【書評】三中信宏『系統樹思考の世界 すべてはツリーとともに』



誰もがそうかもしれないがじぶんが特にそうだということに、「図で考えること」がある。だいたい何かを思いついたり考えたり、それを人と話したりするときには頭の中に何かしらの図が浮かんでいることが多い。それは4象限のあれだったりそこにもう1次元加えてみたり地図みたいなのだったり。

そんな自分にとって「系統樹思考」という言葉は見事に刺さった。特に最近歴史にも興味が出てきて、「なぜそのときにそれが起こったのか」を考えるときに歴史、というか時間的な文脈がとても重要だと思うからだ。

本書は系統樹思考の入門書であり、系統樹思考(系譜をたどる)と分類思考(カテゴリー化する)の違いとそれぞれの由来を推測を交えながら解説する。2つの思考法が論理的に矛盾するものだというのは面白いが実感できなかった。そんなものか。

いつも不思議だった(というか違和感があった)歴史を代表する社会科学における統計と仮説採用の流れで、「このデータは充分に信頼できるのならば、同じデータをもっとも説明できる仮説を採用する」という考え方に「アブダクションという名前があり、この考え方自体に意味があることを納得させてくれたことが一番の収穫だった。

最後に入門書なので最後の文献リストが素晴らしい。その中から、歴史・科学哲学・科学史あたりで興味があって、かつ、英語を読むのは面倒なので日本語の文献をメモしておく。どこかで読めたらいいなと思う。

  • 『社会生物学論争史:誰もが真理を擁護していた』進化生物学の現代史。生物学史ってこんなにおもしろく書けるんだと納得する。
  • 『進化論の射程:生物学の哲学入門』え?「生物学哲学って何?」。でしたら、まずは古本を読もうね。
  • 『歴史・レトリック・立証』ギンズブルグの歴史書は以前からひいきにしていた
  • 中尾佐助『分類の思考:思考のルールをつくる』個物崇拝者の多い日本生物学者の中で、例外的にジェネラルな「分類論」を説いたのが”照葉樹林文化論”で有名な中尾佐助だった。
  • 『科学的発見の論理』『推測と反駁:科学的知識の発展』何はともあれポパーです。好きでも嫌いでも、またいで通り過ぎてはいけません。
  • 『系図が語る世界史』家系図を共通のキーワードとして、世界のさまざまな社会の歴史を再検討した論文集。
  • 『ダーウィンとナチュラル・ヒストリー』『現代によみがえるダーウィン』「種はない」と私が考えるにいたった論拠を挙げている。「種はある」とまだ信じている読者はぜひお読みください。アナタはきっと解放されるにちがいない。
  • 『文明の中の博物学:西欧と日本』分類体系化という行為が人間社会とその文化の中でどのようなかたちを取り得るのかを広範な資料と一貫した視点で描き切った大著。
  • 『超芸術トマソン』