本屋に関する話をしていただいた後、いくらか本を見せていただきました。段ボールに入っていた梶井基次郎の『檸檬』二刷など、「これが初版だったら大変なものだ」、と思いながら見せてもらいました。その中でとてつもないものも見せていただきました。
それは、三島由紀夫の『春の雪』試作版。いわゆる「ノーベル版」という本です。この『春の雪』、本来初版は昭和44(1969)年なのですが、このノーベル版は前年の昭和43(1968)年の10月30日となっています。どうやら三島由紀夫がノーベル文学賞を受賞するかもしれないというタイミングで300部だけ刷られたもののようです。結局川端康成がノーベル文学賞を受賞したため、昭和44年発行版が初版として流通。ごく少数が断裁を免れて、ノーベル版という通称で古書市場に流通しているようです。
もしも三島由紀夫がノーベル文学賞を受賞していたら、現在幻の初版となっているものが本当に初版として流通していたかもしれません。とんでもないものを見てしまった、というのがまず最初の感想。値段は見ませんでしたが自分には手の届かないものでしょう。
それ以外にも「ここにある『世界カタコト辞典』、著者の直筆入ってるよ」など説明していただき、最後の方には松本の絵葉書を集めた本(『信州松本絵葉書集成』)や松本の地図を集めた本(『近代松本地図集成』)を見せていただきました。至福の時間(実際は触ったら手が震えそうな時間)は過ぎていきました。
本の世界はやはり奥が深く、どんなに勉強していてもずっと勉強不足がついて回るのかもしれません。
しばらくして書肆秋櫻舎でNDL ONLINEを検索すると、11冊の本が検索結果に出てきました。郷土に関する本の出版や復刻も手掛けているようです。個人的に『縄手繁盛記』はちょっと読んでみたいです。電子の海を彷徨っていると以前は縄手通りで古本屋を営んでいたことがわかりました。また、どうやらご家族に小宮山書店で働いている方がいるとの話も見つけました。
今回買った本は『古本賣買の實際知識』(古典社)。この本は国会図書館に収蔵され、デジタル化されている本です。国会図書館には4版、今回買ったのは6版となります。なので自分は国会図書館にない本を手に入れたということになります。
この本ですが、古本屋についての話が結構載っているので手元に確保しておきたかった1冊です。番付見るだけで数時間は潰せます。多分この本の脇には複数の資料が積んであると思います。手元の本と国会図書館の本、どこが違うか細かく比較しながら読んでみるのも非常に面白そうです。
ちなみにこの古典社、『古本年鑑』を出している版元です。『古本年鑑』も手元に揃えておきたい資料です。探して見つけたら買おう……いや最近の流れにのって国会図書館の個人送信で見ておこうか、ちょっと迷います。2・3年分の古書店リストと広告は複写済ではありますが……
松本だけではなく長野県の本屋に関する話ですが、多分まだまだ掘りきれていない話はたくさんあると思います。きちんと形に残しておきたいところですが、多分1人のマンパワーでは膨大な時間がかかりそうです。資料収集含め、ゆっくり進めていきましょう。個人送信で見れるけれど、まずは鶴林堂の50年史である『回顧の五十年 : 鶴林堂書店史』がほしいところです。
それ以外では長野書店商業組合の本が必要かもしれません。85年史である『長野県書店商業組合 八十五年のあゆみ』は日本の古本屋で注文し、現在手元にあります。100年史は、永田町に赴くしかないですね……、