前巻からかなりの間を置いたけども、最高にタイムリーなテーマで2巻が出たので当然購入した(2016.7.24執筆のもの)。
なぜ「本と流通」がタイムリーかというと2つある。
出版業界の卸会社であり金融機能も担う取次の一部、太洋社と栗田出版販売が倒産し、いよいよ大変な状況になってきた出版業界ではあるが、それでも日々は流れて現場の人たちは地道に活動していくしかない。出版不況の話になると必ず槍玉にあげられる取次にも当然そうやって働いている方々がたくさんいるわけで、じゃあなかなか見えてこない取次の中の人はどんなことを考えているのか。これから本当に崩れていくかもしれない出版業界の構造を知る上でも現場の声を知ることはとても重要だしそれを知る一助になる。それがタイムリーだと思う理由の1点目。
2点目はデータこそないが、確実に増えていると感じる小さな本屋。これから始めたい人もまだまだいるだろう中で、開業するときにぶち当たる大きな壁のひとつが仕入れ問題だからだ。通常、本屋は大取次と呼ばれる日販やトーハンと契約することで新刊を仕入れることができるのだけれども、契約時に月商の2,3ヶ月分の保証金が必要なのだ。本は委託販売制のため取次としては出版社から借り受けた本をさらに本屋に貸すことになる。もし本屋が本を持って夜逃げしたら……そう考えると保証金を取るのは不思議ではない(異論はあるしぼくもこれに完全に納得しているわけではない)。でも本屋の側からすると、物件取得や内装工事などの初期費用がただでさえかかるのに追加でそれだけの支払いがあるとなると二の足を踏んでしまう。その上、ただでさえ本は利益率が20%の商品であり(だからカフェや雑貨を売る)、家賃や人件費もバカにならず、売上自体が減っている現状では新規参入者が増えるわけもないのだ。
それでも現状で小さな本屋が増えているのはなぜかというと古本屋がほとんどだからである。だが、店主に聞いてみると古本は買取に依存してしまうため(せどりや市場という手もあるが)品揃えをコントロールしにくく欲しい本が手に入らないので、やはり新刊を取り扱いたいという声も多い。じゃあどうすれば良いか。
実は新刊の仕入れルートは大取次だけではない。一部の出版社では直取引ができるし、いくつかの小取次がそういった資金力はそれほどないが新刊を仕入れたいというニーズに応えているのだ(ことりつぎなど新刊の仕入れも多様になってきている)。
ところが、そんな情報はあまりネットにも上がっておらず、特に「新しく始めたい」という人にとっての選択肢にはつい最近までなっていなかった(開業し継続しているうちに小取次の存在を知ったり出版社との関係性ができたりする。)(これは「本屋入門」を2回やってきた中での実感としてある。)
そんなときに出版されたのが本書なのだ。ぜひ本屋を開きたい方には読んで欲しい。
(内容には触れずに終えてしまったけれども1200円と安いし、まずは読んでみて! ということで)