土日が晴れたのはいつぶりだろう。あまりの快晴に嬉しくなって谷根千に行くことにした。久しぶりの本屋探訪にウキウキしながら降りた駅は日暮里駅。
第一の目的地は「古書ほうろう」だったので西側に向かって坂道を下っていく。道端では露天商が野菜を売っていたり。あ、良い階段だ。撮っておかねば。
そうやって歩いていくと谷中銀座の直前で一箱古本市のように古本が売られている。本体は奥のビルの2階らしい。名前は「古書信天翁」。
こしょしんて…???
助けてGoogle先生! と恥知らずにもiPhoneで指をタップさせた。
…ふむ、ふむふむ。信に天に翁で…なるほど「あほうどり」か。
というわけで「古書ほうろう」の前に寄ってみたのが今回の本屋探訪記「古書信天翁」だ(以下は2013年10月13日の記録)。
まとめ
時間のない方のためにまとめです。
- 品揃え:黒っぽい本は少ないが、比較的新しい本については全般的にある。谷根千に関する本があるのが特徴的か。小部数出版も何点か。
- 雰囲気:これぞ古本屋って雰囲気。照明が明るすぎないのが良い。
- 立地:日暮里駅から徒歩3分程度
電話/ファックス:03-6479-6479(むしなくむしなく)
営業時間:水〜土曜 12:00 〜 22:00 日曜祝日 12:00~20:00 定休日:月・火曜日 (ただし祝日の場合は営業)
URL:http://www.books-albatross.org/
Twitter:https://twitter.com/books_albatross
Facebook:https://www.facebook.com/koshoahodori
レイアウト
前置きが長くなってしまったのでさっそくレイアウトの説明をする。
薄暗いビルの2階に上がるとまず目の前に雑誌や大判本がある本棚。そこから右に折れると、左手にレジカウンター。通路となっており右手は壁棚。しばらく進むと右に開けた空間に出る。
広めの店内に心地よく差す日の光は右奥突き当たりの窓からだ。
数字の7を左右逆にしたような形の店内。壁はもちろんすべて本棚で埋まっており中央にも棚が2つある。店に入って右に折れまっすぐ行った突き当りになぜか三方を本棚に囲まれた一角があることだ。何が並べられているのか非常に気になる。
BGMはジャズが流れるラジオ。さて、品揃えの説明だ。
品揃え
開けた空間に出るまで
入口から順に右回りに見ていこう。
まず入ってすぐ目の前は雑誌『スタジオボイス』や雑誌『住宅特集』。
右に折れて開けた空間に出るまでに壁棚が3本だ。うち洋書と外国文学で2本。
洋書は分からないので置いておくとして外国文学はジュペリ『人間の大地』、『空の開拓者』、マルグリット・デュラス、『ユリシーズ』、『ボルヘス怪奇譚集』、雑誌『ユリイカ』、ハヤカワSF少々、マーク・トウェイン、『アメリカの鱒釣り』、『たんぽぽのお酒』、『狂人の太鼓』などである。外さない品揃えだ。さすが谷根千。周辺読者に本読みが多いのだろう。
ちなみに左手のレジカウンターも本棚になっており、絵本がズラリと並んでいる。ここも洋書が多かったので書名は割愛させて頂く。ここから前と右に空間が広がるのだが、はじめに述べたとおり右回りに壁棚を見ていく。
広がる空間 右辺
壁沿いに右に行くと棚が4本だ。もちろん棚の前にも椅子やテーブル、床に直積みなどされており古本屋らしさが滲み出る。
ここにあるのはざっくり言って音楽・映画・演劇・落語・アートである。
音楽は『モータウン・ミュージック』、『ブラック・カルチャー』、『音盤時代』、『モーツァルトの陰謀』、『ソクーロフ』など。
映画は雑誌『トラッシュアップ』や雑誌『ダイス』、『フィルムメーカーズ』、デイヴィッド・リンチ、『フィルム・ノワールの女たち』、『市川崑の映画たち』、『評伝 黒澤明』、『映画覚書vol.1』など。パンフレットも300円からある。
演劇は『演劇的自叙伝』、『覚醒の舞踏』、『イメージの劇場』など。
