本屋探訪記第53弾は新宿マルイアネックスのB1にあるブックカフェ「Brooklyn Parlor(ブルックリンパーラー)」(以下は2012年9月16日の記録である)。
まとめ
時間の無い方のためにまとめを。
- 品揃え:BACHの幅允孝氏による選書。切り口と言い見ていて楽しくなる本棚。カフェ・レストランメニューも美味しい。
- 雰囲気:落ち着いた雰囲気なのだが人気店なので騒々しくなってしまっている。
- 立地:マルイアネックスの地下1階。東京メトロ出口のすぐ近くでもある。
TEL:03-6457-7763
FAX:03-6457-7765
営業時間:11:30〜23:30
定休日:不定休
URL:http://www.brooklynparlor.co.jp/
Twitter:https://twitter.com/BrooklynParlor
Facebook:https://www.facebook.com/brooklynparlor
トテツモナイ、ブックカフェ
あるとき誰かになんとなく教えてもらったのだがここはトテツモナイ。
カフェとは言いながらも半分くらいがバーで都心のど真ん中のはずなのにかなりのスペースがあり、何より考え抜いたであろうオリジナルのジャンル構成・雑貨との境界が曖昧な本棚が最高なのだ!
本がメインではないような雰囲気なのだがそれであの品揃えは驚異である。しかも全部売り物・座り読み可なのだ。ブックカフェなのだ。当然と言えば当然だがここまでの広さと品揃えを持ったブックカフェは見たことがない(スタンダードブックストアは本屋がメインなのでここには含めない)。
残念だったのは人気店のため並ばなければ入れなかったことと騒がしいこと。それに読書するには証明が暗かったこと。せっかくの品揃えなのだから本をもっと押し出したら良いのにと本好きとしては思ってしまうのだ。
しかし、冷静になって周囲を見てみると意外に読書中の方は少ない。もしかしたら「本もあるオシャレなカフェ」くらいのイメージで来ているお客さんが多いのかもしれない。となると本がある必然性は少ないように思えるしそれであの棚のクオリティとなると…マルイが趣味で作ったのかと勘ぐりたくなる。飲食と本の売上構成比が気になるところだ(後で確認したところBLUE NOTE JAPANがプロデュースしたお店だとのことだ)。
豊富なメニュー
本棚もさることながら、この店はメニューも豊富である。当然のように美味い。とはいえ行ったときはチョコケーキとコーヒー、紅茶しか飲まなかったが。どれも美味かった。クラフトビールも置いてあることだし、しっかり夕食でも食べに来たいと思うほどだ。
DJライブがあるブックカフェ
ブルックリンパーラーはこれだけで終わらない。なんと毎週火曜日の夜にはDJライブあるのだ。しかも、なんと、入場無料である!どれだけ凄いんだ⁉
本がある必然性がどんどん薄くなっている気がするがきっと気のせいだろう。「本は最高のインテリアだ」という言葉もあるくらいだ。読まなくても本がある意味はきっとあるのだ。
レイアウト
さて、驚きのあまり長い前置きになってしまったがいつものように店内の説明に入る。まずはレイアウトからだ。
大広間のような広さの店内は奥に広い長方形のようなカタチだ。その中で本がある棚は大きく分けて5つある。
まず、①店舗右辺レジ横の雑貨+本のコーナー。②その先のずらりと並ぶ壁棚。③店内一番奥にあるガラスケース。④店内奥の左手にあり席の境目にもなっている雑誌コーナー。そして、⑤柱の横や店内中央のソファ側、店内奥の出口側にあるような独立棚の5つだ。
もちろんどの棚の側には席がある。カウンター席、テーブル席、ソファ席。いったい何席あるのか分からないが、この広さで4.5組とはいえ行列ができるのは凄いことである。
それではようやくだが、本棚の説明に入っていこう。
まずは①レジ横の雑貨+本のコーナーからだ。
①店舗右辺レジ横の雑貨+本のコーナー
このコーナーでは、最近、新しくできた本屋では珍しくないけれど本と雑貨が分けられることなく混在で置かれている。
品揃えは、海外文化と食とちょっぴり科学である。
Tシャツや象の置物のすぐ横に『オンザロード』、『冷血』、『スローターハウス5』、『裸のランチ』など海外文学と『帽子の文化史』、『めがねを買いに』、『拡張するファッション』など文科系の本があったり。
食系の本では、『きのこる』、『世界で一番おいしい野菜』、『世界のビール図鑑』、『食の終焉』、『花のズボラ飯』(テキスト本と漫画の区別もない!)などのすぐ横にビールグラスやカトラリー、ジャムやジンジャーオイルがあったりする。
突き当たって少し左に行ったところから店内奥まで続く壁棚になるのだが、レンガ風の壁に囲まれた角には本の置物や生物の置物、虫眼鏡などちょっぴり科学的なものがある。
ちなみにこのコーナーのど真ん中に書見台があり謎の大判本が置かれている。見るからに高そうだが何の本だろうか。そもそも売り物なのか。落とすのが怖くて調べられなかったのが悔やまれる。
②その先のずらりと並ぶ壁棚
雑貨コーナーが終われば後は奥まで続く壁棚である。ここから魅力的で独特でゆるふわなジャンル分けがある。手前から選書一冊と共に挙げよう。
- 芸術力:『サン=テグジュペリデッサン集成』
- 写真力:『ピュリッツァー賞受賞写真全記録』
- よのなか:『セイントお兄さん』
- 建てもの:『光の教会』
- グラフィカルな:『花森安治のデザイン』
- 男の生き方:井上雄彦『空白』
- 女の生き様:『風の谷のナウシカ』
- 恋と愛の話『舞姫』
- 不条理!:『アキラ』
- 動物好きでして:『動物園革命』
- ちょっと不思議な話:『あなたまかせのお話』
- うみ:『コルテスの海』
- 運動しよう:『世界記録はどこまで伸びるのか』
- ぎりぎりの創作:『ニジンスキーの手記』
- 映画について:『世界の映画ロケ地大事典』
- 身近に科学:『ファインマンさんの流儀』
- 宇宙へ:(メモし忘れてしまった。申し訳ない。)
- アメリカという国:『ヴァインランド』
- ニューヨークニューヨーク:『ニューヨークの古本屋』
- 旅に出よう:『1001の出来事でわかる世界史』
- 東京:『東京検定』
- 歴史好き:『薔薇の名前』
- にほん的うつくしさ:『ジョンレノンが見た日本』
- ことば:『雨の名前』
- 子供たちへ:『少年の日の思い出』
- 家の中のもの:『名作椅子の由来図典』
- 本の本:『世界の夢の本屋さん2』
- 装い:『ソニア・ドローネー』
- 音楽:『アフロディズニー』
- CD:『ビートルズMONOBOX』
いやいやいや見たことがない分け方である。「本の本」や「映画について」はまだ分かるとして、「グラフィカルな」って形容詞かよ! 「動物好きでして」知らねえよ! 「運動しよう」提案されたよ!
