「ソマリア」と聞いたら何を思い浮かべるだろうか。おそらくほとんどの人は「海賊」を思い浮かべるだろう。そういえば、すしざんまい社長が対策にひと役買ったとかいう記事がウェブ上で盛り上がっていたのがついこの前だった(以下の記事に詳しい)。
ところが、本書の焦点はソマリアギャングだそうだ。ソマリアの問題は海賊だけではなかったのか? 以前観たテレビで政権が不安定とかなんとか言っていたような……。以下の本書特設ページによると「世界最悪の紛争地帯」とのこと。
なるほど。不安定、というか無政府状態のようだ。
さて、本書は日本で初めてソマリアの問題解決に特化した学生NGO「日本ソマリア青年機構」を設立した永井陽右氏によって書かれた。彼がどうして同機構を立て上げたのかその動機と経緯、そして立ち上げてからのストーリーを描かれている。
こういった本を読むときに気をつけているのが『Because I am a girl』の書評の際にも書いたが、支援する対象はあくまでも他者だということだ。加えて「正しい」とか「正義」とかいう言葉に酔っていないかということ。本書については著者の個人的で主観的な想いがベースになっていて、変に正しいとかそういう理由を使用していない。それがとても良かった。
自分の気持ちや考えと素直に向き合って目的を決めて他人と共有し、ブラッシュアップして実現していく。はじめは荒唐無稽でも良い。とにかく飛び込んでみることで現実的なステップを得て目的自体も磨いていく。
我が身を振り返っても参考になるし、何より気持ちがアガる読書体験だった。
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以上が7/6(水)に本書の担当編集者・下田理さんと「『僕らはソマリアギャングと夢を語る』の編集者・下田理さんのお話を聴く会 〜第一回編集者と語り合う夕べ〜」を開催する前の感想だ。
・「『僕らはソマリアギャングと夢を語る』の編集者・下田理さんのお話を聴く会 〜第一回編集者と語り合う夕べ〜」レポート
イベント開催後の僕の感想はというと、本書の著者・永井陽右さんはやはりすごい人なんだなーということである。とはいえ、イベント中に担当編集者の下田理さんも仰っていたが、「彼は現地のソマリアギャングのことを一番に考えているのであって、仲良しのために活動しているわけではない」というだけなのだ。これはどんなことにも言えると思うが、活動がある程度以上のスケールになってくると中心人物がどれだけ活動対象のことを思っているかが試されるのではないか。そして、永井陽右さんはそこがブレないということなのだ。
あれ? 「とはいえ」とか言いながら、それってやっぱり凄いことじゃないか。
下田理さんは本書を「ソマリア問題や社会起業に関心のある方だけではなく、何かを始めようとしている若者に届けたい」と仰っていた。本書は、永井陽右さんがどうやって始め、行動し、広げ、続けていっているかがテンポよく書かれている。ぜひ「これから何かを始めようとしている若者」にこそ読んで欲しいと僕も思った。
(本書評は書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」への投稿書評を転載したものである)