【書評】三浦しをん『舟を編む』

『舟を編む』

実に映像化したくなる物語だと感じた。

なぜそう思ったかというと、本作の書き方をノンフィクションのようだと感じたからだ。というのも、本作『舟を編む』は営業部では浮いていた馬締光也が荒木公平に誘い込まれ辞書づくりにのめり込んでいく話なのだが、どうもぼくには主人公がこの、馬締光也とは思えないからだ。ぼくが思う主人公は何を隠そう。馬締光也を誘い込んだ荒木公平が念願して、後継者たる馬締光也が完成させた辞書『大渡海』だ。
(ちなみに大渡海という言葉は「辞書は言葉の海を渡る船」との想いから。)

なぜなら。本作はすべて第三者目線で語られている。主人公であろうと第一人称になることは会話文以外ではありえないし、ほかの登場人物は言わずもがなだ。つまり、『大渡海』という主人公を完成させるために奔走する人間たちを神の(作家の)視点から見つめた物語なのだ。

10年以上もの月日をかけた辞書づくりの過程を読みやすい長さにまとめることはとても難しいだろう。そのためかそれぞれの描写があっさりしていてスピード感があり想像力を膨らませることはできるのだが、情報が足りないように思うことが多かった。

読了後、思ったことは「映像で観たいなあ」ということで、「あのエピソードの語られていない周囲の状況はどう描かれているんだろう?」とか「香具矢さん役は誰がやるんだろう?」とか、映像だからこそできる人物や光や細かい情景描写が『舟を編む』をどう表現したかがとても気になったのだ。

ぜひ近いうちに映画版を観なくては!