…なんというジャンル分け!!
こんなのもアリなのかと驚き感動しパクりたくなること請け合いなのである。
③店内一番奥にあるガラスケース
店内一番奥は2段の階段を上った少し高い場所にある。心なしか席と席の間のスペースも広めだ。そんな店内で落ち着けそうな空間には壁一面にガラスケースがある。ここにももちろん本だ。洋書がメインだが見るからに高そうな大判本や世界大博物図鑑など普段ではお目にかかれない本が展示されている。やはりインテリアとしても本は一級品である。
④店内奥の左手にあり席の境目にもなっている雑誌コーナー。
階段を降りて壁沿いに進もうとしたら邪魔な棚がある。ここは雑誌コーナーだ。店舗入口すぐ左手のキッチンの手前まで長く伸びた棚には面陳で雑誌が飾られている。その種類の多いこと。
『ナショナル・ジオ・グラフィック』や『ニュートン』、『スウィッチ』、『ナンバー』、『クーリエジャポン』、『トランジット』、『ターンズ』、『料理王国』、『エレ・デコレーション』、『ブルータス』、『サファリ』、『ヒュージ』、『ボーグ』、『装苑』、『シュプール』などなどなど。
読み逃した雑誌があればここに来てゆっくり読むのも良いだろう。そういえばこの棚を超えた店舗左辺の壁向きカウンター席では雑誌を一人で読んでいる人が多くいた。入ったときには気づかなかったが読書しやすい場所もあったのだ。
⑤柱の横や店内中央のソファ側、店内奥の出口側にあるような独立棚
雑誌棚を見終えて振り返るとソファ席が2組あるのだがその背中側にも面陳棚がある。ここはアート系や写真集が多い。ソファ席のどちらにも本がある両面のこの棚にあるのは、日本の写真集や雑誌、大判本、雑誌『スペクテイター』、斎藤陽道『感動』、百百新『対岸』、『神様のいる場所』、『スモーキーマウンテン』、『ラ・スーパー・グランデ』、鈴木陽介『カレーライス』、雑誌『エレクトマガジン』などだ。
さらに、店舗右辺の側に顔を向けると柱に隠れてもう一つ棚がある。ちょうど店舗右辺壁棚の目の前だ。ここもジャンルが凄い。「いろいろ考えてる」「働こうかな」「家族と私」とゆるふわ感がハンパない。
書名はバンクシー写真集や『哲学大図鑑』、『感性の限界』、『就職しないで生きるには』、『ワークシフト』、『若草物語』、『クレヨンしんちゃん大全』などだ。
どれがどのジャンルかはぜひ一度行って確かめて欲しい。溢れ出る好奇心を止められなくなるから。
そのまま店内奥にもう一度行ってみると店舗右辺の壁棚奥にもう一つ棚があった。なんて事だ。見逃すところだった。せっかく来たというのに見逃した棚があったとあれば台無しだ。何より本屋好きの名が廃る!
気を取り直して棚を見ると洋書の写真集がメインである。だが、左下の方に手塚治虫『火の鳥』があった。それも大判本である。こんなものがあったとは知らなかった。不勉強を恥じる限りである。それはそうと『火の鳥』と並べられる洋書とはどんなものだろうか。英語が読めたらと本気で思ったことは言うまでもない。
美味い! 楽しい! カッコいい!
これですべての本棚を見終わった訳だが、なんだろうか。この満足感は。
ケーキもお茶も美味いわ棚は素晴らしいわ内装はカッコいいわ(もちろん本が果たしている役割が大きい)。しかも新宿である。これは行きつけか⁉行きつけなのか⁉
美味い楽しいカッコいいと三拍子揃ったこの店。少しお高いがそんなことは気にならなくなるくらいイイ店である。
まだ一回目なので、並び具合やケーキやお茶以外のご飯の美味しさ。長時間、読書をしてま大丈夫か。火曜日のDJライブはどうなのか。などなど疑問は尽きないがその分、通い詰めたいと思わせてくれるお店である。
願わくばもう少し本が中心だったら嬉しかったのだがそれは贅沢というものだろう。いろいろな楽しみ方ができる店である。ぜひ行ってみて欲しい。