佐藤yuupopicさんと出会ったのはたしか下北沢の店が移転する前のことだから2019年ごろなのかな。訪ねてきてくださって詩集をいくつか取り扱うことになり、さらにいつか展示をしたい、というようなことを話していたと思う。
移転後にその展示がコロナ禍の中とはいえ、ついに実現したのだけれども(そして今年の夏にま2回目が開催できたのだけれど)、まあそうやってお話ししていると妙蓮の本屋・生活綴方(以下、綴方)で店番を手伝っているという話題も出てくるのである。
BOOKSHOP TRAVELLER もシステムは違えど綴方と同様、僕以外の方が店番ができる1日店主という制度があるので気になっていた本屋だった。そこが、店内のリソグラフ印刷機でオリジナルリトルプレスを作っているというのだからそんなの気になるに決まっている。
そんな感じで佐藤さんと話していたらなんと持ってきてくれるという。嬉しすぎるねありがたすぎるねえ、というわけで持ってきてくれたので購入して、読み出したのが2ヶ月後くらいの今なので申し訳ないがまあこれでも早い方だから許して欲しい。読まなくちゃ系の本ってどうしても遅くなっちゃうのよね良くないけど。
というわけで、『点綴』である。手元には2巻まであるが本稿では1巻について書いていく。
まず紙の質が良い。その場で印刷しているからなのからなんなのか分からないが表紙のツルッとした感触はずっと撫でていたくなる。こういうの結構大事なのよね。個人出版ならなおさら。
さて、内容である。一巻では関係者による「綴方がどうやってできたのか」「綴方での店番の日々」である。
クラウドファンディングと、出版社が絡むのと、共同店番と街の本屋の再建の仕方としてだいぶイレギュラーな方法で成功しているので、それらの記録を読めるのが、まず助かる。僕も僕でBSTのことで手一杯で綴方のことを知ってはいてもまったくタッチできていなかったからだ。
そして何よりどの文章も読んでいて楽しい。心に残る言葉もいくつもあった。集まってくる人々が面白いからだろうか。どうしてこんなに人が集まってくるのか。その謎は2巻のある言葉に答えがあるような気がするのだがそれはまた次の稿で書く。
最後に良かった言葉を引用する。
"石堂書店が本気で再建しようと思うのなら、従来型の、まちの人に支えられる本屋としての「まちの本屋」ではなく、まちの文化を主体的につくっていく側の本屋にならないといけない。"
p.15
まったくだなあと思う。独立書店ってそういうことだと僕は思う。
生活綴方という言葉の元ネタとしての教育運動を知りたいなら"『山びこ学校』(岩波文庫)を書店で手にとってほしい。"
p.18
最近どこか違う本で見かけた本だし生活綴方って言葉も見かけたな。どこだっけ。
"文章でも、絵でも、ITでも、なんでもいいので。あなたの表現を一緒にかたちにしてみよう、という思いだ。"
p.32
綴方の店番に参加している方々への思いとして。BSTももうちょっとこうなりたいよなあ。どうにかできないものか。
"Yの旦那、セイちゃんは広島市内のビルで小さな本屋を経営している。"
p.41
『小さな声、光る棚』にも登場するREADAN DEATの清政さんだ!
READAN DEATの開店前が書かれた連載はこちら https://bookshop-lover.com/blog/post-category/%e9%80%a3%e8%bc%89/rensai-readandeat/
"実家の大船駅に「ポルベニールブックストア」が開店したのはこの頃のはずだ。"
p.46
サイトウワタルさんの文章に登場。自分が追ってきた独立書店がこうやっていろいろところに影響を与えているって知るのはなんだかとても嬉しいことだ。
"本を読むことは、あったかい味噌汁がついたご飯を食べるようなことだと感じている。"
p.73
森永薫さんの文章。良い表現!