nostos booksに続いてこれもFacebookのフィードで知る。ビバ!Facebook!(以下は2013年9月26日の記録である)
まとめ
時間のない方のためにまとめです。
- 品揃え:ビジネス書をメインに、定番書を揃え、若干ながら文学もあったりする。ボックス本棚をお客さんに貸したりなど試みがおもしろい。
- 雰囲気:過ごしやすい雰囲気。ただし、イベントが多いので要注意。
- 立地:池袋駅から徒歩10分程度
TEL:03-6914-3618
FAX:03-6914-3619
開店時間:平日 12:00~22:00 土日祝日 10:00〜22:00
URL:http://tenro-in.com/
Twitter:https://twitter.com/tenroin
Facebook:https://www.facebook.com/tenroin
きっかけはブログから
知ったのは一年前。チェーン書店を辞めてあたらしい本屋さんをつくろうと息巻いている人のブログがシェアされていた。
これが凄かった。天狼員書店という名前のブログには今の出版業界に対する不満と自分ならこうするという想いが吐き出されていてその熱さにぼくは驚いた。
何より驚いたのは書店員さんだった人が現状に不満を感じて自分の店を開くことはあるしぼくも何店か知っている。ところが、その不満を言葉にして、十分な準備を行い、いろんな人を巻き込み、出版界に一石を投じ、その過程をオープンにしていたことである。CAMPFIREというクラウドファンディングを利用したりツイッターやブログを駆使したり棚を貸したり一緒につくったり。
ウェブとリアルをバランス良く利用して将来お客さんになる人を開店前から巻き込んでいる。
そして、グランドオープン時の混雑である。「今、新刊書店をつくるならこうやる」というひとつのモデルケースになりうるとぼくは思うのだ(というか自分で開くときは必ず参考にする)。
プレオープン
南池袋と通勤圏内なので一週間のプレオープン時から今日のグランドオープンまでで3回も行かせて頂いた。プレオープン一日目はやはり人が多く先に書いたように巻き込む力のつよさを感じる。
お客さんといっしょにつくる本屋さん
通常、新刊書店はお客さんと棚を介してコミュニケーションする。常連さんともなると話すこともあるだろうけど基本的にコミュニケーションは本棚を介してだ。どの本が売れたどの本を立読みしていた。そういった情報から本屋さんはその土地に合った品揃えにチューンナップしていく。
天狼員書店の面白いところはそれを前面に押し出していることだ。店主とお話させて頂いたとき「オススメの本や欲しい本を積極的に教えて欲しい」と仰っていた。昔ながらの個人経営の本屋さんではこういうことはあったのかもしれないが、あたらしくできた本屋さんにおいては珍しい。だいたいの場合はセレクトショップ的品揃え。店主の個性が押し出されるもので、開店時から「お客さんといっしょに」という本屋さんは珍しいだろう。
天狼員書店の3つの柱
天狼員書店には大きく分けて3つの特徴がある。
- READING LIFE
- CORE1000
- 貸し本棚
の3つである。ひとつずつ説明しよう。
READING LIFE
これは天狼員書店の店員がお客さんの読書ライフ=READING LIFEに寄り添い本を紹介する活動だ。プレオープン時に好きな作家や雑誌を紙に書かされたのだが、それで購買情報を共有しつつお客さんのREADING LIFEをより充実したものにしようという活動である。
「ほろ酔READING」や「おもてなしREADING」など切り口も面白くこれからに期待したい活動である(2015.5.6時点でどちらもリンク切れとなった。この試みは中止されたのだろうか)。
これは天狼員書店ブログのはじめの記事にあるがいわゆる定番書籍を発見・提案していく活動である。開店前から各地の本屋さんで活動していたようだ。唯一の純粋なプッシュ型活動である。
貸し本棚
3つ目。これはCAMP FIREで1万円以上出資した人にロッカー式の本棚を3ヶ月間貸し出すサービスで、3ヶ月後以降はお得意さんに貸し出す計画のようだ。
このサービスの面白いところは使用方法が自由であることだ。
古本を売るのはもちろん。もし編集者だったら担当書籍を置いたり雑貨を置いても、さらには取り置き棚にしてもいい。なんと物置に使っても良いのである。近くの本屋さんにこんなサービスがあれば良いと思っていた。素晴らしい!
