジャンル以外にも、児童書、書や絵などの本など様々なジャンルの本があります。前回訪問時は郷土資料もあったのですが、これは別のところへ移設したようです。
この古書リゼット、今回が初訪問ではありません。谷山にある猫待屋という古本屋が開店する初日に回っていました。その日は古書リゼットの近くにあるブックスパーチも回っていました。
その時は本を買ったあと、名山町、とりわけいわゆる名山堀と呼ばれるスポットを案内していただきました。鹿児島市役所の近くにありながら整理されていない雰囲気を醸すこのエリア、昭和レトロ感あるエリアと言われているそうです。案内いただいたおかげで名山町の解像度がかなり上がった気がしました。古書リゼットに寄った際は、名山町をふらりと散歩してみると非常にオススメです。
自分が初めて訪れてから現在までの間の話を伺うと、ネット販売へより注力するようになったとの。鹿児島の古書組合加盟店のため、プラットフォームは日本の古本屋。これまでに比べると日本の古本屋での量が増えたとのこと。
やはり昨今の感染症の関連で、近隣の県の方もネットで買うことが増えたのかもしれません。また、交換会の話も、今の所鹿児島ではないため、熊本まで行くことがあるようです。
かなり昔からやっている舒文堂河島書店や様々な古本屋が熊本にはあるので、やはり流通量は熊本の方が多いのでしょう。時節柄、ちょうど予約受付中であった『東京古書組合百年史』の広告がレジの裏に。予約したのか聞かれたので、「予約が始まって比較的早い段階で注文しました」と返答。自分が現在持っている『東京古書組合五十年史』との読み比べが非常に楽しみな一冊です。
これに関連して、鹿児島の本屋に関しての資料等あるのか伺ったところ、皆無との返答でした。本屋が閉まると数年のうちは本屋があったことを知っている人がまだいるものの、時間が経つと本屋があったという記憶が薄れていきます。本稿など、自分の連載が「そこに本屋があった」と言われるようなものになればいい、と改めて思いました。
現在の鹿児島県の古本屋は、古書リゼットの近くのトマルビルにブックスパーチが、住宅街である武岡地区につばめ文庫(週2日は出水で営業)、谷山には鹿児島市内の古本屋で最も新しい本屋である猫待屋(ここは本以外にも消しゴムはんこや蔵書票が豊富)があります。
これら4軒は、それぞれ親交があるようです。その他にも糸書房や廣文館、あづさ書店があります。糸書房は不定期営業(月に数日のみ)、廣文館は店売りをしているのかわからない状態となっています。鹿児島市内の古本屋を制覇したい場合、この2軒に行くのはなかなか難しいかもしれません。
あづさ書店は比較的営業時間の長い古本屋のため、ふらっと訪れることも可能な本屋です。諸々の情勢が落ち着いてきたら、じっくり鹿児島に腰を据えて、本屋巡りをしてみたいものです……。
今回買った本は、『大日本及全属国の郵便切手(完訳版)』。棚をじっくり眺めていたらたまたま目についたので購入してみました。切手収集、というか切手については全然知識がないので、近代の郵便制度の発展に関する本も手に入れて、色々と読んでみたいものです。
郵便制度を知ることは当時の流通制度を知ることであり、それがもしかすると書籍流通へも繋がるかもしれません。際限なく勉強する分野が増えていきますが、程々に広く深く、やっていきたいです。
古書リゼット初回訪問時の記事は以下
https://note.com/maznaga/n/neaf42f5145c0?magazine_key=m98d851af48ed