なんばから日本橋へ。オタクな街並みの中にどんな本屋があるのかと思って来てみるとこれが意外と良い感じのお店だったというのが、第52回本屋探訪記「蒼月書房」である。
まとめ
まず、時間のない方のために短くまとめを。
- 品揃え:カルチャー系。マニアックなCDもあり。美大生が好きそうなラインナップ。
- 雰囲気:レトロなサブカルブックカフェ。
- 立地:大阪日本橋の中にある。知らなければ行きにくいかも(2014.12に移転)
URL:http://ao-tsuki.com/
Twitter:https://twitter.com/aotsukishobo
※ 移転済みのため旧住所以外はURLで確認して頂きたい。
レイアウト
入ってみると、正面に背の高い平積み台があり、その奥にレジだ。正方形に近い店内の壁はレジの面以外はすべて本棚である。
面白いのが、右奥に下駄箱が置いてあり、そこから2階に上がれるようになっていることだ。まるで、他人の家の中に上がり込むかのような気分になってくる。
2階は後回しにしてまずは1階から見ていこう。
音楽とマンガと写真集
まずは、正面の平積み台から。上にはCDが置かれており、台の横側の棚の中にはフライヤーとレコード、雑誌がある。CDは、みみくりげ、テニスコーツ、のーまんずらんど、のっぽのグーニー、平賀さち枝、エット、ラカンカのカセット、白波多カミンなど良く知らないが、サブカル臭がビシバシと伝わってくる。本の方はというと、石井モタコの初マンガ作品集の『超能力』などで、雑誌大判本は『トラッシュアップ』、『モダンジャズ名盤500』などである。
入り口左、正方形左辺の棚は、マンガと写真集である。
マンガは、手塚治虫、『サイボーグ009』、『水木しげる愛蔵版』、ガロ、楳図かずお、つげ義春、永島慎二、桑田次郎、赤塚不二夫、南Q太、松本零士などがあり、写真集は、アラーキーや『小説写真』、森山大道『新宿』、川内倫子、ヒロミックス、『うめめ』、『賃貸宇宙』、ホンマタカシ、日本の写真家シリーズ、『長屋迷路』、丸田祥三、ウォーカーエバンス、図録『ポンピドーコレクション写真展』、マンレイなどである。
美大生が好きそうなラインナップだ。
CDとアート系
さて、入口まで戻って(と言っても2,3歩で戻れるのだが)、入口すぐ右横の辺から正方形の右辺を見ようと思う。
入口すぐ右横の辺にはCDが棚2つ分にめいっぱい入っている。全く知らないミュージシャンのものばかりなので、割愛するが、なかなか他では目にすることが無いものが多かったとだけは書いておこう。
正方形右辺はというと、棚が四つある。単行本と大判本だ。また、足元には『リラックス』、季刊『リュミエール』、『カイエ・デュ・シネマ・ジャポン』、『インターコミュニケーション』が入った箱が置かれている。
棚の方のジャンルは、手前からだいたい音楽、映画、演劇、アートといった感じだ。
音楽は、渋さ知らズ、山下洋輔、『デビットボウイ詩集』、『エヴァンスを聴け』、『ドラッグインジャズ』、『立ったまま埋めてくれ』など。
映画は、EMブックス、『僕の採点表』、『映画の精神』、『レイトショーのしあわせな夜』、『愛のコリーダ』など。
演劇と舞台芸術は、『あゝ荒野』、寺山修司、唐十郎、『ダンス・クリティーク』、土方巽、『ハイナミュラーと世界演劇』など。
アートは、『松永真デザインの世界』、『東京Y字路』、大竹伸朗、『ブックカバーコレクション』、『キューバ現代美術の流れ』、『モダンデザイン批判』などだ。
レジ横の芸能と文庫新書
振り返ってカウンター横にも本棚がある。ここは、目線の位置くらいまでの棚だが奥はレジである。空間の有効活用なのである。
