グンマーは秘境じゃない(3) まだまだ攻める老舗絵本屋「フリッツ・アートセンター」

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グンマスターとその仲間でめぐるブックショップツアーの記録連載「グンマーは秘境じゃない」。

前回は住宅街の中に佇むふやふや堂を訪れてその雰囲気に癒やされたのだが、次はどこに連れて行ってくれるのだろう。期待の眼差しでグンマスター氏を見ると「ここは絶対行かなきゃダメ!」と言った。車をしばらく走らせると良い感じの公園が見える。おや? 奥に『紅の豚』に出てきそうな建物が……。ここがその絶対外せない場所、フリッツ・アートセンターだ。

まとめ

時間のない方のためにまとめです。
  • 品揃え:絵本と大人向けの写真集やデザイン本・小説、雑誌など。
  • 雰囲気:トンガっているけど入りやすい不思議な雰囲気。
  • 立地:電車:JR上野駅より高崎線にて高崎行き・または前橋行き。高崎駅より両毛線にて前橋・桐生・小山方面行きにて前橋駅下車。上野から各駅停車で約2時間、特急にて90分。長野・上越新幹線にて高崎まで50分、高崎駅より前橋まで15分。
前橋市敷島町240-41(敷島公園内)
開館時間:11:00am – 8:00pm(月曜7:00pm、金曜9:00pm)
休館:火曜日(祝日の場合は翌日)
Tel:027-235-8989
Fax:027-235-8990
Mail:info@theplace1985.com
URL:http://theplace1985.com
Twitter:https://twitter.com/cinemamaebashi?lang=ja
Facebook:https://www.facebook.com/F-ritz-art-center-1476229672690172/

まだまだ攻める老舗本屋

話によると奇抜な店舗のデザインは飛行機の発着場と格納庫から来ているらしい。空間の広さと天井の高さ。確かにここになら、それこそ『紅の豚』の主人公・ポルコの乗る、あの赤い飛行機くらいなら入りそうである。

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さらに話を聞いていくと、フリッツ・アートセンターは23年前から開業している老舗店なのだそうだ。はじめはアートに特化した店づくりだったが、現在は絵本を中心に扱うように。というのも、子どもたちに、たくさんの本にふれる場所と時間を提供したいという思いがあるのだ。
(1985年にフリッツ・アートセンターの前身となったカフェ「RITZ」ができ『同敷地内、現在は家具店「RETORO BOX」』、1993年にそのとなりの敷地に現在のフリッツ・アートセンターができた)

店主の小見さんはフリッツ・アートセンターを「小さい本屋が続いていくモデルになりたい」ともおっしゃっていた。

凄かったのが前身のRITZから数えてもう30年もやっているのに、まだまだ新しいことにチャレンジしようとしていることだ。例えば、ポスターの取扱いも増やしたいといったことだ。展示やイベントなどもたくさん予定しているらしい。目をキラキラさせながら「今度、ホラーの爆音映画祭をやる! ホラー詩の朗読会もやる!」とおっしゃっていた。

ずっとタンタンが好き

レイアウトと品揃えの説明をしていこう。広い駐車場を通り抜けて店舗に入ると出迎えてくれるのは数多くのタンタンたち。何年か前に映画化もされた『タンタンの冒険』の原作シリーズや人形が店舗の入り口部分を使って大々的に並べられている。

同店の店員でもあるsuiran(本屋。このお店については別途紹介する)店主の土屋裕一さんによると、どうやらフリッツ・アートセンター店主・小見さんがまだ小さかった頃に叔母さんからはじめてもらった絵本がタンタンシリーズだったそうなのだ。その頃の出会いをいまでも大切にしてるなんて。フリッツ・アートセンターの温かさが垣間見える。
タンタンの売り場はレジを通り過ぎたあたりで終わり、奥は絵本コーナー、suiranコーナー、ギャラリーと続く。絵本コーナーは左手奥と右手奥に少し、suiranコーナーは右手手前である。

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絵本については何も分からないので書名は挙げないが写真を見てもらえれば分かるだろう。名作からあたらしい絵本まで数多く取り揃えがあり、それが「1〜2歳児用」といったように分かりやすく置かれている。ちょうど来店していた子どもたちが夢中になって読んでいる姿が微笑ましかった。

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前橋の文化的拠点

いまぼくは、以下の仮説が正しいかどうかを検証している。

「ひとつの県にひとつは文化的拠点となりうるような小さな(独立系)本屋があるのではないか?」
「無かったとしてもこれから作られるのではないか?」

前者の例は仙台の「火星の庭」であるし、後者の例は(すでに何年か前に開店したが)広島の「READAN DEAT」だ。
正直な話、群馬は後者にあたるような面白い本屋は点在しても中心となるような歴史ある代表的な本屋はないものだと思っていた。だが、喜ばしいことにフリッツ・アートセンターに出会って、このぼくの浅はかな考えは見事に打ち破られた。独特な店舗デザイン、数々の刺激的なイベント、それを仕掛ける魅力的な店主。

話によると小見さんはいままで街にあったのに、姿を消しつつある「居場所」を自らの手でつくってきたようだ。カフェ「RITZ」(1985年)、本屋「F-ritz art center(フリッツ・アートセンター)」(1993年)、映画館「シネマまえばし」(2009年)。「根底にある想いは、おそらく、ひとりがゆるされる心地のよい場所=居場所をつくっているんだと思います」というのは次回紹介するsuiranの土屋裕一さんの弁。確かに少しの時間だがフリッツ・アートセンターにいて近所にあれば居場所になってくれるような居心地のよさを感じた。

印象的だったのが同行した20代前半の仲間が店主の小見さんと「一緒にまた面白いことやりましょう」と楽しそうに話していたことだ。それを見ながら、ここを紹介してくれたグンマスター氏に深く感謝すると共に、グンマーは秘境なんて言った奴は誰なんだと憤慨したのであった。

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つづく