落語は『古典落語』、『与太郎戦記』、『芸人春秋』など。
アートはロートレック、『伝記ウォーホール』、『アートのみかた』などとなっている。
ここで角に窓だ。なんと開いている。爽やかな風。開放感。この窓の前には雑誌『ARTiT200円や雑誌『芸術新潮』などである。
広がる空間 奥の突き当り
右辺、窓となって突き当りから左奥角に向けて本棚が6本ある。もちろんその前の椅子や床にも積まれている。洋書がメインでほぼ大判書だ。
パウル・クレーの図録やトゥール美術館展の図録、『真贋のはざま』、『快楽宣言』、『neoteny japan』、『仏像集成』、『日本の図像』、『ジ・エンド・オブ・ザ・ゲーム』、アラーキー、『内藤正敏写真集 東京』、『写真術』などなどなどだ。
広がる空間 左辺
既に左辺に入ってはいるが少し折れ曲がりそこから本棚がランダムに5本でまたジャンルが入れ替わる。山、料理、漫画だ。
山は『男の民俗学』、『僻地の旅』、『野鳥の図鑑』、『つげ義春の温泉』、『英国の人と自然』、『茨城の民話』など。地域誌『谷根千』バックナンバーあり。など。
料理は『美味求真』、『立ち呑み詩人のすすめ』、『江戸前の魚』、『銀しゃり抄』など。
漫画は『アキラ』や雑誌『ガロ』、『刑務所の中』、つげ義春、『3月のライオン』、『アイアムアヒーロー』など。
雑誌『スペクテイター』と雑誌『digmeout』があったのに驚いた。実は8月末に企画した「Cannes Lions2013の雑誌を作る夏プロジェクト」に関係していたりするのだ。いやーここで見ることができるとは驚いた。
広がる空間 中央奥の本棚
振り返るとちょうど奥の右辺左辺に挟まれて中央に腰くらいの高さの本棚が左右で6本並んでいる。
右側3本は詩だ。
高橋睦郎、萩原朔太郎、押切順三、谷川俊太郎、『近代俳人列伝』、『ジャン・ジュネ詩集』、雑誌『ユリイカ』、『ボードレールの世界』など。
左側は建築・デザイン・工芸となっており、『現代建築家』、百の知恵双書、『日本の工芸』、『文字のデザインを読む』、『日本のおしゃれ』などである。
新刊・ジン・少部数出版
本棚の上には『胞子文学名作選』や『毎日夜を産む』、四月と十月文庫、出版社「港の人」の本、『本屋図鑑』、夏葉社など本好きには堪らないセレクションの新刊があったりする。古書信天翁。侮れぬ。
広がる空間 最後の本棚閉鎖空間
実は先ほどの漫画棚の裏側。つまり左辺は一番入口側には5本の本棚に囲まれた閉鎖空間がある。左2本と正面下半分が文庫と新書。正面上半分が雑誌と単行本。右2本が単行本といった構成だ。読みやすいサイズの本が欲しければとりあけずここに行けば良いわけだ。
文庫は『包丁余話』や『パンセ』、岩波文庫、岡本かの子、井上ひさし、高橋源一郎、村上春樹、『ぼくはオンライン古本屋のおやじさん』、『古本生活読本』、『思考の整理学』など。
雑誌は『考える人』や『東京人』など。
単行本は『ゴランツ書店』、『大正雑誌』、『雑誌をつくった編集者たち』、『心理試験』、稲垣足穂、吉行淳之介などである。
最後に科学本もちょっとだけある。『ムーンショット』や『エレガントな宇宙』などである。
ちなみにここのすぐ手前入口側には真ん中に200円均一の棚があったりする。つまりは店舗に入って真っ直ぐ行くと見つかる場所に買いやすいものを置いているわけだ。考えてるなあ。
モノは『見えない宇宙』や『古典との再会』、詩集などとなっている。200円均一に詩集があるという。なんとも渋いではないか。
秘密基地的古本屋さん
これで全部見たのだが如何だったろうか。谷中銀座のすぐ手前という立地にあって静かだけども暗すぎないその雰囲気。それでいて外さない品揃えとBGM。これでコーヒーなんて出して頂けたら長居すること間違いないだろう。
このワクワクする感じ。そうここは小さい頃に潜んだあの秘密基地みたいなのだ。
だからこそあえて教えずに静かに楽しみたい古本屋さんだとぼくは思ったのである。