品揃えはというと、植草甚一がたくさん、赤瀬川原平、松尾スズキ、理論社のヤングアダルト新書、落語の本で『寄席の人たち』や『こんな落語家がいた!』などがあり、さらに、目線より下の部分には50円~100円が20冊ほどある。後は、文庫新書単行本である。ジャンルは特になく、有名人のエッセイ本がやや多め だが、音楽あり建築ありアートあり、言論あり何でもありだ。
2階はカフェコーナー
なんと蒼月書房の2階にはカフェがある。しかも、そこにも本棚があり、古本とカフェを同時に楽しめる。周囲に空いているカフェが無いことを考えるとここは良い穴場だと言えるだろう。
謎の渋さ知らズのポスター? があったりするが、空間はゆったり使われていて嬉しい限りである。空間の左手前と右手前、そして、右奥に本棚があり、奥の窓沿いにCDと雑誌が置いてある。
席数はテーブル2つの4席しかないので、先客がいたらそれでいっぱいになってしまうが、大事な話があるときになど使いやすいかもしれない。席数が少ないので、話を聞かれるリスクが少ないからだ。
2階の本
では、本の品揃えはどうかというと、これがまたなかなかディープで良さげなのである。右手前が文学、左手前がデザイン、右奥が子供向けの本という分け方になっているのだが、文学が良いのだ。
文庫、単行本、大判本入り乱れで、横溝正史、澁澤龍彦、サド復活、稲垣足穂、絵本・逆流のエロス、森茉莉全集、日影丈吉選集、夢野久作全集、小栗虫太郎、沼正三、江戸川乱歩全集、三島由紀夫、坂口安吾、埴谷雄高、中島惇、川端康成、町田康、森いづみ、川上未映子、山田風太郎、村上龍、五木寛之、京極夏彦、バタイユ、ヴォネガット、チェーホフなど。ついつい多めに書いてしまったが、幻想文学好きには溜まらない品揃えである。
しかも、ホラーとエロ、民俗系もあり、『アジア舞踊の人類学』、種村季弘、『裏本時代』、『クニオとクマグス』、知の再発見双書が6冊、『怪物科学者の時代』、『明治妖怪新聞』、病院ギャラリー、『国芳の狂画』などがある。もうウッハウハである。幻想文学はなぜか書名や著者名だけ知っているのだが、興味をそそられて再分紐が緩みそうになることこの上ないのだ。もちろん貧乏人としては死んでも緩めるわけにはいかないのだが。
右奥の本棚には、絵本など子供向けの本だ。『サーカスの小びと』、『夢みる飛行船』、『いちねんのうた』、『ムーミンのふたつの顔』、『こども音楽館』など。また、母親向けだろうか。雑誌『みづえ』、雑誌『スプーン』、雑誌『プッカ』もある。文学女子向けだろうか。棚の目の前に子供用の小さなイスがあるのがニクイ。
左手前の棚はデザイン系だが、なんとなく文系女子向けと言えそうだ。
『シャネル 20世紀のスタイル』、『パリを歩こう』、『素敵なエアライン』、『文学少女の友』、『とんぼの本』、『夢二グラフィック』、『夢二デザイン』、『家具のデザイン』、カレルチャペック、『チェコのマッチラベル』、『カフェをはじめる人の本』、『表現のモノサシ』、『kingyo』、『dog』、『chiyogami』、『katachi』、『メロンパンの真実』、『大好き! パスタ』、『シンプルごはん』、『宇治茶いい味いい香り』、『柳宗悦デザイン、フラワーデザインアートなど。森ガールが喜びそうな品揃えなのだ。
余談』、『ブックストア』、『雑誌的人間』、『古本的』『「本」に恋して』など本の本が多かったことは嬉しかった。
文系女子と一緒にデートに行こう!
蒼月書房場これで全部見た。品揃え、カフェなど立地が怪しいことを除けば、ここは文系女子とデートに行きたい様なお店だと言える。少し狭いが、レトロな雰囲気が好きならばそれも味だと思ってくれるだろう。あくまで、大阪のオタク街日本橋でデートができれば、なのだが。