ちょっと前のことですが、『武器としての決断思考』著者瀧本哲史特別講演”なぜ"武器としての教養"なのか”に参加しました。ツイッター上で話題だったのと「決断思考」という言葉が気になったので。
で、内容はというと一言で言えば刺激的でした。とにかく内容が濃い!と言うのも本人がめっちゃ早口でまくしたてるように話すのです。観客はついていくので精一杯。スライドショーもかなりの勢いですっ飛ばしていましたし。しかも滑舌が悪いから時々何を言っているか分からなくなるという…ww本人の頭の回転が非常に早いのは分かるのですが、あまりトークショーには向いていない人かもですね。但し、内容は濃い!(しつこいww)
本を読んできたのを前提に、なぜこの本を書いたのか。自分の経歴。これからのこと。などなど。さらに質疑応答でのズパッした回答。いやー、参考になりました。ただ、個人的にはなんとなく気に食わなかったのは内緒です。。では、以下に気になったことを。
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- 他業界のプロにアドバイスを求めることが大事。他業界の常識が自業界では非常識と言うことがある。
- 例えば、アパレルの人が出版やったりとか。サンマーク出版とか丸善のこと。新商品を乱発して当たったものだけとことん打ち出す手法。商品をキレイに陳列する手法(出版では非常識だったことに驚きました。)
- 自分は既存マーケットを潰すスタンスをとっている。
- これからエキスパートはコモディティ化していく。例えば、会計士とか弁護士とか。エキスパートというだけでは価値がなくなってきている(エキスパートというだけなら中国とかインドとか安い賃金でもっと優秀なのが腐る程いるからです。)
- 今後、中央政府は崩壊していくのではないか?中央集権制ではもう無理ではないか?だから、その後の世界でどう生き残るのかを考えて動いている(資本主義のことではないです。資本主義は今のところ最善であると考えているそうです。で、地方主権とかそういう方向性のことですね。)
- 自分の主張の裏はだいたいどんなことでも取れるんので、逆の考えを検討するという作業が必要(インターネットがあり、情報過剰の状況の中、裏を取れないもの何てないだろうと。)
- 変化を起こすなら、業界周辺や大会社の中から仲間を増やした方が賢い。但し、業界にどっっぷり浸かることはダメ。常識が身についてしまったら変化は起こせない(業界について知りながらも、常識的な考えや枠組みに囚われない絶妙な立ち位置が重要ということでしょう。)
- 東大と京大について。昔の人はあえて本流と亜流を作った。そのことで物事をうまく回るようにできると考えた。(保守と革新という構造を作ることで、停滞を防ごうと考えたのでしょうね。)
- 勝負するときは差別化が大事。強かったり大きかったりするところに正面勝負をしかけても勝ち目が無い。
- コツは小さいことから大きくすること。
- 儲かっているうちにいろんなとこに賭けて、うまくいったものにどーんと張ること。中途半端な投資は悲惨(ソニーを例にあげてました。昔はまさにこのやり方をしていたけれど、今じゃ投資が中途半端でせっかく有望な分野も韓国勢に取られてしまったとのことです。)
- 自分は1年目で手当り次第に機会を探し、2年目で見つけた機械に注力し、3年目でエグジット=辞めて違う分野に。というやりかたでやってきた。(自分のやり方を見つけるのは大事かもしれません。)
- 教養=リベラルアーツ=自由のための学問が大事。大学教育ではそれがもっと重視されるべき。 多様性を確保しなければ新しい変化は生まれない。(エキスパートがコモディティ化していることと関係していますね。)
- 日本はこれから、「味の素」を目指せ。国内でモノづくりはせず、アライアンスを世界に売ってローカライズ。得意分野に特化すること。(日本はこれから縮小均衡に、成熟国になっていくので、一番を目指すというよりは、スティル・セカンド・ベストを目指すべきとのことです。これはつまり、ガツガツではなく鷹揚にかつ適した行動を取れる国を目指せということでしょう。)
- 特化したときの足りない部分は他の人と組むことで解決する。ポイントはプロフェッショナルであること。(@may_romaさんがツイートしていることと近いですね。文脈は違いますが。)
- 何か行動するために必要なことがネットワークがトラフィックを生むということ。ジョージ・ソロスの言葉。ひたすらギブをすることで互助ネットワークができ、このネットワークから最終的にテイクが取れるようになるということ。(有名でもない個人が何か価値を生み出すときにこの考え方は大事かもしれません。まーそもそもギブするものがないから無名だということもあるかもしれませんが 苦笑 ただ、このギブというのは美味しいところで食べたり誕生日を祝ったりと何でも良いのかもしれません。もちろん自分の得意分野でアドバイスや手を貸すのがベターだと思います。)
- 以上のようなテクニックでへぼい競合を叩き潰すのは楽で、自分はこれをやってきた。(内部的には合理的でもユーザー視点や全体最適の視点が抜け落ちていることは良くあると思います。日本の一部業界などそうですね。そんな中だからこそ、ロジックでもって全体最適の考えを進めることは大事だと思います。)
- 観客からの質問で「瀧本さんが持っている独自情報はあるか?」への答え。「全て公開情報です。」つまり、情報は溢れており、それを探し絞り込むということの方が今は大事。(先に書いた「裏ではなく逆を取れ」ということに通じますね。情報が溢れているからこそ、その情報の妥当性を測ること。その上で、現在の最適解を探すこと。)
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以上です。本を読んでから参加しましたが、今回のトークショーは本以外のことが多く知ることができて参加して良かったものでした。
本の感想はまた後日書きますが、日本人ができないと言われる「冷静な議論」というものをするために必要なことが書いてあり、またトークショーでも仰っていたことだと思います。
自分の主張に固執するのではなく、逆の意見の妥当性を確かめ、その上で、現状の最適解を導き出すこと。自分の主張が正しいのでなく、あくまで現状の最適解であること。難しいですし、作業が多くなる大変なことですが、議論というものはそうやって進められるべきでしょう。
最後に、僕も日本はこれから成熟国としてスティル・セカンド・ベストを目指すべきだと思うので、その中でどうやって生きていくべきか。話を聞いていて考えたことがありました。
それは、「もしかしたら自分は今、中途半端な投資をしているのかもしれないということ」。まだまだ自分が何を強くしていくべきかおぼろげにしか見えませんが、もっと覚悟を持って思い切り良く行動した方が良いのかもしれません。怖いのですが。具体的に現実的に考えようと思うのでありました。
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