「神戸の本屋と言ったらここだ!」と確か『女子の古本屋』で読んだことがあったので行くことにした。ということで、本屋探訪記第37弾は「海文堂書店」(2011年12月18日に訪問しました。2013年9月末に閉店)。
まとめ
- 品揃え:何せ広いので大抵のものはある。1階に雑誌、人文、小説、児童書など。目玉は2階の船と海の専門書と雑貨。その他2階には古書コーナーと資格書、参考書がある。
- 雰囲気:いわゆる街の本屋さん。年配のお客さんも多く何となくくつろげた。
- 立地:元町駅から歩いて5分ほど。商店街アーケードの中。
wikipedia:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7%E6%96%87%E5%A0%82%E6%9B%B8%E5%BA%97
店まで
この日は、元町駅で降りてお気に入りのショップと本屋探訪記のメモを取るのが目的で神戸に行った。駅を海側に出て、しばらく西に出る。
まず「Howdy Doody」に寄る。最高のオイルドジャケットに後ろ髪を引かれつつ(このとき買っておけば良かったと1/7(日)に再訪したときに後悔することになる)、アーケード街に。すると、三ノ宮周辺の騒々しさとは縁のない地元な雰囲気であることに気づく。そこにあるのが「海文堂書店」だ。
外見
外見はガラス張りだが、ガラス内の様子を観ることは難しい。雑誌置き場があるのと、目の前でDVD・CDセールが行われているからだ。特にDVDセールはアーケードにはみ出している。これは商店街の繋がりが強いことを示しているのだろう。そういえば近くに大型店はない。まあ三ノ宮と比べると人通りが少ないことにも起因していそうだが。
1階部分のレイアウト
中に入ると、奥行きの広さに驚く。単なる町の書店と思って舐めてかかると痛い目見そうだ。
実際、全てをメモに取ろうとすると怖ろしく時間を取られそうだと判断したので、いつもより詳細を省いたルポになったことをここで謝罪しておきたい。
レイアウトはだいたい凸型の店内に、本棚がたくさんある。とにかくたくさんある。ただし、特徴は目の高さより高い棚がないことだ。この本棚のお陰で圧迫感を感じることなく店内を観て回ることが出来る。これは素晴らしい考えだと思う。
広いとは言ってもジュンク堂と比べると街の本屋が物量に劣るのは仕方ない。しかし、そこで差別化を出すために、もっと高い本棚にすれば品揃えが良くなるのをあえて低くしているのだと僕は考える。しかも、奥に相談用のカウンターがあり、いつでもお客の相談を受け付けられるようになっている。これは一人一人のお客さんと向き合おうとしている一つの証拠だろう。
僕が行ったときは、そのカウンターにいた店員さんにおじいさんが質問していた。なんだか和む雰囲気だった。
1階部分 入口前
さて、一階部分の大まかな紹介に入ろうと思う。まず右隣には大きなカウンター。入ってすぐの正面には新刊書の面陳、平積みコーナーがあり、手前の壁棚には旅、地図、スポーツだ。これらのコーナーの奥に階段があり、その横では「版画家・岩田健三郎のコーナー」がある。
入口に戻ってカウンターの前には棚が四列ある。 手前の1列は単行本や新書の新刊コーナーや新聞書評コーナーがあり単行本・大判本を中心に店員のオススメ的な本を集めた作りとなっている(入口すぐ前なのでここは目に入り易く、面白い品揃えとなっているので是非見てもらいたい)。内容はと言うと『世界の夢の本屋さん』、『「本屋」は死なない』、竹尾の本など本の本の他に民俗学系、歴史や社会系が多いように感じた。
1階部分 雑誌コーナーと文庫、凸右肩部分の女性向けコーナー
奥の3列は雑誌コーナーで、奥に各出版社の文庫、人文関係の単行本という流れとなっていて、雑誌棚の奥、カウンター隣の壁棚は道や生け花、着付け、園芸、ペットがある。凸の右下辺は女性向けの品揃えだ。
そして、凸右肩の部分はコミックと児童書、絵本、折り紙やドリルなど子供向けコーナーだ。結構なスペースが取ってある。地元の家族が着やすい様にだろう。絵本のコーナーも充実しており、もっとじっくり見ておけばよかったと今、後悔するしているほどだ。
ちなみに雑誌コーナーの中には今週のベストセラーご案内が手書きであり、『日本海軍はなぜ過ったか』五位や『スティーブジョブズ1』七位『小沢征爾さんと、音楽について話をする』四位などといったランキングとなっていた。
さらにカウンターの周囲では年末だったからだろう。年賀ハガキと年賀状の書き方本。また、ついで買いを狙ってだろう。神戸関係の本もあり、『コーベジャズストリートの30年』、『神戸あのまち、あの時代』などがあった。
