西日暮里BOOK APARTMENTの田坂さんに取材の際にお勧めしてもらった本。コミュニティとかまちづくりとかソフト面から建築の仕事に興味を持った田坂さんが色々あってHAGISOの会社に就職し、色々あって棚貸し本屋をやることになったその田坂さんがお勧めするとあっては読まざるを得ない。
ファンタジーというか幻想というか、まあつまりはまだ見ぬ世界が好きな僕としては、妄想たっぷり空想たっぷりの幻想建築は好物で、なので実は前々から興味があったといえばあったのだけれども。
内容はというと、色々な建築家(や思想家、作家)が描いた建てられなかった建築物・都市のドローイングと、その作者について語る本である。
「はじめに」で著者が建築家のことを
"まだ見ぬ新しい世界の成り立ちを提示することのできる数少ない職業のひとつ"と表していて、そうであるならば本書のような空想はとても大事なことだ。
またこうも書いている。
"何かを創造するということは、その前にたくさんの想像があってこそ、はじめてできることのやうな気がする"
そうだ。何を作るにしても想像があってこそだと僕も思う。SF黎明期に想像されたことが今になって現実になっているように想像がなければ創造は始まらない、と僕は思う(偶発的に生まれることも大いにあるだろうが。)。
まず想像して創造する。想像が絵になったらあとは現実的な予算や人間関係や技術の問題になる。でも、その前の想像がなければ何も始まらない。
きっと僕がこういったアンビルド・ドローイングが好きなのは何かが始まる前の期待を感じさせるからなんだろう。いや、建てられなかったのだから、むしろ永遠に始まる前の期待を封印しているとも言える。その永遠の期待が僕を魅了するのかもしれない。
そうそう、ところどころ田坂さんのと思しきラインが引いてあるのも楽しみのひとつだった。本好きが店を開く棚貸し本屋だからこその楽しみ方である。