本屋探訪記第48弾は下北沢の古書店「古書 赤いドリル」だ(2012年8月25日時点。2013年3月29日で移転した模様。移転先は不明)。
まとめ
まずは、時間のない方のために短くまとめを。
- 品揃え:左派系の本が多い。その他、歴史系とアングラ系、普通の文庫なども少々ある。
- 雰囲気:古書店だがカジュアルな雰囲気がある。奥にあるバーのせいだろうか。壁がコンクリート打ちっぱなしだからだろうか。ラジオが鳴りびいていた。
- 立地:下北沢駅から徒歩10分。路地を行ったところにある。知らないとここには来ないだろう。
外見と安売りコーナー
見た目はコンクリート打ちっ放しの建物でデザイナーズマンション風味であるが、全く違う。
ここはハードな古書店なのである。
店の前に棚が3つある。店名にちなんだ赤い本棚だ。百円均一というわけではないが200円からのお買い得な本が並んでいる。
『明治暗殺史』や『上海の長い夜』、『下山事件』、『昭和のことば』。さらにそばには『ミュージックマガジン』や『レコードコレクターズ』もある。特にジャンル分けはされていないようだ。中に入ろう。
BGMとレイアウト
長方形で奥に広い店内ではBGMが特になく、店主の作業音だけが響く。開店直後だからだろうか。途中からラジオが流れ始めた。
レイアウトは真ん中に本棚があり、長方形の店内の壁にはもちろん本棚が。そして、店の奥にはなぜかカウンターがある。メニューもあるし、まさかお酒も飲めるのだろうか。これについては後でまた書くことにする。
入り口正面棚と左側の通路
真正面に吉本隆明が10冊ほど南方熊楠や民俗学の本が少々。『トラッシュアップ』もあった。
左にいくと本棚が壁に面して4つ。入り口脇のは映画関係、そこから『警察大辞典』や『犯罪白書』、『朝鮮問題知識のすべて』といった左系の本が目立つ棚が1つに文庫で2つだ。
『東京下町うまいもん』や『下町小僧』、『明治の時代世相』、山下洋輔、寺山修司、永六輔、フロベールなど何でもありである。
左側の通路 赤いジャイロスコープ什器
突き当たりには不思議な什器がある。ジャイロスコープを大きくしたような形で、こいつのお陰で店にはなんとなくオモチャ箱をひっくり返したような雰囲気がある。オモチャ箱の中が全部本とかいったいぜんたいどんな子どもなのか(笑)
什器の上には『THE ART FILMS』という雑誌や海を渡ったサーカス芸人などが置かれており、ジャイロスコープとよくマッチしている。
中央棚の左側には『講座 少年保護』や『ストリートコーナーソサイエティ』、『監獄と人権』など非行系の本である。
右側の通路
右の通路には壁沿いに棚が5つである。手前から紹介していこう。
- 1つめ:『東京の下層社会』、『大逆事件』、『従軍慰安婦』、『巣鴨プリズン』など昭和系
- 2つめ:『下山事件』、『遊郭の世界』、『日本ストリップ50年史』など、日本の性についての本が。
- 3つめ:『バルチザン事件』や全共闘もの。
- 4つめ:『反戦自衛官』や『日本文化の変革』、『佐山事件』など。
- 5つめ:『平民社の女』、『現代の共産主義』、『沖縄の決断』など。
中央棚の右側には、『少年法』、『非行の社会学』、部落問題の本、『江戸吉原図絵』、『犯罪学』、『全共闘白書』など
カウンター横の本棚
カウンター横にも本棚がある。
ここには性教育学入門や雑誌部落解放、部落解放史などが置いてあった。
カウンター
さてさて、お待ちかねのカウンターであるが、まず置いてある本を挙げると、証言連合赤軍、黒の手帖、破防法研究である。カウンターの上に置かれている。
カウンター越しに店員の話を聞いてみると、どうやら本当にお酒が飲めるらしい。しかも、お酒の客と古本屋の客層は別らしい。謎である。本談義に花を咲かせるというわけではないようなのだ。では、わざわざ路地に入ったこの店でいったいなんで飲むのか。地元の人が多いのだろうか。謎である。
赤いドリル
しかし、ここまで店を見てきて思うのはこの店が確かに「赤い」ことである。ライトな本もときにはあるが、左派系や反体制の本がほとんどであるのだ。
かと言って気難しい印象もなく写真を撮らせてもらうにあたり店員のお兄さんに話しかけたのだが、快く対応してくれた。
さすがサブカルの街、下北沢。こういう店もあるのだ。
「こんな世界もあるのか」と気軽に世界を広げるにはうってつけの店だと思った。