1階部分 凸中央人文コーナーと本屋文化、神戸の柱棚
さて、凸の中央部分はカウンターと人文系が中心だ。みすず書房の本、岩波書店の本、法政大学出版会の本など豊富な品ぞろえ。特に注目したいのが中央カウンター横にある柱棚だ。
ここは神戸新聞総合出版センターの本やみずのわ出版の本、編集グループSUREの本、編集工房ノアの本など小出版社の本に加え、神戸についての新聞の切り抜きや海文堂書店の昔の書皮の話が貼ってあったり、さらに左に回り込むと、出版や書店、図書館、編集に関する本が一面(『ブックショップはワンダーランド』や『劇場としての書店』、『リストラなう』、『中国出版文化史』)、さらにさらに古本コーナーまである。
ここの棚はまさに文化を感じる棚なのだ。本屋という文化の棚なのだ。本屋好きとしてはこの棚だけでも来た甲斐があると言うものである。
また、違う柱には神戸に関わる本が多く置いてある。『神戸居留地史話』や『少年H』、稲垣足穂、『バーテンダーの美学』、阪神淡路大震災の本などだ。ここなんかは、地域性が強く出ているのが、観光客や神戸のことを知りたいと思う人には嬉しい棚だろう。
1階部分 凸左辺部分 文学・詩の棚 文化の棚 新書棚
文学好きが楽しめる棚もある。それが凸左辺の壁棚である。凸でっぱりの奥まですっと壁沿いに外国文学、海外ミステリー、中国古典、時代小説、戦記文学、日本の男性作家、女性作家、ノンフィクション、古典文学、文学評論、詩、俳句、福祉と続く。
ここの棚には目が行き届いてるなと感じたことがあって、それは新聞書評の切り抜きや手書きのチラシのPOP、有名作家のサイン、写真など多くの販促グッズがあるのだ。ここでも文化を感じた。
さらに壁棚の前には外国映画、邦画、俳優、女優、落語、能、狂言、歌舞伎、バレエ、社交ダンス、漫才、音楽など芸能関係のコーナーがある。
左辺は文学に限らず文化好きにはたまらないコーナーだろう。また、同じ部分に各社の新書が多く、ライトな読み物も多く取りそろえられているのがニクイところだ。
1階部分 凸でっぱり右側 政治経済・ビジネス書
凸でっぱりの右側部分には法律書、政治、政府刊行物、株式投資、後は一番右奥までビジネス書、経済、実務書などがあり、これに関してはちょっと浮いているイメージがあった。だって、凸の右肩が子供向け、凸中央が人文、凸左肩が文学である。凸でっぱり部分は人文の中でも福祉や精神世界など高齢者向けのコーナーとはいえ、この店にビジネス書が必要だろうかと少し考えてしまった。
これで、1階部分は終わりである。作家のサインや地元の作家の絵が飾ってある階段を上って2階を観て回ることになる。
2階部分 船と海のコーナーと古本市、資格・参考書コーナー
二階は階段にポスターやら船のハンドルやら海図やら地図やら佐野真一サイン、片桐はいりサインなどサインがいっぱいあり、さらに太田雄一郎の神戸という絵が展示されていたりする。
階段を上がってみると正面にいきなり救命浮き輪が9500円で売られており、そのほか船の備品が二つ売り物として売られている。
正面には棚二列と右の壁棚と突き当たりのガラス壁に海の本がある。内容はと言うと、法律から航海日誌から海運、貿易、釣り、クルーズ、資格、海上保安庁、帆船の模型おり、読み物、エッセイ、船の科学館の資料、ポストカード、キャラクター、郵船のピンバッジや消しゴム、マグネットなどグッズ、Tシャツ、海文堂オリジナルポストカード、海図、クリアファイルなどなどなど。海と船のことならなんでもござれだ。
その隣が元町・古書波止場(古本市のことだ)である。
古本市の中は、棚で四角く区切られてていて、入り口は手前の角、レジあり棚二列と壁棚十三個がある。主に古書で相当古そうなものもあった(読み方が右からの本もあった!)。地方史と歴史、文化がメインである。
古本市の隣には資格・学習参考書コーナーでパソコンや建築、美術も扱っている。
最後に、階段横のカウンターを見てみると、何やら周囲に本屋小物がいっぱいある。幻のロシア絵本のポストカード、『幻のロシア絵本1920ー30年代』や川面英のカレンダー、石井義哲ポストカード、『世界装飾図』などマール社の本、和とじ豆本シリーズ、デザインはがきなどが置かれている。
2階は1階と比べるとお客さんが少ないが、よりニッチでマニアックな神戸らしい本が楽しめる場所であった。
「THE・神戸の本屋さん」
これで全てを観て回ったわけであるが、最後に海文堂書店を一言で表してみたいと思う。
それは「THE・神戸の本屋さん」である。神戸にまつわる本が多く置いてあり、かつ地元の人々が多く訪れ客の出入りが絶えない。見た目に派手さはないが、こういう本屋さんは長くずっと残って欲しいものである。