空間の魅力
こういった面白サービスがありつつ天狼員書店は空間としての魅力も素晴らしい。
写真を見て頂くのが一番分かりやすいが、まず店の壁半分が窓である。そしてそちら側にあるカウンター席とソファ。カフェとしても利用できることを考えるとふらっと立ち寄ってコーヒーを飲みつつ本に囲まれながら作業するなんて夢のような時間を過ごせそうだ。
巻き込み型本屋さん
こうやって見ていくと天狼員書店はまさに巻き込み型本屋さんなのだと思う。
店側とお客さんが開店前・後でお店をいっしょに作り上げていく。
READING LIFEやキャンプファイヤー、貸し本棚などネットとウェブをうまく使い分けながらお店へのコミットを途切れさせないそのやり方。
文化拠点として地域に必要とされながらその利益率の低さから無くなっていく本屋さんのこれからのやり方。そのひとつを天狼員書店は提示しているのだ。
レイアウト
さて、あたらしい試みなので熱くなってしまった。ようやくとなるが店内を紹介しよう。
店舗のかたちはほぼ正方形である。左辺と正面がガラス張りで開放感があり居心地が良い。正面のカウンター席の他は本棚。左辺の手前はレジカウンターだ。
右辺は半分が雑誌棚に区切られてその奥の右辺手前の壁も本棚。右辺奥角がベランダで手前にテーブルである。テーブルの端には備え付けの本棚がある。
入って目の前は「黒船来航」という平台。なんと台の下に黒い船部分があるという作り込みようである。
品揃え
黒船来航
品揃えの紹介はさっそくこの黒船来航からしよう。ここにあるのは話題書だ。
『長く働く人は病気にならない』、『ワークライフアンバランスの仕事力』、『希望をはこぶ人』、『7つの習慣』、『ワンランク上をめざすビジネスパーソンの独習ガイド』、『無印良品は仕組みが9割』、『命より重い!お金の話』、『最強マフィアの仕事術』、『ピクト図解』、『ビジネススキルイノベーション』、『小さく賭けろ』、『ルーヴル美術館 収蔵絵画のすぺて』、『アップル脅威のエクスペリエンス』、『1坪の奇跡』、『グレートギャッツビー』、半沢直樹シリーズ、『海賊とよばれた男』、東野圭吾『祈りの幕が下りる時』などである。
さらに、帆にあたる部分に『20歳の自分に受けさせたい文章講義』、『タモリ論』、『記憶する技術』、『電子書籍の衝撃』などなどである。盛り沢山のメインステージだ。
入口すぐ右手と雑誌棚
入口に戻って右周りに見ていこう。
入ってすぐ右手の本棚は定番本だ。
『影響力の武器』や『「売る」広告』、『ハンディー・カーネギー・ベスト』、高橋歩、『ワークシフト』、ドラッガーがいっぱい、『ブルーオーシャン』、『ザ・マーケティング』、『仮説思考』、『フリーエージェント社会の到来』、『さあ才能に目覚めよう』、『思考は現実化する』、『ザ・マインドマップ』などなどでここの本を読めば間違いないものばかりだ。
ここが終わると本棚が通路を仕切っている。手前が女性誌で裏は男性誌である。
右辺手前の定番文庫棚
この雑誌棚を回り込んで店舗右辺手前の壁には定番文庫が棚2本分ある。
岩波文庫たくさんに司馬遼太郎もたくさん。角川ソフィア文庫の古典や山崎豊子、大江健三郎、川端康成、芥川龍之介、三島由紀夫、夏目漱石、宮沢賢治、五木寛之、ディケンズ、トルストイ、『レ・ミゼラブル』、『風と共に去りぬ』、光文社古典新訳文庫などなどと新書が少々で、ビジネス書でない文芸書もここの本を読んでおけば間違いない棚である。
店舗奥カウンター席の両側にある本棚
店舗奥の辺の両側には本棚がある。
右側は2本あって小説と旅、女性向けビシネス書である。
小説が百田尚樹、東野圭吾、『月と蟹』、『舟を編む』、『何者』、『ジェノサイド』などに超訳シリーズ。
旅が『TOKYO本屋さん紀行』など玄光社シリーズ、『地球を遊ぼう!』、『5日間の休みで行けちゃう!絶景・秘境への旅』など。
女性向けビジネス書は『オンナの噂研究所』、『野心のすすめ』、『成功できる人の営業思考』、『女性のこころをつかむマーケティング』、『「婚活」時代』、『CONCEPT LIFE』、『GILT』、鏡リュウジなどとなっている。
左側も本棚2本でカメラとWeb系実用書とビジネス書だ。
カメラはアサヒカメラ、玄光社のカメラシリーズ、『売れる商品写真』などが一段。
その左側がWeb系実用書。やさしいAndroidプログラミング、入門ウェブ分析論など。
その他がやっぱりのビジネス書だ。『時間に支配されない人生』、『スタンフォードの自分を変える教室』、『自助論』、『武士道』、『ワンランク上をめざすビジネスパーソンの独習ガイド』の隣にもういちど読む教科書シリーズ、『デザインフル・カンパニー』、『ソーシャルメディア進化論』、『起業のファイナンス』、稲盛和夫、『入社一年目の教科書』など。ここはこれから定番になりそうな、または定番ビジネス書の周辺本棚となっている。ぼくはただの定番よりもこっちの方が好きだ。
左辺のボックス本棚
左辺は一面のボックス本棚となっている。44個あってすべてCAMP FIREで募集したオーナー本棚だ。先に書いたように自社の出版本や取置き、古本などなどなんでも置いて良しい。今は新刊ばかりでビジネス書半分と小説やマンガも少しあり、これからはお得意さんに貸し出す形にするそうだ。
いっしょにつくっていきたい本屋さん
天狼員書店はまだ始まったばかりである。先に書いたようにお客さんを巻き込みながらこれからどんどん変わっていく。グランドオープンには一日店長として木暮太一さんが来られていたし天狼員ライブというイベントもやっていくようだ。
自分も縁あって巻き込まれた。何かしら面白いことができればこれほど嬉しいことはない。ここに行けば何かしら面白いことが起きそうな気がする。小まめに通いたいお店である。